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かしぱん話。

さいきんは、台風が接近するとコロッケを食べる台風コロッケという風習があるらしい。

ややこしい時に揚げ物?と思うのはオバサンの感覚で、若者にとってコロッケは、100%買って食べるものなのだ。

手に持って食べられて、冷めてもおいしく、満足感が得られる点で、いい非常食かもしれない。

私が子供のころ、台風は菓子パンだった。

今夜は台風直撃、という予報が出ると、母は菓子パンを買い込んできた。

50年前の、シャレたベーカリーもない田舎町、大手メーカーの袋入りパンは、種類も乏しかったが、それでも嬉しかった。

甘いパンはなかなか買ってもらえなかったから

晩ごはんが菓子パン!

不吉な雲の渦巻く空を見上げ、台風の行方を気にしつつも、ワクワクしてならない。

やがて生ぬるい、湿っぽい風が吹き始めるのを見計らって、ふだんより厳重に戸締りをして、家族全員がテレビの前に集まる。

1時間…2時間…。

どうやら大丈夫そうね!

母がテーブルに手をついて立ち上がり、いつものとおり食事の準備をはじめると

あーあ…

ホッとすると同時にガッカリした。

非常食の菓子パンは、手を付けぬまま蠅帳にしまわれ、明日からのオヤツになるのだ。

台風の去った朝、淡青色の空を見上げたら、甘い菓子パンが食べたくなる。

さんみー



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/09/20 11:30

ヘチマノ本。

病人の看護が苦手である。

子供が小さい時は面倒も見たが、大人の男の看病なんて、想像するだけでもウンザリだ。つくづく離婚しておいてよかった。

そんな私が、なぜかこの本は読んでしまう。

ぎょうがまんろく
(「仰臥漫録」正岡子規著 岩波文庫)

「仰臥漫録」の書名の通り、仰向けのまま寝返りもうてない重病人でありながら、その感受性には曇りなく、筆を執ることを忘れない。

驚くべきは著者の食欲。例えば明治34年の今日、9月19日には

朝飯 粥三碗
午飯 冷飯三碗 鰹さしみ 味噌汁さつまいも 佃煮 奈良漬 梨一つ 葡萄一房
間食 牛乳五勺ココア入り 菓子パン 塩煎餅 飴一つ 渋茶
晩飯 粥三碗 泥鰌鍋 キャベツ ポテトー 奈良漬 梅干し 梨一つ


付き添う妹と母は、これだけの食事を用意し、看病に心を配っても、絶えず不満を言われ、激しく当たり散らされている。

文学史に偉大な足跡を残した子規であるが、じつに難儀な病人である。

私だったらやってられねえと思ってしまう。

考えてみれば、40にならない若造なのだ。

夏目漱石や秋山真之ら、友人が各々の分野で活躍する中、自分ひとり病床から離れられない現状への苛立ち、意に任せぬ身体に対する怒り。

その鬱憤を、彼は母に妹に、いっさいの遠慮なくぶつけている。

それは甘えであり、血縁への安心であるだろう。

怒号に身を縮めるわが母、わが妹の眼の中に、死にゆく己への憐みの色を見て、病んだ胸をさらに苦しめる日もあったろう。

痰一斗糸瓜の水も間にあはず

子規の忌日を、糸瓜忌と呼ぶ。



子規没後120年に際し、2018年9月19日の記事に加筆再掲いたします。



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ブックガイド | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/09/19 11:30

しょうどう話。

仕事の道具を買いにホームセンターへ。

調達を済ませて1階に降りたら、そこは広い広い日用品売場。通路に迷い込んだのは、好奇心のなせる業だろう。

へえ~! こんなのがハヤリか~

え?これナニ?

はぁ~ ナルホド!


口には出さねど、内心の声がうるさい。

洗剤やトイレットペーパーなど日用品は、いつも決まったものを買うので、私は新製品に疎い。

生協の宅配を利用するため、こうして売場に来るのも久しぶりだ。

街に出てきた田舎のネズミのように、何を見ても目新しく、珍しい。キョロキョロ見回すうちに、買いたい!という衝動が激しくなってきた。

ところが、買うものが無い。

うちで使うものは、まだ十分ストックがある。

効果効能のしれない新製品は不安だし、使いこなせずムダにするのも残念だ。

何か買うもの…何かないか…

蛍光色のパッケージが山積する、迷路の中を巡るうち、目はチカチカ、頭はフラフラ。

気づけばよりによってこんなものを掴んで、レジの列に並んでいた。

あひるたいちょう

入浴剤を入れるとお湯の上を走るアヒルである。

不必要の上にも不必要な選択だが、今夜のお風呂に浮かべるのは、楽しみでなくもない。



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/09/18 11:30

れんしゅう話。

痛めた手首は順調に回復している。

ねじる動作はまだ痛いが、ペンで書けるようになったし、重いもの以外は持っても大丈夫だ。

ほとんど今まで通りなのだが、考えるところがあって、痛かった時の生活を続けている。

それはつまり、利き手じゃない手を使う、ということ。

今回のケガであらためて、いかに日々、利き手に頼っているかを痛感した。

字を書く、箸を持つといった、利き手を意識する作業ばかりではない。

ブラシで髪を梳かす、蛇口を開けて水を飲む、靴を履いて玄関を出る、といった日常の動作でも、じつは利き手を優位に使っているのだ。

なにげなく使っていた道具を、いつもと逆の手に持ってみる。

それだけのことが、意外なほど緊張を伴う。

慣れた動作を更新するのは、いちいち時間はかかるが、なんだか新鮮である。

思えば子供のころは、身づくろいも、ちょっとした準備もモタモタ、手間取っていたけれど、日々練習して、訓練して、できるようになった。

大人になると、そういうこともできて当たり前で、練習も訓練もしなくなる。

私もそろそろ還暦、人生の折返し。

なんでも右肩上がりに、できるようになってきた生活から、昨日できたことができなくなる暮らしが、まもなくやってくる。

もういちど、子供のように、練習を始めよう。

そんなことを考えている。

かんじれんしゅう



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/09/17 11:30

はさみの話。

トンとついた拍子に利き手をすこし痛めた。

筆記具が持ちにくいが、こうしてパソコンは打てるし、意外に不自由が無くて、書き文字の出番が減っていると、あらためて感じる。

思いのほか困るのがハサミである。

ハサミ?とお思いの方も多いだろう。

右に持とうが左だろうが、チョキチョキするだけで、変わらずに使えるはず、と私も思っていた。

台所で牛乳パックを開こうと、キッチンバサミをいつもと逆の手に持って…

アレ?

切れない

なんで?

ジャキジャキ動かしても、紙は刃の間にすべり込んで、ぐにゃっと曲がるだけである。

切れ味抜群というわけじゃないけれど、毎日使っているハサミ。急に切れなくなるはずはない。

ということは、切り方の問題か。

他のハサミはどうだろう?ペン立てにある、工作用のハサミで、コピー紙を切ってみた。

やっぱり、切れない

ヒマに飽かせてチョキチョキやってみたところ、どうやら刃の角度がポイントらしい。

あっちを向け、こっちに傾けて、どうにか切れたものの、たとえば線に沿って切ったり、型通りに切り抜くような、精密な作業はとても無理だ。

嘘だと思ったらお手元のハサミでちょっとお試しいただきたい。

単純な道具、日日難なく使っているようで、じつは両手を微妙に調整しているのである。

なるほどなァ!

たいへん有意義な実験に、非常に満足してハサミを置いたが、とっくのとうに先人の言い習わしがあることに、あとで気がついた。

曰く、バカとハサミは使いよう

おすすめのはさみ



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/09/16 11:30

あぶらの話。

夜中に目が覚めるほかにも、トシをとったなあと感じることは増えてきた。

たとえばお料理をしていて、指先にがつくと、若い時はセッケンをつけて、ゴシゴシ洗った。

ところが今は、無意識に手にすり込んでしまう。

洗い物のあと、欠かさずつけるハンドクリームでも足りないほど、カサカサしているのだろう。

ビンボくさいから止めたいのに、止められない。

ババアになるってイヤ~ね~

ヒトリゴトもまた、ババアっぽい。

まだまだアイスコーヒーが飲みたい暑さ。夏の残りのペットボトルをプキッと開け、氷のコップにドボドボ注いだ。

コップ片手に冷蔵庫を覗き込み

今日は何にしようかな~

また、ヒトリゴト。

ネギとジャコがあるから、玉子焼にして、あとはナスで何か…煮びたしでも作ろう。

玉子に入れる白だしは昨日使い切ったので、買置きのペットボトルをブキッと開ける。

煮びたしにはゴマ油。こっちも新しいビンを…

ビチッ…

あ、これはペットボトルじゃなかった

ごまあぶらのふた

こんなフタをペットボトルみたいにねじったもんだから、連結部分が取れてしまった。

あーあ…

そして気がつけば、指についたゴマ油を、また手の甲に塗っている。

アタマに油が差せるもんなら、ねエ。



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もろもろ | コメント(2) | トラックバック(0) | 2022/09/15 11:30

おみずの話。

ふと夜中に起きてしまうことが、時々ある。

連続して眠り通すのも若さ、というから、これも老化かもしれない。

寝床のぬくもりが暑くて、とりあえず身体を起こし、ご不浄に行って

お水でも飲んどこ…

台所に立った。

電気を点けなくても、窓からの街灯で、真っ暗ということはない。

流しの傍に、使ったコップがそのままあった。家族でもいればともかく、この家には今、コップを使う者は私しかいない。

何のためらいもなく水を注ぎ、ぐびっと飲んだ。

ゲハアッ!

異物の感触に、驚いて咳き込む。

何?!何が入ってたの?!まさか

ゲホゲホしつつ蛍光灯のスイッチを押し、コップの中を確かめた。

…なあんだ…

このごろ、水出し紅茶を飲む。茶殻をなんとなくコップにあけた、その上に水を注いだのだ。

なんでそんなことを!

数時間前の自分に、猛烈に腹が立って、このままでは眠れそうにない。

退屈な本を探しに、本棚に向かうと、秋の虫の声が聞こえてきた。

かんすいびん
(こういうのを枕元に置いた方がいいかもしれない)



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/09/14 11:30

さとりの話。

タンスの肥やし 捨てるのはモッタイナイ!

朝のテレビから聞こえた声に

あーらら… せっかく捨てかけた人がまた…

思わず返事した。

ちょっとしたアイデア、だの、すぐに使える技、だの、こういうマジナイにひっかかっているうちは、ぜったい片付かない。

プロのアイデアで おしゃれに着こなして!

そのプロ そこらにいないでしょ

バブル期にイヤというほど無駄な買物をして(→いめるだ話。)、私は一種の悟りに至った。

シロートは、似合わない服をこなす、なんて余計なことを考えない。

いいと思う服を買ってきて、ただ着て歩く。

ヘンだなと思ったら、とっとと脱いで処分する。

けっきょくは、この繰返しなのだ。

しょせんシロート、オシャレとは言われなくても、少なくとも家に帰れば、好きな服が整理されたタンスに入ってる。それでいいじゃないか。

…とまあ、分別くさく書いたところ、めずらしくムスメから

ほしいのある?

着ない服の写真が送られてきた。私好みのハデなシャツがあって

ほしいほしい もらうもらう

考える間もなく返信した。

こうして人生は続く。

きんぎょのしゃつ



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てれびじょん | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/09/13 11:30

まらそん話。

ペロン♪

朝いちばん、スマホに来る通知。

今日は○○の日、というお知らせはムダなようでいて、これをきっかけにブログの記事を書き出すことはけっこう多い。

さてさて、今日は何の日かな?

楽しみに見たけれど

今日は宇宙の日です

ああ~ ダメだ!

まったく、ガッカリである。

宇宙について、私に語るべきことは何もない。

おまけに、宇宙に行きたいと思う気持はトンとわからない、という記事(→うちゅうの話。)も、すでに書いてしまった。

1回分ひねり出そう、という企みがあえなく頓挫したわけだが、アキラメ悪く検索を続けると

他に○○の日は…あった!マラソンの…日…

なんということでしょう。

マラソンに対する私の関心の無さたるや、宇宙に匹敵するといっても過言ではない。

運動音痴の身には、むしろマイナスのイメージである。

マラソンと名のつくものは、お買物マラソンでさえ、その例外ではない。

だいたい、いくら割引と言ったって、買物すればお金が出て行くのであって…おっと!

よけいなワルグチになりそうなので、今日はこのへんで。

もうりさん
(毛利さんが宇宙に行ったのが30年前なんてビックリだ)



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もろもろ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2022/09/12 11:30

ししゅうの話。

朝夕が涼しくなってくると、チマチマ手を動かしたくなる。

何かないか心当たりを探ってみたら、あるある。

ししゅうきっと

在外中に求めた刺繍のキットだ。

カンタンな図案に、土台になる布切れと、必要な色の糸がセットになっており、ちくちく縫えば、名所旧跡にちなんだ絵柄が出来上がる。

英国ではどこにでもあるお土産物である。

裁縫や編物はしても、刺繍はあまり得意ではない私が、なぜこういうものを買い集めたのか。

日本ではあまり見ないものだし、単純化された図案がかわいらしかったんだろう。その後は生活に追われて、優雅に刺繍などする余裕もなかった。

ほったらかして、くすんできたビニール袋をパリパリと開けると、小さな作品だから、糸も、布も、ほんの少しだ。

升目に描かれた図案を広げて、思い出す。

今できなくてもおばあさんになれば いくらでも時間があるだろう

若かった私は、そんなことを考えたのだった。

どんなおばあさんになるつもりだったろう?

あの頃思い描いた未来とは、たぶん異なる境遇になったけれど

おばあさんにはまだ早いよね…

針のめどに目を凝らす。昔ならすぐに通った糸も、今は2度3度とやり直さなければならない。

いや、十分 おばあさんか…

スタンドの灯りの下、針を動かしながら、フフフと笑った。



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/09/11 11:30
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