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せるふの話。

さて、買物メモを握りしめ、百円均一へ。

クリスマス商品で賑やかな店内をブラブラする。なだけで、なぜ楽しくなるんだろう?

へえ~ こんなのあるんだ

わ~ カワイイ!


とはいえ私のサイフのヒモは固い。必要なものだけカゴに入れ、レジの列に並んだ。

ここは少し前にセルフレジに変わった。

1列に並んだ客が、2台のレジで順々に精算していく。慣れない人がモタモタするので、有人レジのときより行列が長い気がする。

次のお客様~ こちらへ~

アラ?

セルフレジができてから、物置になっていたレジカウンターに、店員さんが立っている。混雑してきたので、こっちも開けることにしたらしい。

テキパキとレジを打つ店員さんの登場で、列はみるみる短くなっていく。

セルフレジが使えないわけじゃないけど、高齢者にとってはやはり人がレジを通してくれるほうが安心なのだろう。

アタシもあっちのレジがいいわ…

ああ、次はセルフレジかしら…


列の前後から、そんな心の声が聞こえてくる。

次のお客様~ こちらへ~

ハッと気づけば呼ばれているのは私だった。

いや、私はセルフレジで大丈夫ですけど…

前後のオバアサンに、ちょっと申し訳ない気持になるが、順番なので仕方がない。あっという間に精算が終わって

こちらお付けしておきますね~

お鏡餅に四方紅の敷き紙を添えてくれた。税込108円で、じつに行き届いたことだ。

セルフレジだったら、これはもらえない。有難く受け取って、折れないように手提げにしまった。

あたらしいおきばしょ
(去年こんな風だったので今年はちゃんと飾ろう)



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ごきんじょ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2022/12/21 11:30

りすとの話。

仕事で出かけない日は、ボールペンを手に

今日は何しよっかな

裏紙を目玉クリップで止めた、なさけないメモ帳(→めもめも話。)に向かう。

図書館 振込

行先があるときはそう書くし

そうだ、スポンジがヘタってた…

必要なものを思いついたら

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買物のリストもここに書く。

そうこうするうちに、6時45分にタイマー設定してあるラジオが鳴りだした。目覚まし代わりの英会話番組だ。

日本にホームステイしているトーマスが、ホストマザーのユウコさんと話している。

クリスマスケーキを作ろうと思うんだけど 材料が足りないの

それなら僕がひとっ走り行ってきますよ
 

どうやらユウコさんはお菓子作りが得意らしい。

お菓子にはいろんな材料が必要だから、さあ作りましょうとなったとき、足りないものがあったりするのは、よくわかる。

トーマスが必要なものを尋ねる。

…ベーキングパウダーと砂糖と生クリーム…

おいおいちょっと待てユウコさん。

バニラエッセンスを忘れたというならともかく、この3つはケーキの基本的な材料である。

それが全部無い状態で、よくぞケーキ作りを思いついたな。

…ああそれから 玉子も必要ね!

はア?じゃあ逆に 何ならあるんスか?

私なら聞き返すところだが、ホストファミリーに気を使ってか、トーマスは唯々諾々と買物リストを受け取っている。

キッチンに小麦粉しかない状態で、クリスマスケーキを焼こう、と思えるユウコさんの類まれなる構想力に驚きつつ、メモをカバンに入れた。

らじおえいかいわ202212



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もろもろ | コメント(13) | トラックバック(0) | 2022/12/20 11:30

しょうどう話。

冷たい夜風に身をすくめながら、ようやっと家にたどり着く。

ポストからとった郵便物を小脇にはさんで、我が家に向かう途中、エレベーターの前の部屋のドアに、回覧板がかかっているのを見つけた。

かいらんばん

ここから隣へ隣へ、上の階へと回って、数日後にうちに届くわけだ。

どうせ中身はたいしたことじゃない。

駅前交番からの歳末警戒のお便りとか、そんなもんだろう。(→かいらん話。

エレベーターが下りてくるのを待つ間、ムラムラとある衝動が沸き起こる。

ああ、今やっつけてしまいたい!

出がけの気のせくのに、回覧板が来ているとき、どれほどイライラすることか。

いったん玄関に引き返し、ハンコを押しているうちに、乗りたかったバスは行ってしまい、電車も1本後になる。

今、目の前のドアノブに引っかかっているファイルをひょいと取り、自分の部屋番号の欄にペタリとハンコを押すことができたなら。

カバンの中には、領収書に押すシャチハタが入っている。

3秒もかからない、それだけで年内は、にっくき回覧板を見ないで済むのである。

ガー……チーン…

ハッ!

エレベーターのドアが開く音で、我に返った。

いや、やはりそれは、人として、してはならないことなのだ。

肩にかけたバッグの、シャチハタの入ったあたりを撫でながら、エレベーターに乗り込む。



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ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2022/12/19 11:30

なべやる話。

ムスメとムスコはとくに仲が悪い、というのではないけれど、仲良しでもないように見える。

私自身イモートしかいないので、男女のきょうだいの距離感はどんなものか、見当がつかないし、それ以前に個性の違いも大きいと思う。

ムスメは理系、ムスコは文系、好きな食べ物も興味のある分野も別々、同じ家で同じものを食べて育ったのに、不思議なものだ。

うちに帰るのも必ず別々の日なので、ぶつからないように打ち合わせているのか、と思ったら、そうでもないらしい。

前回ムスコが来たときは

次は12月の17日か…18日かな…

言い残していった。ところが金曜日になって

今度の日曜日 家いる?

ムスメからLINEが来た。居るよと返すと

じゃあ帰ります

正月でもないのに、ふたりが顔を揃えるなんて、惑星直列くらい珍しい。

せっかくだからでもやるかと

鍋やろうと思うけど 夕飯に間に合う?

ムスコにも連絡を入れたら

敗者復活までに帰るから大丈夫~

謎の返事が戻ってきたので、ナンノコッチャ?とテレビを点けたら

これか!

えむわんぐらんぷり2022
(→M-1グランプリ公式サイト

テレビを持たないやつらの目的はこれだった。

ムスメとムスコの数少ない共通点、それはお笑いが好きということなのである。



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/12/18 11:30

かんづめ話。

レトルトも冷凍も、便利な食品がいろいろある時代だが、私は缶詰が好きである。

缶詰食品特有の味わいも好きだし、金属製の缶を開けるという行為自体が好きなのかもしれない。

保存できる期間が長いのもいい。

賞味期限を気にせず買い置けるので、食品庫には缶詰が積み上がっていて

船旅か!

われながら思ったりする。

さて今日も今日とて、ひとりの夕飯。

オカズがちょっと少ないので、玉子でも焼こうかと玉子を溶いたところで

具が欲しいな…

ネギとちりめんじゃこの玉子焼が好きなんだけど、ちょうどジャコを切らしている。

かわりに…そうだ、ツナ缶を入れよう。ケチャップなんかかけて、子供っぽく食べたいな。

つなかんのんおいる

食品庫から1つ取り出し、玉子を溶いたボウルのうえでプルトップを引いたら

じゃっ…

え?

ツナ缶にしては水気の多い音がした。

ああっ、これ…

ほたてかん

ツナ缶じゃない…秘蔵のホタテ缶だ!(ちょっと高い)

菜箸で拾い上げてみても、玉子まみれのホタテはもはやいかんともしがたい。

仕方なくそのまま混ぜて、フライパンで焼いた。

中華風の味付けにしたホタテの玉子焼はおいしかったが、なにか釈然としないのである。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/12/17 11:30

ぺこぺこ話。

特急で到着した先での用件は早々に終わった。

ここは神社の門前町だから、素通りも失礼だ。今年の感謝を申し述べに参ろう。

鳥居をくぐり、手水に指先を清めて、杉の葉の香る参道の空気を胸に吸い込みつつ石段を上る。

心静かに拝殿に向かうと、しぜんに胸の前で両掌が合わさり、目を閉じれば、まぶたに触れる目玉が冷たい。

昔はああしろこうしろ、いろんな願い事を欲張ったが、今はただ無心に手を合わせるだけ。

なにごとも 良きように…

八百万の神にお任せする気持である。

雑念を去り、スッキリして目を開けたと思ったとたん、隣で参拝者がペコペコするのが目に入り、イラッとしてから、いかんいかん、と自戒した。

二拝二拍手とかいう、例のあれ。

にはいにはくしゅいっぱい

ヘンなものが流行る世の中である。

莫大な全財産を賭けてもいいが、あんな拝み方をする人は、昔はいなかった。

両親や周りの大人が、神前で2度も3度も礼するのは、見たことが無い。

アンタの親が知らなかっただけだろう、とおっしゃるかもしれない。

親が知らないということは、そのまた親も知らなかったわけである。亡くなった父も、祖父母も、間違った礼拝でバチが当たっただろうか。

すくなくとも昔の人は、今よりずっと、お宮に親しみを持ってお参りしていた気がする。

形式にこだわることが、神の存在を、逆に遠ざけてはいまいか。

仮想通貨か何かで儲けていそうな、いかにも今風の若い男が、したり顔でペコペコしている横を、スッと通り抜けて駅に向かった。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2022/12/16 11:30

ぴるぴる話。

久しぶりに指定券を買って私鉄特急に乗る。

平日昼間の車内は、乗車率30%がせいぜい、というところか。

見慣れた景色も、特急の車窓からはすこし違って見える。後ろを気にせず座席を倒した。

…ぴるぴるぴる…

いつの間にかウトウトと眠っていたらしい。

目を開けると、列車は街を抜けて、すっかり葉を落とした冬の山の中だった。

…ぴるぴるぴる…

木立の中から、かすかに鳥の声が…って?

時速100キロでひた走る特急の中に、山の鳥の声が聞こえるわけがない。

…ぴるぴるぴる…

妙なる音色の正体は、なんと通路をはさんだ席のオッサンの寝息であった。

せめて美男ならよかったのだが、小太りのフツーのオッサンである。

…ぴるぴるぴる…

それにしてもいい音だ。

いつものことなのか、今だけたまたまか。

あの丸い頭の内部の、どこをどう通ったらあんないい音が出るのだろう。オッサン本人は、われとわが鼻の奏でる音を知っているのだろうか。

…ぴるぴる…

音が途絶えたと思ったら、電車は停車駅のホームに滑り込むところだった。

あたふたと手荷物を取りまとめたオッサンは降りていき、幻の小鳥は永遠に去る。

どりとるせんせいとみどりのかなりあ





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ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/12/15 11:30

さいてー話。

寒い

正確な数値はさておき、体感ではこの冬の最低気温ではないか。

できるなら家でぬくぬくしていたいところだが、そうもいかない。月に1度の医院の予約がある。

暖かい部屋に別れを告げ、玄関を出る。

襟元を抑え、前のめりに歩くこと10分、近さが取り柄のかかりつけ医院に到着した。

スリッパを履いていると、ちょうど先客が、受付で体温測定をされるところだった。

ピピピ…34度2分…外寒いですか?

ハイ…

トレーナーにダウンベストと薄着なところをみると、クルマで来た人らしい。

契約駐車場はちょっと離れているので、ここまでにだいぶ冷えたみたいだ。非接触型の体温計は、寒い日にはどうしても低く出る。

クルマの人の受付が終わって、私の番。診察券と並べて、受付に手首を出すと

ピピピ…31度3分!冷えてますねえ!

あ、私 歩きだから…

寒いですもんね!今日の最低記録です!

ハハハ…サイテーですか私

サイテーです!

ニコニコしながらサイテーと言われたのはたぶんはじめてだ。

つられてハハハと笑っていたら、だんだん身体もポカポカしてきた。

ひせっしょくがたたいおんけい




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ごきんじょ | コメント(2) | トラックバック(0) | 2022/12/14 11:30

せなかの話。

セーターの季節になった。

そういえばセンセイのセーターもこんな色だった

今日着る1枚を抽斗から出して、ふと思い出す。

小学5年生で受け持っていただいたセンセイは、ピリッと厳しくて、怖い先生だった。

大柄な方ではないのに、胸を張った立ち姿にはおのずからなる威厳があり、教壇に上がられると、やんちゃ盛りの子供がシンと静かになる。

あんな風に怖い先生は、今はいらっしゃらないように思う。

教室でストーブがボーボー燃える冬のある日。

いつもスーツのセンセイが、めずらしく厚手のセーターを着ていらした。

黒板に向かう背中が丸くなって、怖いセンセイが、優しいおばあちゃんに見えた。

ストーブのガスが燃える匂いと一緒に、あの不思議な感じは、ずっと覚えている。

卒業してからも、センセイとはながらく年賀状のやりとりが続いたが、3年前からお返事は来ない(→もどった話。)。

母親より年上のセンセイは、子供の私にはすごい年寄りに思えたけど、考えてみれば今の私よりもずっとお若かったのだ。

セーターを羽織りつつ、センセイの背中の、あの丸く優しげなフォルムを懐かしく思い出す。

同時に、いやいや、まだまだ老け込む年じゃないと、自分の背中を伸ばすのである。

しょうがっこうのすとーぶ



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むかしむかし | コメント(2) | トラックバック(0) | 2022/12/13 11:30

センギリ本。

冷蔵庫の中でキャベツが邪魔になってきた。

タマネギやニンジンもあるし、コールスローサラダにして、カサを減らそう。

まずはキャベツの千切りである。

専用のスライサーもあるらしいが、うちでキャベツを千切りにするなんてコールスローのときだけだから、買っても邪魔になる。

葉を1枚ずつはがして芯を取り、丸めて小口から切っていくやり方は、マンガで習った。

子供のころ虚弱体質であった私は、冬場はひんぱんに熱を出し、そのたびにかかりつけのミヤワキ医院に連れていかれていた。

そのとき待合室で読んだのが包丁人味平だ。

ほうちょうにんあじへい (2)

新刊がどんどん入ってくるわけではないし、好きなのを選べるほどの種類もない。前に読んだ本を仕方なく何度も読んだ中に、味平もあった。

店の存続をかけて、ライバルとキャベツの千切りで対決する主人公。

いきなり猛烈な勢いで刻みはじめる敵に対し、味平はまず、キャベツを1枚1枚はがし、くるくる丸め始める。

なにやってんだ味平!

応援する店の仲間といっしょに、読んでいる私も、ヤキモキと気をもんだ。

もちろん主人公が勝つのだが、キャベツを丸めてから切るという方法は、料理のリの字もしたことのない少女の私に、非常に強い印象を残した。

はじめて自分でキャベツの千切りをしたときから、ずっとこの切り方である。

さて、野菜が切れたから、味付けをしよう。

指先に傷が無いかチェックしてから、念入りに手を洗う。

塩と酢をふってから、素手でギュッギュッと揉むので、ササクレなんかあると沁みて大変なのだ。

そういえば…

このレシピはもともとマンガ家東海林さだおのエッセイで読んだものだった。

マンガで切って 味付けもマンガか…

ひとりフフフと笑いながら、ラップしたボウルを冷蔵庫にしまう。

これは今日作って、明日がおいしいんだ。



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ブックガイド | コメント(6) | トラックバック(0) | 2022/12/12 11:30
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