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ぴちぴち話。

大寒のあくる日。起きたときから寒くて、背中に貼るカイロを貼った。

いつも通りサンダルをつっかけてゴミ出しに出たら

…寒ッ!

あわてて玄関に戻り、たまたまフックにかかっていた上着を羽織った。

ゴミ袋をつかんだ手を、袖口に引っ込めて歩いていると

…ぴち…

ひと気のない道、かすかな音が聞こえる。

小さなしずくが、舗装道路にはじけてしみこむ、降り始めの雨の音だ。

そういえば昨日は、雪がちらついた。

…ぴち…

空は明るいから、チラッと降って止むのだろう。

…ぴち…

音は間遠に続くが、ゴミ袋を収集場所に置くあいだにも、頬や手に雨の感触はなかった。

…ぴち…

降りだす前に家に戻れてよかったと、ホッとして玄関に鍵をかけていたら

…ぴち…

アレ?ここ、家の中

身じろぎすると、また

…ぴち…

よくよく耳をすませば、音は背後で鳴っている。

背中に貼ったカイロが、上着に擦れる音だった。

なあんだ…

テレビを点ければ、予報は曇りのち晴れ。かわいた雲が、風に流れていく。

そらとぶ



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もろもろ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/01/21 11:30

こらぼの話。

テレビを点けたら、新作映画の舞台挨拶の模様を映していた。(→映画「鹿の王 ユナと約束の旅」公式サイト

ファンタジー小説をアニメ化した作品だ。

しかのおう

それでも、生きていく ― ユナと約束の旅

最初の公開予定の時から注目していたが、新型ウィルスの感染拡大で、2度も公開が延長になり、見られずにいた。

そもそもこの映画に興味を持ったのは

しかのその

それでも、奈良にいく ― ナラヘ約束の旅

こんなポスターと一緒に貼ってあるのを見たから。

いわゆるコラボ広告というやつである。

元のポスターに似せて、ふざけているように見えて、※シカには乗れませんと書き添えているあたり、万事に慎重な県民性を示している。

地元住民としては、これを見たからといって、シカに会いに行きましょうとはならないけれど

しかのゆ

それでも、温泉にいく ―

広告の出来はともかく、日帰り温泉にはちょっと心が動いた。



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ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/01/20 11:30

うえした話。

トイレットペーパーを使い終わったので、新しいのをセットする。

子供たちがいた頃は、なぜ毎度毎度、私ばっかり…とむかっ腹を立てたものだが、1人暮らしの今は、自分で使って、自分で補充するだけ。

いたって心穏やかに、ひと巻取り出しながら

今回はどっちだっけ?

少し考えた。

どっち、というのは、上か下か、である。

うちの御不浄は、このように

といれっとぺーぱーほるだーかばー

上のロールを使い終えたあと、補充するための予備がぶら下がっている。

ただ、実際、下から上に補充すると、空になった袋がブランと下がっている格好になり、みっともないことこのうえない。

そこで、すぐに収納から新しいロールを出して、下の袋に入れることになる。

めんどくさくてつい、新しいのを、下の袋を経由せず、上にセットすることも多い。

そうすると、予備はぶら下がりっぱなしになってしまう。

直接の補充を何度か繰り返したら、下の紙も使ってやらねば、と考えたりするわけだ。

たかがトイレットペーパーで、せめぎ合う心よ。

いっそ、ぶら下げ方式自体、やめちゃう方が簡単かもしれない。

ところで、この予備をぶら下げるもの、私は長年トイレットペーパーホルダーと呼んできたのだが、じつは

といれっとぺーぱーほるだー

紙をセットする、こちらが「トイレットペーパーホルダー」であるらしい。

ぶら下げるアレの名前は「トイレットペーパーホルダーカバー」であることを、今回はじめて知った。

なにごとも勉強である。



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もろもろ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/01/19 11:30

とうさつ話。

朝の出勤途上で、面白いものを見た。

バッグのポケットから、スマホを引っぱり出し、なんの気なしにパチリ(音はしないけど)と1枚。

しばらく歩き、そこから離れてから

ちょっとマズかったかな…

撮らなきゃよかったと思い始めた。

その面白いものは、個人宅の窓枠に載っていた。

外を向けて置いてあったから、見るのは構わないのだろうが、写真を撮っていいかは別の話だ。

さいわい人通りはなく、誰にも見られてはなかったものの、客観的には、私は人んちの窓を無断で撮るあぶないオバサンである。

事務所に着いたら 消去しよう…

考えながら到着してみると、めずらしく電話やらなんやら、バタバタと忙しい。

カバンを下ろしただけで、デスクにも就かず右往左往していると

♪ぴんぽ~ん♪

事務所のインターフォンが鳴った。

ドアに近い席の同僚が、腰軽く応対に出てくれる。

…ハイ… あーハイ… うちの者で…

来客でも、宅配でもなさそうな応対が、うっすら聞こえてきたと思うと

ぢょん子さん これ…

戻ってきた彼女の手にブラ下がっていたのは、私のネームプレートだった。

そこで拾って 社名見て うちじゃないかって…

場所を聞いてギョッとした。例の盗撮の現場である。

スマホを引っぱり出した時、同じポケットに入っていたネームプレートを落としたらしい。

よりによって犯行現場に、名前と社名入りの証拠を残してくるとは。

胸がドキドキして、顔が赤らむのが分かる。

ふるえる手でスマホの写真を消去しつつ、私には悪いことはできない、とつくづく痛感した。

ねーむぷれーと



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ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/01/18 11:30

わすれる話。

まだ暗いうちに目が覚めて、窓を開ける。

少しだけ特別な気持で眺める、いつもと同じ朝の景色。

たくさんの人の暮らしを根元からひっくり返した、あの震災から27年目の朝だ。

昨日の夜のニュースでは、追悼式典の灯篭点火の模様が流れた。

わすれない

灯篭の文字は 震災の経験を忘れることなく伝えるという意味が…

忘れるな、というなら、「勿忘」だろうが、「忘」の1字にしたい気持も、わかる気がする。

つらい経験をしたあとの生き方は、人それぞれ。

悲しみを生んだものと、戦う人がいる。

自分の痛みを、多くの人に語る人もいる。

しかし、生きていくために、苦しみを隠し、無かったものとしている人も、それと同じか、いや、それ以上にたくさんいるのだ。

きょうだいを亡くした、と人には言わず、ひとりっ子です、と言っている人がいた。

息子さんが3人いたはずなのに、いつの間にか2人の話しかしなくなった人も、知っている。

忘れてはならない、けれど忘れたい。

そんな思いが込められた「忘」の文字に、今年も火がともされ、そして消える。



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てれびじょん | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/01/17 11:30

ペンギン本。

ムスメは小さい時、図鑑をじーっと見ている子供であった。

動物や恐竜の絵を、いつまでも眺めて飽きない。

みつゆびなまけもの…

ぱきけふぁろさうるすは そうしょく…


はやくから字は読めているはずなのに、童話の類は読みたがらなかった。

ある日、知り合いのオバサマの家を、ムスメを連れてお訪ねする機会があった。

オバサマは子供好きらしく、大歓迎された。

大人が大人の話をするうち、手作りのオヤツにも飽きて、退屈し始めたムスメに気付くと

ムスメちゃん、本は好き?

オバサマは童話がお好きで、読み聞かせのボランティアなどもなさっているのだという。

ムスメはボーッとしたまま、立派な本棚のまえに連れていかれ

どれでも好きなのを読んでね?

ご親切に尋ねてくださったオバサマに

ずかんは?

そこに無いものを言う。

動物が好きらしい、と判断したオバサマは1冊を引き抜き、ムスメに手渡した。

ペンギンの描かれた表紙を見て、お話の本と気づいたムスメは、ちょっとガッカリした様子だが、おとなしく読みはじめた。

やがて用件が終わり、帰るよ、と声をかけた時もまだ読んでいたから、面白かったのだろう。

面白かった?

うん!おおかもめがかっこよかった!

ムスメの答えに、オバサマは面食らったように

アラそうなの… へえ… カモメが…?

なんだかハギレが悪い。

お気に入ったならさしあげるわ、と、もらって帰った本を、あとで私も読んでみた。

2羽の子供のペンギンの冒険話。

オオカモメは、ペンギンを狙うオソロシイ敵なのである。

襲われるペンギンに感情移入するのが、まあ普通だろう。

しかし、ティラノサウルスが、トリケラトプスをバリバリかじる図を、いつも楽しく見ているムスメである。

カッコいいのは、だんぜん獲物を狙う肉食動物なのだ。

オバサマが当惑なさったのも、無理はない。

ペンギンの本は、長く本棚にあったけれど、今はどこに行ったのか、わからない。

ながいながいぺんぎんのはなし
(「ながいながいペンギンの話」 理論社刊)



作者いぬいとみこの没後20年に際し、2019年1月16日の記事を再掲いたします。



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ブックガイド | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/01/16 11:30

めにいる話。

新しいマスクのパックの封を切った。

自分で買ったのではない。もらいものである。

さいきん、ティシューより気の利いた粗品として、マスクをいただくことが増えている。

かつて入手に苦労したのが、ウソのようだ。

新しいマスクをかけて外に出てすぐ

おっきいな…

パッケージには普通サイズとの表示があったが、いつも使っているものより、明らかに大きい。

窮屈なのとちがい、少々大きい分にはまあいいだろう。むしろカバーする面積が大きいのは安心だ、とも言える。

しかし、しばらく歩くうちに、不都合に気づいた。

マスクの上の端が目に入るのだ。

ますく

実際の私は、この写真のように鼻が高くないので、大きいマスクを支える柱が無い。

せり上がって視界をふさぐマスクをアゴのあたりでつまみ、何度も引き下げながら、駅まで歩く。

ホームへの下り階段で、事件は起こった。

足元を気にして視線を下げたとき

痛っ!

両目に同時に、何かが差し込まれた。

寒かったその日、私は、スタンドカラーのコートを着ていた。

うつむくアゴが襟に当たり、襟がマスクを動かして、目玉に触ったのである。

とっさに手すりをつかんだからよかったが、階段の真ん中を下りていたら、危ないところだった。

スッ転んで転落し、打ちどころが悪かったら、マスクが目に入るという珍しい死因も、誰にも知られず終わったやもしれぬ。

あらためて、階段は手すりに手が届くところを下りよう、と決めたことである。



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もろもろ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/01/15 11:30

とんどの話。

目出度く松も取れて、〆飾りを外した。

実家の近所のトンド焼が無くなって(→どんどん話。)以来、神社のお焚上げに持参している。

しかし、このところの感染拡大で、私も何度目かの自粛生活中。

仕事も在宅なのに、〆飾りのためだけにバスに乗ってお出かけというのは、なにか違う気がする。

いろいろ考えて、今年は燃えるゴミに出すことにした。

形ばかりお清めの塩を振ってから、生ゴミなどとは別のポリ袋に入れる。

しめかざり

この地方の〆飾りは、ウラジロと紙垂で飾った〆縄に、ダイダイがつく。

うちはマンションなので、戸建の玄関に飾るような立派なのではなく、さしわたし20センチほどの小ぶりなものを選んだ。

昔、自家用車の前につけたくらいの大きさだ。

〆飾りとちがってダイダイは小さく作れないから、代わりにお葉付きのミカンが飾ってある。

ポリ袋越しに透ける、そのミカンが気になった。

これって 食べられるよね…

寒い外に吊るしてあったミカンは、まだ十分にみずみずしい。

神社に納める時は気にならなかったが、ゴミ袋に入れてみると、急にもったいなく思えてくるから、ヘンなものだ。

ごめんなさい 今年は勘弁してください

誰にともなく、小さくつぶやく。

そういえば、最近は〆飾りをつけたクルマを見ないが、いつの間に廃れたのだろう。

ちょっと面白くて、いいものだったけどな。



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/01/14 11:30

わらとも話。

中学生のころ、漫才ブームがあった。

テレビを点ければ漫才をやっている、という状況はしかし長くは続かず、私も大人になって、わざわざ見ることはなくなった。

見なくなっていたお笑い番組を、また見るようになったのは、アユカワさんの影響である。

彼女と会ったのは、15年ほど前のこと。

マジメな職業婦人という風情のアユカワさんと、どうした加減でそんな話になったのか

あら!枝雀お好きなんですか?

ええ 大好き! クルマにカセット積んでて…

ええ~っ!運転大丈夫ですか?

ハハハ…笑っちゃうと危ないかも

持っていた枝雀のDVDをお貸しすることになった。

以来、アユカワさんは私を、お笑いのわかる人、と決めたらしい。会うたびにその話題になる。

私は枝雀は好きだ(→しじゃくの話。)けれど、演芸全般に詳しいわけではない。

やや当惑しつつお付き合いするうちに、私も漫才やコントを見るようになったのだ。

引越して、お会いすることもなくなったが、アユカワさんは年賀状で、今年のおすすめ芸人を知らせてくださる。

昨年のおすすめ芸人は、みごとキングオブコント2021で優勝した。

わがお笑い友だちのセンスは、たしかなようである。





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てれびじょん | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/01/13 11:30

うどんの話。

朝起きたら、薄く雪が積もっていた日。

じっとしているせいか、日が照りだしてもまだ寒くて、仕事も家事もはかばかしく捗らないまま、昼になった。

厚着で縮こまってボンヤリしていると

うどん… おうどん食べたいな…

何の脈絡もなく浮かぶ。

さいわい年末にいただいた乾麺があるから、まずは鍋にお湯を沸かす。

さて、おつゆはどうしよう。冷蔵庫を覗いたら、肉じゃがでも、と解凍しておいた牛肉がある。

いいもん見っけ!

パックの半分を薄味で煮て、青ねぎの斜め切りと、茹でてだしをかけたうどんの上にのせた。

肉うどんである。

さあ、おひるだ。

人目もはばからず、ズズズとすすれば

…んー…んーまい!

幸福とは、自分で作ったごはんがおいしいこと。

息も継がずに、ドンブリが空になって

むは~… おいしかったぁ~…

ソファにひっくり返りつつ、すっかり温まったお腹を撫でる。たしかに美味しかったのだが、それにしても満足感が尋常でない。

単に1杯のうどんを食べた、というだけでなく、待望した何かを成し遂げた達成感すらある。

なんでだろう?肉うどん… はっ!



これだ!

年末のコンテスト番組で、肉うどんに転生するという漫才に大笑いしたのだ。

肉うどん、肉うどんと連呼されるのを聞いて、無意識に食欲が刺激されていたのか。

10日も経って、昼ごはんのメニューに影響を及ぼすとは、深層心理おそるべし、いや、誉むべきは彼らの漫才の技量かもしれない。

うどんのおかげで、身体も温まった。午後ははりきって働こう。



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てれびじょん | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/01/12 11:30
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