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しわしわ話。

心は中学生の昔とさして変わらなくても、年齢は争えない。

朝、鏡を覗いては、変わり果てた顔面に

マア、これが私?

セリフだけは、変身したシンデレラである。

シミはもうしょうがないとして、シワ、とりわけオデコのシワは何とかならんものか。

ちょっと気持が弱っていたのかもしれない。ついガラにもなく、こんなものを買ってしまった。

おやすみひたいしーと

オデコに貼るシートマスクである。

シートに含ませた美容成分が皮膚にハリと潤いを与える、らしい。

洗顔、パック、マッサージ、美容全般が面倒くさい私であるが、寝ながら貼りっぱなしでいいならラクチンだ。

ひと袋15枚入りを毎晩1枚、貼っちゃー寝、貼っちゃー寝。

15日が過ぎて、結果は

♪だらららららら…(ドラムロール)ばばーん!

できればお見せしたい!

美容成分の効果で、顔の、他のどの部分よりも、ツヤツヤと輝くオデコを。

そして、その真ん中をくっきりと横断する、1本のシワを。

シワの深さをいっそう引き立てるオデコの光沢を、効いたと見るか、否か。

お安いものではないので、もう1パック買うか、迷っている。



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もろもろ | コメント(7) | トラックバック(0) | 2021/03/21 11:30

ばらんす話。

晴れた日の洗濯物干しは気分がいい。

シャツはハンガーに、バスタオルは竿に、仕分けながら次々と掛けていく。

クツシタなどの細かなものにはこれ

ぴんちはんがー

ピンチハンガーというやつだ。

…黒いの 黒いの… 紺のシマシマ…シマシマ… グレーの…

クツシタは、取り込むときバラバラにならないよう、隣り合わせのピンチにはさむ。

考えることはそれだけではない。

バランスが崩れて、重いほうに傾くのが、気になってしょうがない。

偏りの無いよう、右に重いものをつるしたら、左側は軽いもの2枚で釣り合いをとる

われながら、悲しいほどチマチマした性格である。

ともかく干し終えて、身じまいをして、出勤だ。

信号待ちのバスの車窓からも、つい、よそさまの洗濯物に目が行く。

良くない趣味だと、そらしかけた目の端に、店舗兼住宅らしい1軒の建物が映った。

2階の窓の外、ピンチハンガーの片側にズボン。

もう片側には、何もない。

当然ながら、ハンガーは猛烈に傾き、ズボンの裾は1階の店舗の庇に付きそうである。

ああ、ここに、ピンチハンガーの釣り合いなんか、いささかも気にしない人生がある。

近くても決して行けない場所がある。

うらやましいような、そうでないような気持で、走り出した窓の外を見送る。



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もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2021/03/20 11:30

ダンドリ本。

昨日の記事(→もたもた話。)を読み返していて、あるところで目がとまった。

…すべて、この後の流れるようなダンドリのためである…

無意識に書き流した1行だが、このくだりには、出典がある

おそらくこのマンガだ。

だんどりくん
(「ダンドリくん」泉昌之著 双葉社刊)

世の中データとダンドリだ!と題されている通り、主人公は、あらゆる物事を、いかに段取りよくするか、を常に考えている青年である。

私自身、細かく思い煩う性格で、どうすれば二度手間なく行動できるか、のべつ考えてきた。

しかし、周りの人はみな、そんなことを気にも留めず、無造作に生きているように見える。

曰く、のり弁のオカズは、どの順で食べるか。

曰く、特急電車の降り際はどう振る舞うべきか。

曰く、銭湯とコインランドリーの、最適な周り方とは。


そんなことを日々絶え間なく、いたって真剣に考え続けている人が、たとえマンガでも、自分以外にいると知ったことは、非常に心強かった。

大げさに言えば、私という人間が肯定されたかのように感じた。

久しぶりに読み返してみたら、なんと30年前の本である。バブル景気の中、よくもまあこんなビンボくさいマンガが描けたものだ。

ダンドリとは よどみなさなり

この言葉を胸に、今日もチマチマ生きていく、私である。



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ブックガイド | コメント(4) | トラックバック(0) | 2021/03/19 11:30

もたもた話。

月に1度の、持病の通院。

予約してうかがうので、待たされることもなく、会計まで流れるようにスムースだ。

あとは薬局に寄って終わり、と思いきや、玄関に引っかかった。

ここは個人病院なので、靴を脱いでスリッパに履き替えねばならない。そのゲタバコの前で、お爺さんがモタモタしている。

時節柄、近づくのも気が引けるので、少し離れて待つことにした。

待つついでに、手に持っていた領収書や診察券をバッグに入れ、お薬手帳を取り出して、処方箋をはさんでおく。

すべて、この後の流れるようなダンドリのためである。

それにしてもお爺さんのモタモタが長いので、つい何をしているか、見てしまった。

ゲタバコに靴をしまわずに、脱ぎ散らしたものだから、離れた場所にてんでに散らばっている。

そこへ、まるでボートに乗り移るように、足を入れようとするが、いかんせん届かない。

まず靴を手で取ればいいのに、それはイヤなのらしい。それくらいのことが軽くできた、若いころのセルフイメージが強固に残っているのだろう。

老化とは、かくも悲しく、残酷なものである。

上り口に片足を残しては、もう片方を踏みだし、届かない…という永久運動が続く。

わりに気の長い私も、さすがに付き合い切れず

ちょっと… スミマセン…

声をかけて、脇を通りぬけ、玄関を出たら、薬局の受付で…アレ?

お薬手帳が… 無い?

慌てて医院まで戻ると、ゲタバコの上、手指消毒液のポンプの隣に、見慣れた表紙。

他人様の老化を云々している場合ではない。私にも確実に、何かは訪れているのである。

明日は我が身…か…

どうやって靴を履いたのか、お爺さんはもういなかった。

おくすりてちょう



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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/03/18 11:30

いやみの話。

実家の片付けをした日(→おしいれ話。)の夜。

心地よい疲れと達成感で、お風呂上がりの身体を伸ばしていたら

今日はありがとう お疲れ様でした

おばーちゃんからLINEが入った。親子でも、お礼はキチンと言う人である。

どういたしまして さっぱりして、よかったね

ここでやめておけばよかったのだが、つい

私も押入を片付けたくなりました!

余計なヒトコト。すると、すかさず

えー!ぢょん子ちゃんのおうちに まだ片付けるところがあるの?

と来た。

50年以上付き合ってきた娘だから分かる。これはイヤミだ。

人んちの押し入れに、エラそうにとやかく言うからには、自分の家はさぞかし完璧に片付いているんでしょ、という意味なのである。

表面では感謝しつつも、長年溜め込んできたモノを、要らない、要らないとポイポイ処分されて、内心は中っ腹だったのだろう。

そういう気持も分からないではない。

また、そういうことを、ストレートに言う人ではないのも知っている。

おかーさんらしいよな、と思いつつ、

モチ ありますわよ オホホ…

おほほのすたんぷ

ふざけた返事をしておいた。



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2021/03/17 11:30

おしいれ話。

♪ぷるる… ぷるる…♪

はいモシモシ… なんだおかーさん どしたの

さいきんは、だいたいの用件をLINEで寄越す母から、珍しく電話。

…いや あのさ…

やけにモゴモゴしている。

いや…オシイレがさ…

言いたがらないのを根気よく聞くと、押入のモノを出そうとしたら、ひっ散らかって、えらいことになったらしい。

モノが多く、あらゆる収納が魔窟状態の実家。

ことあるごとに捨てろ、片付けろと口うるさく言い続けたせいで、おばーちゃんは警戒して、私に収納の話題を向けなくなってしまった。

こんな風に相談してくるのはよっぽどのことだと、とるものもとりあえず駆け付けたら

うっひゃー!!

押入の前は、なるほど大変な様相を呈していた。

熨斗紙のかかったままの引出物や贈答品。

私やイモートの子供の頃の作品や賞状に、使えるけど使いにくかった電気製品。

よくぞこれだけの空間に詰まっていたものだ、と感心したくなる物量である。

こういうとき、ミョーに張り切ってしまう私は、さっそく腕まくりをして、整理にとりかかった。

バリバリと包み紙を剥ぎ、箱を畳み、中身を確かめる。いつもならば

ソレは要るから!

アレはいつか使うから!


抵抗を示すおばーちゃんも、疲れてしまったのか、今日はおとなしい。

横槍が入らないので、仕事がはかどる。捨てるもの、使うもの、どんどん片付けを進める。

汗をぬぐってふと顔を上げたら、おばーちゃんが顔を出し、さすがに感心のていで

アンタすごいわねエ! よく片付いたねエ…!

褒められて悪い気はしない。へへへ…、と笑顔になりかけたら

…空いたところに 何を入れようかしら…

と続いたので

やー めー てー!!!

思わず叫んだ。

どらえもんのねどこ



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2021/03/16 11:30

もふもふ話。

マグを片手にソファにかけたら、クッションが邪魔っけで、行儀悪く足で蹴落とした。

ボルスターというのだろうか、円筒のクッションだ。

もふもふくっしょん

モフモフだった毛並みも、今はダマダマになり、見る影もない。

そろそろ処分の潮時かしら…

床に落ちたクッションを眺めていたら、ふと疑問が湧いてきた。

そもそも なんでこんなの買ったんだろ?

記憶をたどれば、それはたしか仕事帰りだった。

駅からバス停へ、通り抜けたショッピングモールの中の雑貨店。

店頭セールで、コロッケのように積み上げてあるそれを、つい手を伸ばして触ったのだ。

ふあ~… もふもふ~

気がつけば、かさばる紙袋を抱えていた。

うちに帰ってソファに腰掛け、買ってきたクッションをさっそく抱え込む。

モフモフの柔らかい毛並みに、ネコを撫でるように触れていると、かたくこわばっていた心の中の何かが、とろとろと溶けていった。

ムスメに続き、ムスコが家を出て、1人暮らし。

あんまり認めたくないけど、あの時はちょっぴり寂しかったのだ、と思う。

そんな生活にも慣れて、さいきんはクッションを膝に乗せることもなくなった。

モフモフの役割は終わったらしい。

コーヒーを飲み終え、ゴミ袋をとりに立ち上がる、4度目の春



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/03/15 11:30

ひのとり話。

いつものターミナル駅の、いつものホーム。

各停を待っていたら、深紅に輝くスターが、目の前に滑り込んできた。

昨年運行を開始した、新型特急である。

とっきゅうひのとり

鉄道ファンではないが、電車に乗るのは好きだ。

とりわけ好きなのは、車内での飲み食いで、お弁当さえ食べられるなら、着いてすぐ引き返してもいいくらいである。(→タビノヒ本。

用事がなければどこへも行つてはいけないと云ふわけはない。なんにも用事がないけれど、汽車に乗つて大阪へ行つて来ようと思ふ。
(「特別阿房列車」内田百閒)


百鬼園内田榮造先生の顰に倣いて、いつかそんな用事の無い旅をしたいものだ。

貧乏暇なしの私だが、ムスコが予定通り卒業してくれたらば、少しは余裕が出るだろう、と楽しみにしていたところが、この状況である。

新型特急の噂は聞けど、乗る見込みもなく日は過ぎて、1年。

窓越しに窺い見る豪華な車内はガラガラで、自慢のプレミアムシートに掛ける乗客も、開いたドアから乗降する人もない。

もったいなくて、痛ましくて

ひと駅だけでも、乗ってしまおうか…

そんな気持の私の前で、ドアが閉まった。



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ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2021/03/14 11:30

しゅうでん話。

…関西の鉄道各社は 深夜利用客の減少を受け 今日から終電の時刻を繰り上げます…

しゅうでんくりあげ

ニュースの声に目をやれば、作業員が、時刻表の表示板を入れ替える映像。

終電に乗る生活はしていないけれど、報じられた中には、ムスメの通勤路線が含まれていた。

けっして要領のいいほうでない彼女は、納期の直前にはよく残業する。繰り上げを知らずに終電を逃したら、さぞかしショックだろう。

私だって人の親である。

人けのない改札で呆然とする、ムスメの顔がアリアリと浮かんで、胸が痛んだ。

ちゃんとニュースに気をつけているかしら。言ってやらなきゃ、と思う。

しかし、思うには思っても、連絡はしない。

以前は、人いちばい迂闊なムスメに、ああしなさい、こう注意しなさいと、指示ばかりしていた。

ただの取り越し苦労もあるし、余計な差し出口になることも多い。

それでも子供が痛い目に遭うのを、むざむざ見てられない、というのが、安い親心なのだ。

それが、思春期にさしかかったムスメを見ていて、徐々に考えが変わっていった。

ムスメにだって失敗する権利はあるだろう。

スッ転ぶのだって経験であって、その機会を自分の安心のために奪っていいのか。

手も口も、出すより出さないほうがめんどくさい。家族LINEでつい

終電早くなってるよ 気をつけてね

送ってしまいたい思いを、ガマンしている。



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ごかぞく | コメント(10) | トラックバック(0) | 2021/03/13 11:30

はんかち話。

朝は例のごとく、安否確認の家族LINE

おはようのすたんぷ

スタンプに続く、おばーちゃんの今日の第一声は

ずいぶん目が腫れてるわ

朝の顔、アナウンサーの話らしい。

チャンネルを替えると、ちょうどそのアナウンサー氏が映っていて、なるほど腫れている。

きのう泣いたんじゃないの

何の気なしにそんな返信をした。

そんな―、男の人なのに

旧人類のおばーちゃんはそう言うが、男性だって泣きたい夜はあるだろう。

女だからメソメソ泣くとは限らない。

それにしても、もともと美貌の人とはいえ、もういいトシのオッサンである。

顔なんてついてればいいようなものなのに、いまだにとやかく言われるとは、全国ネットのテレビに出るとはご苦労なことだ。

そういえば、画面では、横浜駅のシウマイの売店が、販売不振でハンカチの自販機に代わったと言っていた。

旅行の自粛でお弁当が売れず、ハンドドライヤーの使用中止で必要になることが増えた、ハンカチが売れているそうだ。

ハンカチ→泣くと連想するあたり、私もまあまあの旧人類だと、ちょっと反省。



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てれびじょん | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/03/12 11:30
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