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たいいん話。

…10日ぶりに 元気な妻が帰ってきた…

画面に目をやれば、人気俳優扮する夫が、病院の正面玄関で、妻を迎える場面。



夫の優しさに支えられている妻の安心感を、保険の安心に重ねて見せているつもりらしい。

しかしこのCM、私に限らず、入院の経験がある人なら

なんかヘンだな~

感じるのではないだろうか。

そもそも退院というのは、そう簡単にスッと済むものではない。

まず身づくろい、それから荷造り。

ネマキにスッピンで過ごした日々から、一般社会に戻るためには、手間と時間がかかる。

ベッドに腰かけて、もつれた髪に櫛を入れていると、主治医が退院後の諸注意をしに来るし、薬剤師からは、自宅療養で飲む薬を渡される。

ほとんどの病気は退院後も治療が続くのだ。

そのうち看護師がやってきて、入院費の請求書を渡される。

そう、入院はタダではない。お帰りの前に会計の窓口に並び、安からぬ費用を支払わねばならぬ。

何かとせわしい退院当日、CMの亭主ときたら、立って待ってるだけ。

病み上がりの女房が、ひとりで全部済ませて出てきたのをやっと見つけて

…10日ぶりに 元気な…

元気じゃねーわ!まだ病人だよ!

…妻が帰ってきた…

帰ってきた、じゃねーだろ!ボサーッと待ってないで、精算窓口に並べ!



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てれびじょん | コメント(12) | トラックバック(0) | 2022/05/31 11:30

ちらしの話。

土曜日の配達が無くなってから、週末は郵便受を見なくなった。

月曜に開けると、土日に投げ込まれたらしい広告チラシが、郵便物が見えないほど、どっさり入っていて、ほとほと閉口する。

マンションの総会で、全戸チラシお断りとしよう、という議題は定期的に出るが、チラシが楽しみという人もいるらしく、採択されたことはない。

受け取った瞬間にゴミになるチラシなんて、なんたる紙のムダか。

チラシの会社からは、いかなる商品も買うまい。

チラシを入れる議員には、決して投票すまい。

あらためて決意しつつ、ハガキや封書を選り分けていたら、

うッ…こ…これは…

シンジラレナイものがそこにあった。

ありうべからざるものを見た私は、混乱と同時に、足元が揺らぐような不安に襲われている。

賢明なる読者の皆様にもご覧いただき、ご判断を仰ぎたい。

ちらしぼくめつ

迷惑チラシを撲滅しよう!

チラシ=ゴミの不法投棄は犯罪です!

でかでかと書いて、郵便受に投函された、この紙はチラシ…ではないの?



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ごきんじょ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2022/05/30 11:30

アキコノ本。

今日は與謝野晶子の没後80年である。

ここの記事は、前もって心づもりがあるのと、朝思いついたことを書くのが、だいたい半々。

○○の日をきっかけに書くときは、その日がそれと知った時点で、書いてしまうこともある。

もちろん、あらゆる○○の日に対応できるわけではない。

あ、今日はジェットコースターの日だ…

分かっていても、エピソードが無ければ、書くことも無い(→○○のひ話。)のである。

與謝野晶子の没年は、2年前に知った。つまり、その時点で没後78年だったわけだ。

晶子の出身は大阪だし、歌もいくつか知っているし、彼女を題材にした小説も読み、面白かった。何か書けば書ける気はした。

しかし78年はいかにもキリが悪い。

書くとしたら2年後だな…

その時、私は思ったのである。

そして、2年の歳月は瞬く間に過ぎた。歌人晶子について書くべきことの、ひとつとして思い浮かばぬまま。

80年の節目を、そのままに措くのは惜しい。

さりとて10年後に先送りするのは、なんぼキリがよいからとて、無茶というものであろう。

本でも紹介して、お茶を濁すこととしよう。

與謝野晶子(1878.12.7 - 1942.5.29)、その為人を知るため、1冊挙げるならばこれか。

ちすじのくろかみ
(「千すじの黒髪-わが愛の與謝野晶子」田辺聖子著 文藝春秋刊)

せんすじ、ではなく、ちすじ、と読む。念のため。



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ブックガイド | コメント(2) | トラックバック(0) | 2022/05/29 11:30

ならった話。

ちょっと話があってイモートに電話する。

母も交えて毎朝LINEは交換しているが、ややこしい話はやっぱり直にしたい。

相談はまとまって、ついでに近況報告など。

…ちゃんのお母さんもさ ひとり暮らしなんだけどさ…

ああ、中学の?

そーそー それがヤケドで大変らしいのよ

え~!なんで?

コロッケ揚げてて ナベの手が引っかかったんだって 油が足に…

キャー!コワ~い!うちのおかーさん大丈夫かな

おかーさんはこのごろ揚げ物しないでしょ

そっか~ アタシたちも気をつけなきゃね 

われわれ娘世代も、自慢じゃないけど注意力散漫なほうである。

アラ アタシたち家庭科で習ったじゃない 

え?ミエコの?

ミエコ先生は、高校の家庭科の先生。

同じ高校に通ったわれわれきょうだいは、そろいもそろって彼女にいびられた(→びーたー話。)のだが

えー?そんなこと習ったっけ?

習ったよフライのおナベは両手ナベ

あー!あったあった!

イモートが、先生の口調ソックリに唱えた途端、記憶がよみがえった。

片手ナベじゃ ダメな理由があったんだねエ…

そうだねエ…

ウルセエとか思ってて 悪かったねエ…

でもうるさいのはうるさかったからねエ…

アハハ…

意外なことから昔の話になり、久しぶりの電話は長引きそうである。

かたてとりょうて



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/05/28 11:30

ウチアケ本。

初めて妊娠したときは、出産や育児の本を読み漁った。

書店の育児書コーナーに行くと、マンガのようなそうでないような本がたくさんある。

コミックエッセイというジャンルが、出始めた時代だった。

何冊か読んだが、面白いようで面白くない。

絵がうまければマンガを描くし、文章がうまければ小説やエッセイを書くだろう。

コミックエッセイはその両方だけれど、どっちもあんまりうまくないのが多い。

絵なら絵、文は文の、単体で勝負できなくて両方やってる風の作品を見ると

絵の練習すれば…

われながら、このジャンル全般にキビシいなとは思う。

もちろん例外はあって、そのひとつがこの本。

さざえさんうちあけばなし
(「サザエさんうちあけ話」長谷川町子著 姉妹社刊)

コミックエッセイだのエッセイマンガだのが流行る、はるか前に出版された、著者の自伝である。

なんといっても絵がうまい。

のちに朝ドラの原作になったことから分かるように、内容もめっぽう面白い。

余滴、という言葉がある。

エッセイというものの、ひとつの理想がそれであり、余滴が面白くあるためには、なによりも本業が充実していなければならないのだ。

手に取ってページを繰るたびに、そのことを自戒する、そんな1冊である。

今日は著者長谷川町子の没後30年。



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ブックガイド | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/05/27 11:32

だんすの話。

気持よく晴れた朝、はりきって洗濯。

カゴの洗濯物を次々ハンガーにかける。背中に当たる日光の熱さも、こんな日は頼もしい。

そろそろ竿がいっぱいになるころ

…むーん…

耳元にかすかな羽音を聞いた。

…なんか虫が…

とっさに払いのけかけた手を止めたのは

…ハチ?

虫はそんなに怖くないが、刺されるのはやっぱり嫌だ。

身をかわしつつ、滞空する姿を見れば、どうやらミツバチらしい。

みつばち

マンションの外壁工事を機会に、園芸用品を一掃して、お花のはの字もない我が家のベランダ。

アンタさ ここは何も無いよ

言ってはみたものの、ハチに通じるわけもなく、かえって朝食のジャムのにおいでもかぎつけたか、ミツバチは果敢にアタックしてくる。

口元にたかられてはたまらない。かといって、うかつに手を出して、当たったらかわいそうだ。

飛びかかってくるハチを避けて、首を振ったり、身体を回したり、しばし奮闘。

どうにかこうにか小さな闖入者にお帰りいただき、ホッとして部屋に戻ろうとしたとき、何者かの視線に気づいた。

下の通路から、両手にゴミ袋を下げたオジサンが、こっちを見上げている。

ぎゃっ!いつからそこに?

この距離だと、小さなミツバチは見えない。

私の沈黙のダンスを眺めていたオジサンは、目が合うとハッと我に返り、ゴミステーションのほうに、また歩きだした。



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/05/26 11:30

ぽんちえ話。

役場が間違って振込んだ大金を、若造が返さないとゴネる、というトンマな事件は、どうやら大半が返金されて落着しそうだ。

食えない面の弁護士が、ホワイトボードを前に

ぽんちえ

ポンチ絵で説明します…

言い出したものだから

アイツらまだ言ってる…

昔、会社勤めのころ、聞いた言葉である。

ポンチ絵とは本来、幕末日本で創刊された雑誌「Japan Punch」に掲載されたイラストレーションに由来し、漫画の源流ともいわれる諷刺画だ。

ぱんちのふうしが

釣り糸を垂らす日中両国を、漁夫の利を狙うロシアが眺めている絵などは、教科書でご覧になった方もあるだろう。

しかし、私が見せられたいわゆるポンチ絵は、それとは似ても似つかぬものであった。

まさに今朝のニュースで、弁護士の記者会見に出てきたアレである。

顧客、サービス、コストなどという無味乾燥な用語をマルで囲み、ぐしゃぐしゃと矢印でつないだ図の、どこに諷刺があるのか。

説明内容の無内容とあいまって、いわゆるポンチ絵が出てくるたびに、ウンザリした。

観察するに、アレを使うのは、フロシキで書類の束を運搬している人が多い。

役人とか、士業とか、賢いつもりの種族が、ややこしい内容をバカ(と自分が思っている人)に説明するために、ポンチ絵とやらを描くのである。

図解とか概念図とか言えばいいところを、あえてポンチ絵などと揶揄するあたり、説明してやる、という態度と、相手への軽侮を感じる。

古臭いフロシキ連中がいまだに世の中を動かしていると思うと、まったく暗澹とせざるを得ない。



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てれびじょん | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/05/25 11:30

ともかず話。

米大統領と時を同じくしてハリウッドスターが来日した。

最近の作品は見ていないが、若い頃、「ハスラー2」「カクテル」あたりは見た気がする。

もう40年近く前、男の子と2人、繁華街を歩いていた。

ゴハンを食べて、ブラブラしていたら、映画館の前を通りかかって

見て行こうか?

見上げたのは、話題のハリウッド映画の看板。

それは、手描きの絵看板だった。

映画の看板は、今でこそ全国津々浦々、どこのシネコンでも同じ印刷物であるが、昔は違った。

それぞれの街の看板屋さんが、ベニヤ板にペンキで描いていたのである。

当然のことながら、描く人によってタッチが違い、色が違い、表情も違った。

上手いのも、ヘタクソなやっつけ仕事もあった。

私と彼が見上げた看板も、タイトルこそでかでかと書かれていたものの、絵のほうはスピード重視なのか、芳しくない出来である。

フフフ…あんまり似てないね

…とむくるず…

へ?

ミウラ トムク

たしかにその絵は、パイロットに扮したハリウッド俳優というよりは、日本の青春映画のスターにソックリだった。

ダジャレなんか言う人ではなかったから、不意を突かれた私は、笑いが止まらなくなった。

笑って笑って、次の回に間に合わなくなるほど笑ったのを覚えている。

繁華街の映画館はいつの間にか無くなり、彼とももうずっと会わない。

とっぷがん



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/05/24 11:30

LDCの話。

11時からの○○録画してください

8チャンネルで●●の番組やるから撮っといて


ムスメは時々、こんなLINEをよこす。アパートにテレビが無いからである。

スマホやパソコンでも見られるはずだが、テレビで見たい理由が何かあるのだろう。

週末に帰ったムスメが、テレビの前にひっくり返ると、録画を見始めた。お笑い番組である。

そういえばさー…

画面の芸人を見て、思い出したことがあった。

ロコディって言うじゃない 略して…

いつぞや、肉うどんの連呼で私を魅了した(→うどんの話。)このコンビ。

LCD.jpg 

ロングコートダディというコンビ名で、番組表などでは略称で表記されていることが多い。

ロコディなんてダッサいよね 

そ~お~?

ムスメは特に気にならないようだが

Long Coat Daddyなんだからさ LCDってどうかな

提案してみた。

ええ~ LCDぃ~? 紛らわしくない?

紛らわしい?何と?

LEDとか、LSDとかさ…

LDLコレステロールに…LDCってのもあるね

ナニそれ?

後発…開発…途上国?

…あ~お腹減った~ ゴハンなに?

番組は終わり、話も終わり、翌朝。

出勤していくムスメの後姿を見ていたら

LDHっていうのもあったな…

ふいに思いついたけど、呼び止めるのもナンなので、黙って見送った。 

LDH.jpg
(背広とネクタイは似ているが、人数などは違うようだ)



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てれびじょん | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/05/23 11:30

ヤジュウノ本。

手に取ったのは10年ほど前、学生街の古書店。

やじゅうしすべし

見覚えのある題名は、たしか80年代のカドカワ映画じゃなかったか。

しかし著者が違う。映画の原作はバイオレンスアクションで有名な日本人作家だが、こちらは海外作品である。

どっちにせよ読んだことがないので、買ってみることにした。

980円です…

店頭の木箱にあったから、てっきり百円の均一コーナーと思ったら、違ったようだ。

仏頂面のオヤジには言い出せなくて、そのまま代金を支払い、店を出た。

読んでみると、さいわいバイオレンスアクションではなかったし、わりに好みである。同じ作家の他の本を、なんとなく探すようになった。

これが、はからずも始まったコレクションの、最初の1冊になる。(→アツメル本。

私には、物故作家の著作を集める癖がある。

もちろん気に入った作家の作品を読みたい、というのが出発点なのだが、同じことでも新刊書とはまた違った困難を伴う。

いちばんの問題は絶版

書店では買えないから、古書を探すことになる。

たとえば前述の「野獣死すべし」、刷り数の多いらしい第3版で買えば100円だが、初版の状態のいいものを探すと3千円を超えてしまう。

テキストの違いといえば誤植の訂正くらいだから、読む分には大差ないのに、せっかくなら初版というみにくい虚栄心が顔を出す。

最初に旧版を買ってしまうと、改訂新版が出ていても、同じ体裁で揃えたいという欲も生まれる。

この手の本は、とうてい買えない価格ではなく、思い切れば買えなくもないという線を攻めてくるので、未読の作品を見つけるたび

…5980円… ううーん 5980円かあ…

悩まずともよい悩みを悩んだあげく、けっきょく誘惑に負け、薄汚れてボロい本が本棚に並ぶ。

どれが高い本か わかるようにしといてよ~

ムスメには言われた。

今日は著者ニコラス ブレイク、またの名を桂冠詩人セシル デイ-ルイスの没後50年。



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ブックガイド | コメント(2) | トラックバック(0) | 2022/05/22 11:30
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