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なんばー話。

はー、今日は疲れた、暑かった。

ベンチに空席を見つけ、クタクタとへたり込む。

ここは各駅しか停まらない。次の電車を待って、何本もの通過列車を見送る。

ぼんやり向かいのホームに目をやったら、大学生くらいの男の子が、柱にもたれていた。

数字をデザインしたTシャツに、細い黒いパンツの、オシャレな青年だ。

…3…5…8…2…5…0…5…4…

グラフィティー風に描かれた数字。

なぜだろう、字体が印象的なだけではなく、引っかかるものがあって

…3…5…8…2…5…0…5…4…

つい頭の中で復唱する数字を振り落とすように、ぎゅっと目をつぶって、顔を左右に振った。

やがて待ちに待った各駅停車が、ホームに滑り込んできて

…3…5…8…2…5…0…5…4…

乗り込んでも、数字が頭から離れない。

所番地でも、電話番号でもないのに、ずっと昔から、知っていたような。

いかんいかん、疲れてるなワタシ。何か、他のことを考えよう。

そうだ今日は、生協の配達日

今週は、大好きなアイスを頼んであ…

…3…5…8…2…ハッ!生協の…

なんと、生協の、組合員番号だった。

長年申込書に記入し、ネット注文にしてからは、毎週入力してきた。

親しみ深いのも当然である。

見知らぬオバチャンの生協の組合員番号を胸に、すました顔で行ったり来たりしているのかと思うとおかしくて、オシャレ青年が気の毒になった。

なんばーてぃーしゃつ



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ごきんじょ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2021/06/30 11:30

さいとの話。

昨日見たコミュニティーサイト(→てりょうり話。)には、まだ若かった頃に会員登録して、以前は毎日のように見ていた。

家事の工夫、人付き合い、子供の躾に、見も知らぬ人の投稿を参考にした。

匿名の気安さで、離婚の泣き言を聴いてもらったこともある。

子供も成長してしだいに遠ざかり、久しぶりに見て、驚いたのが、その変わらないこと。

夫が家事をしない

ママ友とうまくいかない

姑が気に食わない…云々


書き込まれた女性の悩みごとは、20年経っても、寸毫も変わっていない。

新型ウィルスやらリモートワークやら、目新しいトピックこそあれ、芯にある問題はちっとも解決されていないのである。

悩みごと、ことに対人関係の悩みは、時間が薬という面が多分にある。

同じ問題の周囲を、グルグル回るうちに、ある者は状況が変化し、ある者にはあきらめが訪れて、次第に輪から離脱していく。

それはまるで、盆踊りの輪が、夜の更けるにつれて疎らになるように。

そして、真ん中に据えたままの問題には

名もなき家事、ヘリコプターペアレント、ワンオペ育児、産んだ記憶の無い長男…※注

次々と、名前だけがついていく。

日々、何千何万と投稿される悩みと、それぞれになされる、親切なアドバイス。

あれはどこにも進まない、ただの堂々巡りだったのか。

輪から外れた安堵とともに、索漠たる思いがドッと押し寄せた。

ともばたらきのかじ

(※注)  

名もなき家事 … 料理、掃除といった区分には含まれないが、家庭の維持には絶対に必要な細々とした家事。家事分担の枠組から漏れ、気づいた者のみに負担となるため、配偶者への潜在的な不満を生む。
   
ヘリコプターペアレント … ヘリコプターのように子供の上に常在し、管理、干渉し続ける親。

ワンオペ育児 … 家族の支援なく、家事、育児、時には仕事も、1人でこなさねばならない状況。
 
産んだ記憶の無い長男 … 生活の自立を学ばぬまま成人し、結婚と同時に妻の負担となる男性。家庭維持の担い手とならず、子供と同じに手がかかることを揶揄する表現。




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もろもろ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2021/06/29 11:30

てりょうり話。

調べたいことがあって口コミサイトを見た。

女性向けのコミュニティーサイトは、悩み相談や、ちょっと聞いて!と話題であふれている。

タイトルを見ただけで気が滅入る、躾の悩みや、身内の愚痴に混じって

彼氏に初めて作った手料理は何ですか?

楽しげな投稿があったので、開いてみた。

定番の肉じゃがです!

一緒に行ったキャンプで、カレー作りました!

草野球にお弁当の差入れしました!


奥様たちが、若かりし日の、甘酸っぱい思い出を語っている。

私も話題に加わろうと試みたが

彼氏に初めて作った…???

なにひとつ思い出せない

田舎から送ってきた枝豆を茹でてくれたこと。

春雨サラダを教わったこと。

思い出すのは、彼氏に食べさせてもらったことばかり。

それもそのはず、独身時代は女子寮で、男子禁制だった。

そして私は、今も昔も、よそんちの台所に入るのはキライなのである。

たとえ、大好きな彼氏の台所だとしても。

彼氏に料理作ったこと、ありません!

などと投稿しては、皆様をシラケさせるのは目に見えている。

タメイキをひとつついて、サイトを閉じた。

にくじゃが
(自慢じゃないが私の肉じゃがは超美味しい)



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むかしむかし | コメント(10) | トラックバック(0) | 2021/06/28 11:30

ふりあう話。

どうもこの辺りは、植木の剪定時期らしい。

団地、遊歩道、車道沿いの植込、それぞれ所管も違うであろうに、昨日もあちこちで、生垣を刈るバリカンの音がしていた。

サッパリと、来るべき夏を待つのだ。

今朝は曇り空を気にしながら、少し早めに出た。

四角く整った低木の茂みを、湿り気を帯びた冷たい風が撫でていく。

ここはいつも散歩の人が多くて、駅まで何人もの人と行き会ったが、なぜか物足りない

ナンカヘンダナと思いつつ、スコスコと駅に着いて、改札を通った時、ああ、と思い当たった。

両側にある植込が、ワサワサ茂っていると、道幅は狭くなる。

犬を連れている人、荷物の多い人とすれ違う時は

どうぞ…

どうも…


声にはださねど、気分的な譲り合いも生じる。

しかし植木が剪定されると、歩道は広々として、人を気にせず歩くことができるのだ。

袖振り合うも多生の縁とやら。

人付き合いは苦労が多いけれど、誰とも干渉しあうことのないのもまた、頼りないものなのだな、と、ふと思った。

車窓は早や、細かい雨が降りだしている。

そとはあめ



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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/06/27 11:30

むげんの話。

夏野菜のいただきものが増えてきた。

貧しい家計にはありがたいことだが、同じ時に、同じ野菜がドッと来るのはなぜだろう。

キュウリをもらった翌日にまたキュウリ。

サヤインゲンをいただけばそればっかり。

大葉に次ぐ大葉

メニューに困って、苦し紛れに、ふだんはしないレシピの検索をしてみた。

ネットで人気の料理なんてものは、だいたい信用ならない。マズくはないけど、毛が3本足りないような、寝ぼけた味のものが多い印象だ。

野菜の名前で検索すると、やたらと出てくるのが無限○○

無限ピーマン、無限キュウリ、無限モヤシ…。

○○が無限に食べられるという触れ込みの、野菜料理だ。

ヘソマガリの私は、流行りというだけで眉に唾する傾向がある。満腹になったら終わりのものに、無限と冠するインチキくささも気に食わない。

うたぐり深くレシピを眺めたところ、一定の傾向が見出せた。

共通する調味料は、顆粒の鶏がらスープと、ごま油。加熱方法は電子レンジのみ。

作らなくても、ほぼ想像のつく味である。

佃煮なんかに比べれば、たしかにアッサリ食べやすそうではあるが、だからって無限は大げさだ。

それでも万が一無限だと困るので、フツーの煮物を作ることに決め、パソコンを閉じた。

むげんれっしゃ
(こちらの「無限」にも特に興味はない)



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2021/06/26 11:30

クマノコ本。

30年ばかり前、はじめてロンドンに旅行した時、行ってみたい場所があった。

パディントン駅である。

くまのぱでぃんとん
「くまのパディントン」 ボンド作 フォートナム画 福音館書店

ペルーのリマの「老グマホーム」に入居することになったおばさんと別れて、イギリス行きの船に忍び込んだ仔グマ。

ブラウン夫妻は、遺失物取扱所の郵便袋の陰で、スーツケースに座っている彼に気づく。

帽子をかぶり、首には

どうぞこのくまのめんどうをみてやってください。おたのみします。

札を下げたこのクマを、夫妻は出会った駅にちなんで、パディントンと名づけた。

プーさんと並んで、イギリスで一番有名なクマ、パディントンの誕生である。

小さい頃から親しんできたクマの、名の由来となる場所をちょっと見てみたい。記念碑とか土産物屋なんかが、あるかもしれない。

国鉄と地下鉄の両方が乗り入れる巨大ターミナル駅の高い天井の下、私は途方に暮れていた。

およそ取り付く島もないほど、忙しそうに行き来する乗客たち。やっと捕まえた駅員に

パディントンベアのメモリアルはないか?

たどたどしく尋ねても、要領を得ない。

今ならアッサリあきらめるだろうが、当時は私もまだ若く、粘り強かった。

何人も聞き続けると、ようやく中の1人がああ!と思いついた様子で、こっちへ来い、と手招いてくれた。

駅舎の長い廊下を歩いて、ドアを入れば、そこは窓口のある長いカウンターを備えた事務室。

壁際の小さなガラスケースの中に、ぼさぼさしたクマのぬいぐるみが飾られている。

これだけ?あの有名なクマの、記念がたったこれだけ?

拍子抜けしつつ、案内してくれた係員のニコニコ顔に励まされ、パチパチと写真を撮る。

日本なら、きっと駅のそこらじゅう、ポスターに、看板に、クマだらけにするだろう。

パディントンチョコレートにパディントンクッキー、パディントン饅頭がキオスクに並ぶだろう。

ここはオトナの国なんだな、と思った。

ありがとう、と部屋を出て振り返ると、扉の上に、さきほどは気付かなかった表示が読めた。

遺失物取扱所

嬉しくなって、黒ずんだ金属のプレートをしげしげ眺めていると、失くし物をした人が、おかしな東洋人がいるよ、という顔で中に入っていった。

プレートの写真は、撮っていない。

paddington-statue.jpg
(私みたいなやつがよほど多かったのか、今は銅像があるらしい)


くまのパディントンの誕生日に際し、2017年6月25日の記事を再掲載いたします。


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ブックガイド | コメント(4) | トラックバック(0) | 2021/06/25 11:30

えんどう話。

惰性だけで続けていたベランダ園芸を、スッパリやめて1年以上経つ。

そんな私が、唯一栽培しているのが

とうみょう

豆苗である。

カットした残りを水に浸けておくと、また食べられるようになる。季節関係なく、水替えだけで、ビヨビヨ伸びてくれる、かわいいヤツだ。

食べちゃー伸ばし、伸ばしちゃー食べて、窓辺にはいつも豆苗がある。

しかしここに、小さな悩みが。

豆苗を入れる容器である。

日照が必要なので、窓ガラスのそばに置くのに、プラスチック容器は、どうにもカッコ悪い。

食べた豆苗をもう1回食べようという、ビンボくさい精神が、よそ様からマルミエだ。

ビンボーは仕方ないけど、ビンボくさいのは隠したい。

そう思っていたある日、百円均一でこんなものを見つけて、ワッと声が出た。

とうみょうぷらんたー

百均恐るべし!

豆苗をオシャレに栽培したいなんて願望を、どこで誰に気づかれたのかと思うと気恥ずかしくて、他のものに紛れて、そそくさと購入した。

かわいくて水替え簡単、よく考えられた商品だ。

HARICOTS

横腹に書いた文字は、インゲン豆という意味だが、豆苗の豆はエンドウ豆

そこだけが、ちょっと残念である。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2021/06/24 11:30

すてーき話。

今日は気の重い仕事がある。

緊急事態宣言の発出で延期になり、ひそかに喜んでいたものの、解除によって再開したのだ。

そのせいで、数日前からユウウツだった。

いよいよその仕事に向かう朝となったわけだ。

昨日はクヨクヨ考えて過ごしたあげく、夕方になって買物に出た。

仕事がどんなにつらかろうが、1日を終えて帰ったら、自分で自分のゴハンを作らねばならない。

やさしくお疲れ様ですと言う人も、夕飯の面倒までは見てくれないのである。

少々やさぐれた気分で精肉売り場に立ち

♥ちょっと豪華にステーキフェア♥

ポップの文字に、フンと鼻を鳴らした。

ビンボーな私は、ほぼ鶏肉しか食べない。たまに買う牛肉は、肉じゃが用の切り落としだ。

分厚いステーキ肉なんか、カンケーねーやと通り過ぎかけて、いや待てよ、と思う。

たまにはステーキ買って、焼いて、食べたっていいじゃないか。

イヤな仕事の時給を計算すれば、黒毛和牛は無理でも、オージービーフくらいにはなる。

えーい、買っちまえ!

すてーき

そんなわけで、今日は冷蔵庫にステーキがある。

イヤな仕事がイヤなのには変わりないけれど、家でステーキが待っている。

そう思うだけで、足取りがちょっと軽くなるのだから、つくづく簡単な人間だ。

イッテキマース!



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2021/06/23 11:30

りんごの話。

二度寝するとヘンな夢を見る。

今朝は、女性歌手が半分に割ったリンゴの衣装で、歌を歌っていた。

インパクト重視もほどがあるだろ… あ、夢か!

思ったとたん、目が覚めた。

名前しか知らない人が、なぜ出てきたのか。

夢で聴いた歌が頭に残っていて、歌いながら身体を起こし、フトンをざっと畳む。

けっこう、いい歌だ。

彼女の歌は知らないから 私の創作かな?

いい気分で、ハナウタまじりにご不浄に入る。

用を済ませてジャーッと流し、ハッと気づいたら、さっきの歌がもう思い出せない

歌詞も、メロディーも、欠片も覚えていない。

どうやら水洗の水で流れて行ったみたいだ。

もしまたあんな夢を見たら、今度はご不浄に行く前に、録音しておこうと決めた。


(残念ながらこの歌ではなかった)



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2021/06/22 11:30

あおむし話。

…バリバリバリバリ…

朝からモーター音が聞こえると思ったら、植栽の剪定が入ったようだ。

せっかく青々と伸び始めた枝葉を刈ってしまうのは惜しい気もするが、1棟から2棟へ、2棟から3棟へ、作業は無情に進んでいく。

郵便局に行こうと外に出ると、お昼休みらしく、すっかり静かになっていた。

見渡せば、どこまで進んだかは一目瞭然である。

通路脇でもさもさ茂っていた植込みも、きれいな楕円形に整えられていた。

あ、アイツ、どうなったかな?

この木には、初夏にかけて、でっかいアオムシがつく。

本体は葉の陰に隠れてなかなか見つからないが、歩道に差し出た枝の下に、丸いフンが落ちているので、わかるのだ。

春から伸びた枝はすべて刈り取られ、茂み自体が7割ほどに縮まっている。

柔らかい新芽をむさぼり食っていたヤツは、枝葉もろとも刈られてしまったのだろうか?

駐車場まで来たら、ブルーシートで荷台を覆った軽トラックが停めてあった。

横腹に、園芸会社の名前。

アオムシの枝も あの荷台の中かしら

とりあえず ごはんに困ることは 無いわよね


埒もないことを考えながら、トラックの脇を通りぬける。

翌朝、例の茂みの横を通ったら、丸い黒い落し物は、もう無かった。

はらぺこあおむし



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ごきんじょ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2021/06/21 11:30
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