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キノサキ本。

志賀直哉は、その文名をあげてのち、13年の長きにわたって奈良の地に住んだ。

めぼしい作品の無い、休筆期間中であったにせよ、当地が志賀志賀と騒がず、その旧居を保存する程度で済ませているのは、やや不審である。

「食ひものはうまい物のない所」だの、「男の児を育てるには何か物足らぬ」だの、志賀も悪口を言ってはいるが、根に持つほどのことではない。

たった1年赴任した夏目漱石に、田舎田舎とさんざんにこきおろされたあげく、「不浄の地」と捨て台詞して去られた、四国松山。

その松山が、坊ちゃん、坊ちゃんと漱石先生を持ち上げ続けているのと好対照で、不思議なくらい冷淡である。

かく言う私も、この小説の神様に、たいして興味が持てない。

なぜだろうと考えた時、高校の教科書で読んだ「城の崎まで」に思い当たった。

小説の舞台となった城崎温泉は、お湯がよく、宿がよく、冬のカニが有名で、関西人にとっては、身近な保養地である。

城崎と聞くだけで、温泉のお湯に暖まったように、ほのぼの、いい気持になる。

だから興味津々で読んでみたところが、ハチだの、ネズミだの、ヤモリだの、瀕死の小動物がモゾモゾするばかり。

あんないいとこに行って、何が気に食わないんだと思ったのを覚えている。

今日は志賀直哉の没後50年にあたる。

きのさきにて



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ブックガイド | コメント(6) | トラックバック(0) | 2021/10/21 11:30

にんずう話。

気楽な1人暮らしでも、帰宅直後はせわしい。

洗濯物の取り込みや、夕飯の支度。帰るなり点けたテレビも、ゆっくり見ることはない。

脱いだ出勤着を洗濯機に入れるため、リビングを横切った時、画面が目に入った。

にんずう1

ああ、今日の感染者数か。

人間は何にでも慣れる。

最初は1人2人で動揺してたのに いつの間にか2桁でも平気になってしまったなあ

感慨を抱いてテレビの前を通り過ぎかけたが

アレ?なんか多くなかった

当地の日々の感染者数はさいわい落ち着いており、今週はおおよそ1桁で推移していたはず。

二度見した画面は

にんずう2

新型ウィルスと並ぶ、今のトピックであった。

まあ、こっちも似たようなものか。

昨日の近畿二府四県、正しい感染者数はこちら。

にんずう3

似てるなァ。もしかして、わざとかな?



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てれびじょん | コメント(2) | トラックバック(0) | 2021/10/20 11:30

ごぜんの話。

今日はおばーちゃんの通院。

深刻な病状ではないが、検査の結果を一緒に聞いてほしいというので、着いて行く。

病院というのは、予約があっても待たされるものである。朝早くから、先方の都合で振り回され、くたびれてお腹が減った。

患者である母も同様で

はーヤレヤレ ご飯食べて帰りましょ

駅までの通りに、チェーン店の定食屋があったので、立ち寄ることにした。

昼どきにはまだ少し早く、店内は空いている。

私はどこに行っても、決めるのが速い。おばーちゃんはメニューを見て散々迷った挙句

ワタシこの ナントカ御膳にする!

ええ~?多くない?食べられる?

大丈夫ダイジョウブ!お腹ペコペコだし

そうは言ったものの

ごぜん

さて、くだんの御膳がテーブルに届くなり

ちょっとコレ 食べてくれない

またかよ。

彼女はセットとか御膳とか、コマゴマ入ったメニューがお好みである。

さらに、せっかくの外食、豪勢にいきたいという気持が働き、自分の食欲のことは、つい棚上げになるようだ。

さあ注文したものが来た、と思ったら、お皿の上を見渡して

あんまり好きじゃないかも… 

食べきれないかも…


そして、残すという選択肢が無い年代の老母は

これ食べて

何でも食べる(と思われている)娘に、お鉢ごとお下げ渡しあそばす。

ええ~、またぁ~?

こちらのお腹加減などお構いなしなのに、習慣とは恐ろしいもので、渡されると食べてしまう。

店を出て、ふくれたお腹を撫でていたら

また太った?  ダメよ 節制しなくちゃ もういいトシなんだから…

食べさせた張本人に言われて、ムカッとした。



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2021/10/19 11:30

ちょいいや話。

朝のワイドショーで、タレントが買物するのを映していた。

都心の大型雑貨店

衣類や文具が人気のブランドだが、いつの間にやら扱いが増え、食品に手を伸ばしているらしい。

オシャレで目新しい食料品に歓声を上げる様子を見て、ヘエーと思いつつもやや複雑な気分。

この店に限らず、このごろは、本来食品を扱わない店で、シャレこいた食品が売られていることがたまにある。

流行りの服の隣の棚で紅茶を売ったり、来年の手帳に並べてレトルトカレーを売ったり。

私はこういうのが、ちょっとイヤなのだ。

理由はよく分からないが、たとえば、もし洋服ダンスにインスタントラーメンが入っていたら。

デスクの抽斗にツナ缶が入っていたら。洗面台の歯ブラシと、サラダ油が並んでいたら。

未開封ならニオイも出ないし、常温保存の商品だったら、どこに置いてもよさそうなものだけど、やっぱりちょっとイヤな気がする。

そんな感じといえば、お分かりいただけるだろうか。

こういう些細なイヤさは、全く個人的な好悪で、人に話しても共感はされにくい。

ここに書きながらも

雑貨屋さんでお菓子、いつも買ってます!

何を言ってるのか?意味が分からないです


コメントが来そうで、ドキドキしている。

かっぷめん
(カップ麺はおいしいが収納場所に困ることが多い)



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てれびじょん | コメント(14) | トラックバック(0) | 2021/10/18 11:30

カキヘタ本。

寝る時に読むのは、短編がいい。

面白かったり、面白くなかったり、ナンノコッチャ分からんのがあったり、そのリズムが心地よく眠りを誘うのである。

血沸き肉躍る長編で徹夜するのは、もう若い人に任せたい、と思う。

せいすいしょう
(「醒睡笑」安楽庵策傳著 東洋文庫)

今読んでいるこれも、短い笑い話が並んでいて、長いもので1ページ、短い話など2行で終わってしまう。

どこかで聞いたような、それでいて新鮮なエピソード。何かの元ネタかなと思ったり。爆笑するほど面白くはないが、それくらいがちょうどいい。

ところが昨夜、ガバと跳ね起きたくなるような1節があったのだ。拙訳でご紹介すると

和泉の国の侍が、馬上から、銭の落ちているのを見つけた。

みずからは馬から降りず、供の中間に「あそこにあるものを取ってまいれ」と命じたところ、中間拾って「これは柿のヘタでございます」と。

すると侍の言いようが「わしとて分かっておったが、馬が怖がるから拾わせたのじゃ」


失敗をして負け惜しみを言う類の、ありがちな笑い話だが、私が反応したのは

あ、5百円玉だ!

薄暗いバス停で、かがんで拾ってみたら柿のヘタだったという経験があるからだ。

4百年も前の人が、自分と同じことをして、笑ったり笑われたりしている。本を読む楽しみは、そんなところにもある。

たしかブログの記事にもしたはずだ、と検索してみたら、あったあった(→よろしく話。)。

しかし驚くことに8年も前である。

そしてさらに驚くことに、あの時必要を痛感した老眼鏡を、私はまだ買っていないのであった。



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ブックガイド | コメント(8) | トラックバック(0) | 2021/10/17 11:30

しゅうせい話。

土曜の朝はチコちゃん。今日のお題は

ナッツが美味しいのは…

ふむふむ。

土に埋めてほしいから~!

地面を掘るリスの映像が流れた。

栄養豊富で大ぶりの木の実は、越冬の食料として鳥獣に運ばれ、地面に点々と埋められる。

そのうち、食べ忘れたものが芽を出すのである。

動物の習性を巧みに利用した戦略に、なるほどと感心したとき、ふと思い出した。

そういえば私も、ドングリを埋めたなあ。

毎年この季節、駅までの道でドングリを拾う。

暖かな色や、愛らしい丸い形を見ると、踏み割られるままになるのが惜しくて、ひとつ、ふたつと、つい拾ってしまうのだ。

大切に持ち帰るものの、何にする当てもない。

しばらく窓枠なんかにのせて眺めたあと、しかし捨てるにも忍びなくて、窓の下の植込みの中に、こっそりと埋める。

思えば、そんなことを何年も繰り返している。

チコちゃん風に言えば、こうなる。

ドングリがかわいいのは… 土に埋めてほしいから~!

もしかして私も、ドングリに習性を利用されているのだろうか。

どんぐり



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てれびじょん | コメント(10) | トラックバック(0) | 2021/10/16 11:30

ぺろりの話。

朝のコーヒーには牛乳を入れる。

とぽとぽと注いで、傾けたパックを戻したら、注ぎ口に小さなしずくがついていた。

指で取って、ペロリ。

行儀が悪いが、そのままにするのもナンだし、かといっていちいち何かで拭きとるのも面倒だ。

他の人はどうしてるのか知りたくても

牛乳パックの口のしずくはどうしますか?

なんてアンケートは、誰もとってくれない。

その姿を見て幻滅する人も、注意する人も、この先現れる予定はないから、多分このままだろう。

わびしいような、安心なような。

飲み終えたマグを洗おうとスポンジを手にしたとき、食器用洗剤が残り少ないのに気づく。

1回は洗えそうだけど、今朝は時間がある。

だいどころようせっけん

詰替え用の洗剤をボトルに入れておこう。

とぽとぽと注いで、注ぎ口のしずくを指で拭い、ペロリ…

ウゲ~! マ~ズ~い!

流しでぶくぶく口をゆすぎながら、やっぱりこの癖は直した方がいいみたいだ、と思った。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2021/10/15 11:30

さんだん話。

今日は休みなので、テレビをお伴に昼ご飯。

殺人や放火、物騒な事件のニュースに気持が沈む。食事中に見るんじゃなかった。

チャンネルを時代劇の再放送に換えて、ソファに移ったら、いつの間にかウトウトしたらしい。

…今なら早割 だんぜんお得です…

剣客は商売を終えて、テレビショッピングがはじまったみたいだ。

…こちらの散弾銃

さんだんじゅう1

ドえらい物騒な商品をお勧めしている。

テレビショッピングでそんなもの売るようじゃ 日本の安全神話も風前の灯だな…

寝ぼけた頭でいったんはそう考えたが

…いやいやいや、なんぼなんでもそれは無いでしょ!

あわてて飛び起きて画面を見たら

さんだんじゅう2

おススメはこっちの三段重だった。

とりあえずはホッとしたが、もうそんな時季かと思うと、別のドキドキがしはじめた。



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てれびじょん | コメント(8) | トラックバック(0) | 2021/10/14 11:30

ないない話。

一日はコーヒーから始まる。

お気に入りのマグを片手に、静かな朝の空気に、立ちのぼる香気…となるところ、なぜかバタバタしている、今朝の私。

無い、無いのだ、そのお気に入りのマグが。

まぐ

18歳で実家を出た時、最初の食器として買ったマグカップ

数度の引越と、就職、結婚、離婚を経て、変わらずに手元にある、思い出の品物である。

昨日たしかにそれでコーヒーを飲んだのに、食器棚にも、洗いカゴにも無い。

置きっぱなしにしたかと、テーブルの上やパソコンデスクも見たが、無い。

大捜索もむなしく、ソファに座り込んだ。

思えば昨日はいつもより少し早く家を出た。

自転車に飛び乗ってから、戸締りが心配になったが、引き返す時間がなくて、そのまま出勤した。

忙しい一日を終えて帰宅した時、カギの手ごたえがあったか、どうか。記憶にない。

もしやが侵入して、金目のものと一緒にマグを持ち去ったのだろうか。

いや、無い、無い!

金目のものも無いが、わざわざ中古の、しかも割れ物を持ち去る泥棒など、いるわけがない。

…こぽこぽこぽ…

コーヒーメーカーの音が途絶えたので、しかたなく立ちあがって、食器棚からムスメのマグを取り出し、コーヒーを注ぐ。

タメイキをつきながら、冷蔵庫を開け、牛乳を…

アッ!

そこにあれほど探した、私のマグがあった。

昨日、急いで出かけるので、飲みきれなかったコーヒーをしまったのだ。ピチッと丁寧に、ラップまでかけたのに、思い出せなかった。

50代も後半、こういうことも増えていくのだろうと思うと、落ち込むよりシミジミしてしまう。

マグを手に窓辺に寄れば、秋の空気が、冷たい。



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もろもろ | コメント(11) | トラックバック(0) | 2021/10/13 11:30

ふるきず話。

このごろ、昼夜の気温差がやけに大きい。

身体に昼の熱気をたもったまま、つい半袖パジャマで寝ると、翌朝、夏掛けからはみ出した足が、氷のように冷たくなっている。

しばらくしてあったまるが、イヤな感じが残る。

ズキズキ痛いというわけではない。シクシクと、その箇所が存在を主張するのである。

いつぞや骨折した(→ぽっきり話。)指だ。

柴犬似の先生の治療のよろしきを得て、はや1年。

治ったはずなのに おかしいな…

見たところ、傷もないし、腫れたりもしていない。ただ、曲げ伸ばしには、違和感がある、ような気もする。

その指をつまんで、あちこちに向けたりしていたら、ふと思いついた。

もしやこれが 古傷が痛むというやつなのでは…

スポーツ全般苦手な子どもだった私は、すくすくと育ってインドア派の大人になった。

骨折はおろか、捻挫や突き指すらしたことのない、温室育ちである。

青春を部活にささげた人たちが、若い頃に痛めたヒジやヒザをかばいつつ

季節の変わり目は 古傷が…

訴えるのを聞くたび、カッコいいなあと思っていたのだ。

齢60を前にして、古傷を持つ身になるとは、なんだか、こそばゆい。

骨折の理由が、サンダル履きでスチール棚を蹴飛ばしたことなのは、伏せておこうと思う。

しばいぬまるのわんにゃしんぎょう
(「折れてますね、ポッキリ!」嬉しそうに言われた)



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もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2021/10/12 11:30
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