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ゆうせん話。

ほどほどに混んだ、夕方の電車。

始発駅でうまく席にありついた私は、持ってきた本を読み終え、ボーッとしていた。

次はターミナル駅。

ドッと乗り込んできた乗客で、車内は混雑し、空いていた前の吊革にも、女性がぶら下がった。

うっわー ビミョー

70代後半くらいの、その人を見て、とっさに浮かしかけた腰を、また下ろす。

年齢からすると、サッサと席を譲ってしかるべきところである。

しかし、彼女の念入りな身だしなみ、お金のかかっていそうな服装からは

アタシはまだまだ若い

確固たる自信がうかがわれる。

吊革をガシッとつかむ、鶏の足のような指先に、ほどこされた凝ったネイルも

60代…イエ50代には見えるはず!

強く主張しているではないか。

こういう人に(主観的には)同年配の私が、うっかり席など譲ったら

オバアサン扱いされた!

ゴキゲンを損ねること必至である。

せっかく気を使って、譲り損になるんじゃつまらない。

譲れ…席を譲れ…

隣席の若い男に念を送ってから、電車の揺れで、ヨロヨロと左右にふらつく足元を見ないように、ぎゅっと目をつぶった。

ゆうせんざせき



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ごきんじょ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2022/11/20 11:30

あさぶろ話。

母が朝風呂した(→しょうすけ話。)と聞いて、いいなあ、と思った。

おはらしょうすけさん

私は早起きだし、朝酒もしないから、朝湯くらいはいいだろう。

考えてみれば、シャワーじゃない朝風呂は、家族がいるとやりにくい。浴槽にお湯を張るならと、他に入る人の都合を考えてしまうからだ。

ひとりならば、朝だろうが夜だろうが同じこと。

よーし今日は朝風呂だ!

はりきって起きて、コーヒーを淹れていると

~♪お風呂が沸きました♪~

この声を午前中に聞くことは珍しい。

朝食をかんたんに済ませて、いざ入浴!ところが問題が発生した。

出るものが出ないのだ。

ふだんなら、朝食を摂ってしばらくすると訪れる自然の呼び声が、今日に限って聞こえない。

かまわず入っちまえ、とお思いかもしれないが、そうはいかないのである。

お風呂に入って、サッパリした直後に

うッ!

ご不浄への呼び声が来たら、せっかく身を清めたというのに、台無しではないか。

同じことなら、済ませることを済ませて、お風呂に向かいたい。そう思うのは、生来の貧乏性ゆえだろうか。

ジリジリしながら立ったり座ったりしていても、来るものは来ない。

刻々と、お風呂のお湯が冷めていく。



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もろもろ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/11/19 11:30

しょうすけ話。

朝の家族LINEに、おばーちゃんが出てこない。

安否確認だから、スタンプでいいから送ってね、と言ってあるのに、また忘れたな。

まったくも~…

こういうときはスマホ自体見ていないので、固定電話にかける。

♪とるるる…とるるる…

アレ?出ない…

老母がLINEにも電話にも出ない理由は、いくつかあって

1、庭に出ている
2、バスや電車に乗っている
3、ヘソを曲げている


主なものはこれくらいである。

朝から冷たい雨だし、通院もお出かけも予定がないはずだから、1や2はない。

とくにケンカもしてないので、3でもないはず…考えたくはないが

4、具合が悪い

ドキドキして落ち着かなくなってきた。

これは実家を見に行くほかない、と、身支度をしていたら

♪とるるる…とるるる…

飛びつくように受話器をとると

モシモシ アタシ~ 電話くれた?なんか用?

用もなにも… LINEも電話も出ないし いまから行こうかと…

あら~ ごめんゴメン ちょっとおフロ…

はア?!

朝風呂してた ハハハ…

のんきなもんだ。

朝風呂でも昼風呂でもいいけど、LINEは毎朝見てよね、と念を押して電話を切る。

この同じ人に、50年前には私のほうが

遅くなるときは電話しなさい!

決まりごとはちゃんとやんなさい!


叱られていたと思うと、なんだか複雑である。

おはらしょうすけさん



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/11/18 11:30

ごきげん話。

どうですか最近 何か気になることは?

先生がほがらかに聞いてくださる…


昨日の記事(→まっすぐ話。)にも書いたように、かかりつけのヒカワ先生はいつもゴキゲンだ。

病人を相手に、気の滅入ることもあるだろうに、大した人格者だと思っていたところ

あのセンセイ セッカチだし怖いからやだわ

先日、近所の某さんのこんな話を聞いた。

たしかにセンセイはセッカチだ。早口だし、問診も半ばを過ぎると、椅子から腰を浮かし、今にも立ち上がりそうになっている。

それというのも待ち時間を短くするためだと思っていたのだが、怖いというのがわからない。

あんなにニッコニッコしているセンセイの、どこが怖いのか。

ずっと通っても イマイチ治んないし…

某さんのしかめっ面を見ていたら、ふと思い当たることがあった。

この人 フマジメなのでは…

とくに名を秘す某さんとは、自治会役員の活動で知り合った。

一緒に活動してみると分かるが、表立って非難されることはない程度に、ちょいちょいサボる。

叱られない程度にズルをする、こんな人は学生時代にもいたけれど、オバサンになっても直らないものなんだ、と感心した覚えがある。

センセイに、コレをやりなさい、アレは食べちゃダメ、と生活習慣を正されても

ごめんなさ~い つい…(てへぺろ)

言い訳している姿が目に浮かぶ。結果治るものも治らなければ、先生だっていい気分はしないし、怖い顔のひとつもするはずだ。

まあ、こういうことは相性なので、どちらが悪いとも言えない。

某さんが来ないぶん、ヒカワ医院が空いているなら、マジメな私にはありがたいことである。

にんていしょう



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ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/11/17 11:30

まっすぐ話。

月に1度の通院の日。

予約の15分前に到着し、診察券を窓口に出したら、待合室のいつもの椅子にかける。

前が壁になった、隅っこの席だ。

スマホを出すでもなく、置かれた雑誌を見るでもなく、ボンヤリ前方を見れば

にんていしょう

賞状みたいなものが入った、額が目に入る。

消化器病専門医証

指導医認定証

…貴殿を…規則による…認定し…


毎月毎月眺めて、文面も覚えてしまいそうなこの額、気になるのは中身ではない。

並んでかけてある、大小6つの額のうち、2つがずっと傾いているのである。

他の額との間隔が、平行になってないのだ。

ちょっと手を添えれば直せそうだが、むやみに触るべきではない、とも思う。内心葛藤していると

…さ~ん お入りくださ~い

診察室から声がかかる。

どうですか最近 何か気になることは?

先生がほがらかに聞いてくださるので

じつは そこの額が…

うっかり言いそうになるのを、あやうく呑み込んだ。



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ごきんじょ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2022/11/16 11:30

かきくう話。

洗濯を済ませてから出ようと、朝からバタバタ。

点けっぱなしのテレビの前を行ったり来たりするもんだから

…お取り寄せの…

…おすすめの秋の味覚が…


情報が点線状に飛び込んでくる。

話し方がシロートっぽいと思ったら、アナウンサーではなく、情報誌の編集長らしい。

…本場のカキを…

そういえば、今年はまだ牡蠣を食べていない。そうだ、今日、帰りにカキフライを食べてこよう。

なじみのあの店の、カキフライはおいしい。

あつあつをひとくち サクッと噛んで…ウーン…

空の洗濯カゴを抱え、すっかりその気分でいると

牡蠣のヘタを…

えーっ?!牡蠣にヘタ?

驚いて画面を見れば、画面には見慣れた果物

この編集長、果物のを、貝の牡蠣の発音で言うのである。

牡蠣の甘さがヨウカンに…

ケーキの生地には干し牡蠣を…


なまじカキフライの風味を思い浮かべたせいで、気持わるいといったらない。

牡蠣も、柿も、どっちも食べる気を失くして、テレビを消した。

かきけーき
(→牡蠣ではなく 柿けーき 柿の専門



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てれびじょん | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/11/15 11:30

しごとの話。

失言大臣がクビになってからも、マスコミや野党はかまびすしいが、今に至るまで、私が気になる点には、あんまり言及されていないように思う。

それは「地味な仕事」についてだ。

例の発言を最初に聞いたときの感想は

だろうね それが何か?

デリケートな問題を含むことを除けば、たんなる事実の叙述にすぎないではないか。

しかし、その後の扱われ方を見ていて、やっと気がついたのである。

発言した人も、非難する人も、「地味な仕事」を蔑称ととらえていることに。

それに気づいて、ムラムラと腹が立ってきた。

地味で何が悪い!

私の仕事は地味で、しかも認知度が低い。どんなことをするか、縷々説明してやって

へえ~ そんなお仕事があるんですね!

その時は感心したように見えた人も、次の日には忘れてしまう、そんな仕事である。

だからといって謙遜したり、卑下する気はない。

しないと困る人がいて、需要がある。だから今日も、明日もやる。ほとんどの仕事はそうじゃないのだろうか。

国会議員だの記者だのは、たしかにハデな仕事であると言えよう。

ハデな仕事をやりたくて、国会議事堂の周りに集まってきた人たちにとっては、「地味な仕事」はワルグチになる。

ハデな仕事が立派な仕事、と、すっかり勘違いをしているからだ。

大臣の発言はたしかに失言だとは思うが、それを非難する野党議員も、マスコミも

その点おれらの仕事はハデだよね~

雁首揃えて得々としているのが、ただムカつく。

こっかいぎじどう



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てれびじょん | コメント(12) | トラックバック(0) | 2022/11/14 11:30

うるしの話。

金継教室に行ったことがある。

陶磁器の割れや欠けを直して、また使えるようにするという、貧乏性の私にピッタリの技術だ。

申し込んでしまってから、うちに欠け茶碗がないことに、ハタと気づいた。

こういう時こそ、おばーちゃんの出番。

ねーねー、欠けたお茶碗ある?

あるよ

あるよ

さすがの即答である。

十分すぎるほどの教材を抱えて教室に行くと、ぶっきらぼうなような親切なような、シブい先生が待っていた。

金継の工程をものすごく簡単に言うと

1,割れた箇所をウルシを練ったもので補修する
2,継ぎ目にウルシを何度か塗っては乾かす
3,最後の1層が乾く前に金粉を振りかける
4,乾いたら滑らかに砥ぎ上げて出来上がり


かぶれることは知られているが、ウルシには他にも不思議な性質がある。

特に不可解なのは、湿らないと乾かないということである。

乾かす時には、濡らした木のムロに入れねばならず、乾燥した場所では、いっつまでもブヨブヨ、乾かないままなのだという。

周囲がカラッとしてるとジメジメする、ひねくれた人、どっかにいたな…などと雑念を持ったせいか、うっかりウルシを触ってしまった。

慌てて拭き取り、洗い流した。赤く腫れるか、痒くなるのか、ドキドキしていたが、しばらく待っても何ともない。シブい先生には

かぶれに強い人もいるから 個人差だね

安心させつつ、続けて

3日たって全身が痒くなった人もいたなあ

おどかされた。

念のため、かゆみ止めを買って帰ったが、ひと晩明けても何ともない。いつ痒くなるのか、爆弾を抱えたような気持ちで、しばらく過ごした。



11月13日、漆の日を記念し、2015年10月13日の記事に加筆のうえ再掲載いたします。



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/11/13 11:30

またいだ話。

今日も秋らしい、いい天気だ。

こういう日は夜が冷える。行きがけは薄着でいいが、何か羽織るものを持っていこう。

忘れないように玄関にジャケットを置いてから、身支度を終えたところで

そうだ 買物袋が要る!

もうひとつ、ひらめいた。帰り道で週末の食料品を仕入れなければならないのだ。

ドタドタ戻って、とってきた買物袋をバッグに突っ込み

ヨイショッと…
 
玄関を飛び出した。

そして夕方。

ぶじにスーパーに立ち寄り、予定の買物を済ませて、表に出たら

うッ寒っ!

思った通り、やっぱり冷えてきた。

さあジャケットを…アレ?無い…

どこに忘れてきたんだろう?急いで記憶をたどり

…スーパー…電車…事務所…あ、コンビニでコーヒー買って…

1日をさかのぼってみたが、どの場面にも、あのジャケットの姿はない。

おっかしいな~朝ちゃんと準備したのに…朝?

玄関を出たシーンを、脳内で再生してみる。

…買物袋をバッグに突っ込み

ヨイショッと…


よいしょ?

寒さに震えながら駆け足で家まで戻ったら、朝、私にまたがれたジャケットが、玄関マットの上にそのまま、キチンと置いてあった。

きょうのふくそうしすう



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/11/12 11:30

きえさる話。

季節の変わり目に、よく口内炎を作る。

ぷちっと痛いところがあると、つい気になって、舌で触ってしまう。

触ると治りも遅くなるし、だいいち痛い。

いいことなんか何もないのに、どうしても触ってしまうのはなぜだろう。

きっと人間の深層心理が…などと、眉を寄せて考え込む私のホッペタの内側には、そう、立派な口内炎ができているのだった。

座して徒に哲学的思考にふけっても悪化する一方だ。重い腰を上げ、薬箱をとってきた。

愛用しているのは、このタイプ。

こうないえんぱっち

フィルム状の薬剤を患部に貼り付ける、パッチである。

軟膏は違和感が無く快適なのだが、そのせいで塗った後も触ってしまうという難点がある。

パッチの存在を感じるたび

あ、ここ口内炎だった…

常に注意を促されるうえ、わりに高価なので

1枚○○円

ケチの私は、あだやおろそかにすまい、との念を強くし、そのためか治りも早い。

ゆいいつの問題は、就寝前に貼ると、朝起きたら影も形も無くなっていること。

いったいぜんたいどこに行ってしまうのか、これもまた謎なのである。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/11/11 11:31
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