fc2ブログ

つうじぬ話。

外国人観光客も、ずいぶん戻ってきた。

改札を通ろうとしたら、見上げるような背の高い人が、窓口の駅員さんに何か言っている。

困っているならお手伝いしようかと、それとなく耳を澄ましたら

…なんですけど どっちが早いですかね?

私なんかよりよっぽど流暢な日本語だったから、ホッとしてホームへの階段へ向かう。

この20年ほどの間に、日本語ができる人は増えたなあと思う。

私が在外生活を送ったのは、30年ほど前。

SNSやインターネットの普及以前で、日本文化に興味を持つ人はぽつぽつ出始めたものの、日本語を学ぶ人はまだ少なかった。

病院で、カルテに書いたムスメの名前を見て

マンガの○○と同じね!

アニメ好きな若い看護師さんが、話しかけてくれたこともあった。日本に興味があると言いつつ、日本語はわからないらしい。

緑の瞳とバラ色の頬の彼女は、絵本のお姫様のようで、ムスメは注射が怖いのも忘れ、ポーッと見とれていた。

次の通院日。

注射器を手に、われわれ母子を迎えたのは、魔女めいたおばあさんのナースだった。

泣きわめくムスメに、優しく、辛抱強く

怖いのね~ 大丈夫よ~ すぐ終わるからね~

声をかけながら、手早く注射を済ませてくれたが

きれいなおねえさんがいいの~!

ムスメがずっと叫んでいた日本語が、彼女に通じなかったことは、まったく幸いであった。

きれいなおねえさん



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



スポンサーサイト



むかしむかし | コメント(12) | トラックバック(0) | 2023/02/28 11:30

あしつる話。

ううう…いててて…

早朝の薄暗い部屋に、地鳴りのように響く呻き。

起きようとしたら、足がつったのだ。

その時でんばあ、すこしも慌てず。

こんなこともあろうかと、エアーサロンパスを置いてある。ふくらはぎにシュッと吹き付ければ、じきに…

ア!イタタタ…!

なんたることか。あらたな激痛が私を襲った。

枕元に手を伸ばした拍子に、こんどはわきの下がつったのである。

万事休す!

もはや打つ手はない。寝床の中で硬直したまま、徒に時が流れる。

永遠と思えた数分が過ぎ、冷たかった手足に血流が体温を届けて、身体が動き始めた。

そろそろと起き出して、身支度を整える。

今日は燃えるゴミの日、まとめておいた袋を提げて、ゆるゆるとゴミステーションに向かった。

こうして起きて、動けることのありがたさよ。

いつもよりすこし厳かに、ゴミ袋を他のゴミの山にのせた。

こむれけあ



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2023/02/27 11:30

さっぱり話。

今日も今日とて、作る気もない料理番組を鑑賞。

なまくりーむ

画面いっぱいに泡立てた生クリームが映り、あ、美味しそうと思ったら

レモンのしぼり汁を加え サッパリと…

生クリームがアッサリといただけて…


サッパリ、アッサリが好きな人だなあ。

クリームなんて、そもそもコッテリしたものなのに、手を変え品を変えサッパリさせられて、当の生クリームもさぞかし無念であろう。

最初からオレなんか 入れなきゃいいじゃん…

クリームはそう思っているに違いない。

そういえば、グルメリポートなんか見ていても

脂っこいお肉がサッパリと!

濃厚なチョコもアッサリと!


どのお店も、コッテリしたものにわざわざ何かを加え、サッパリ食べる工夫にご熱心だ。

しかし私はケチなので、打ち消す前提の脂やチョコやクリームがもったいない。

トコロテンでも食ってろ!

画面につぶやいてからテレビを消し、さて、駅前の肉屋にメンチカツを買いに行こう。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



てれびじょん | コメント(10) | トラックバック(0) | 2023/02/26 11:30

まぐぱい話。

家にいられる日にかぎって雨が降るもんだから、洗濯物が溜まっている。

予報を見たら今日は晴れるようなので、洗濯機を回した。

ぴー ぴー ぴー…

1回めが終わった音。

まだまだ洗濯物は残っているし、いそいで干して次を回さないといけない。

ネマキに上着をひっかけただけの、世にもひどい格好で、コソコソとベランダに出た。

…カシャカシャカシャカシャ…

誰?!

時ならぬシャッター音に身をすくめる。

こんな格好が写真に撮られたら、私の女優生命はオシマイである。

しかし、女優になる予定は無いことに気づいて、物干しを続行した。

音のあと、茂みが揺れて白黒の鳥が飛んで行ったから、あれはたぶん鳥の声

ここらでは見かけない鳥だ。

英国の家の庭に時々やってきたmagpieと呼ぶ鳥に似ていた。

まぐぱい
European magpie (学名Pica pica pica)

magpieは澄んだいい声だけど、謎の鳥の鳴き声はずいぶんガサガサしている。

どこから来たのかな。なんていう名前かな。

ネマキ同然で出られるほどに寒さも緩んで、春ももうすぐそこだ。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2023/02/25 11:30

ぽんずの話。

月に1度の資源ゴミ回収

アルミ缶やペットボトルはスーパーのリサイクルコーナーにも出せるが、ガラス瓶の回収はこの日だけなので、忘れないように

ビン!!!

カレンダーにも赤く印をつけてある。

早朝なので、ガチャガチャ騒音をたてないよう、1本1本回収用のコンテナに入れていたら

…アッまたあのポン酢!

思わず小さく声に出た。

鍋物を食べることの多い冬場、ポン酢の空ビンはけっして珍しいものではないけれど、ときどき気になるビンがあるのである。

それは、スーパーでは見かけない銘柄。

検索してみたら、なんと小瓶で1000円を超す高級品。うちのポン酢の5倍以上だ。

量が少ないせいか、ひんぱんに出されていて目につくのだが、もうひとつ気になる点がある。

それは、このビンの主が、いつもいつもいっつもキャップを外さず、中身をゆすぎもせず、使ったビンをそのまんま出しているということだ。

ビンの汚れをすすぐのも、プラスチックキャップを外して出すのも、地域の決まりである。

ええぽんず

ポン酢にこだわるこの人は、ゴミ出しのルールはいっさい気にならないらしい。

ポン酢は安物を使っても、ゴミ出しにこだわる私は、秋風の吹きだすころから、冬じゅうイライラさせられてきた。

これから春に向かい、暖かくなれば、鍋物の日も減るのではないか、と期待している。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



ごきんじょ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2023/02/24 11:30

にはつの話。

…っっくしょい!…っぶゎっしょい

朝起きて窓辺に寄れば、春先の熊も逃げ出しそうな、クシャミが2発

このところの私の日課である。

時期として花粉症と思われるが、検査や診断はとくに受けていない。

50代に差し掛かって、それまで無縁だった花粉症の症状が現れた(→かふんの話。)ときには、来るものが来た感じだった。

周囲にたくさんいる、花粉症患者の嘆きは、既に十分すぎるほど耳に入っている。

なにごとにも常に最悪の予想をする私は、クシャミとハナミズで終わるはずがない、どんどん悪化するだろうと覚悟した。

ところが、もう何年も、症状はそのままだ。

始まったときと同じ、朝いちばんのクシャミと、続いてハナミズ。ズズッと鼻をかんだら、それでおしまいなのである。

…っっくしょい!…っぶゎっしょい

1日がはじまる前に、鼻腔にたかったホコリを、クシャミでぶっ飛ばす

今はそんなポジティブなイメージで捉えている。

ふだん小心者の私が豪快な人格を得たようで、悪い気はしない。

おっきなくしゃみはんたい
(ご近所にはいい迷惑であろう)



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2023/02/23 11:30

ネコノヒ本。

ある年のクリスマスにもらった1冊の

それはイギリスの田舎町に住む、動物の言葉を話す獣医さんのお話(→ドリトル本。)だった。

風変わりな設定を淡々と描く筆致と特徴ある挿絵に、私は夢中になった。

惜しみ惜しみ読んでも、あっという間に終わったお話の続きを求めて本屋に行くと、嬉しいことに全部で13巻もある。

それからはお誕生日に1冊、お年玉で1冊と買いそろえ、おいしい水を飲むように読み進んだ。

犬やアヒル、チンパンジーやブタと、個性豊かな動物がたくさん登場するうちに、疑問がひとつ。

ネコが出てこないのである。

ネコの居ない国の話ではない。登場人物のひとりは、飼猫のエサ売りを生業としている。

にもかかわらず、獣医の先生の周りには、親しく名前を呼ばれるネコは1匹もいないのだ。

ネコを目の敵にする犬や、ネコに追われるネズミやカナリヤといった小動物が出入りする、という事情はあるかもしれない。

うちではネコを飼っていたから、作者はネコが嫌いなのかしらと、子供心にちょっぴり寂しかったのを覚えている。

物語も終盤、先生はなんと月旅行に乗り出す。

地球で留守番の動物たちが、待ちに待った帰還を出迎えると、その懐には月の猫がいた。

先住の動物に気味悪がられ、嫌われても気にかけることなく、はじめての地球を、光る眼で眺め、音のしない柔らかな足裏で歩き回る。

長い長いこの物語で、ネコが注目された、唯一のシーンである。

危険を冒してはるばるやってきたにもかかわらず、その後このネコに関してさしたるエピソードはない。そんなところも、なんだかネコらしい。

どりとるせんせいつきからかえる
(「ドリトル先生月から帰る」 ロフティング著 井伏鱒二訳)



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



ブックガイド | コメント(7) | トラックバック(0) | 2023/02/22 11:30

やまとの話。

手伝ってほしいことがあるんだけど

ある日学校が引けた後、カナエちゃんが言うので、ついて行った。

はじまっちゃう!ちょっと急いで!

小走りに稲刈りの済んだ田んぼを抜けて、着いたのはカナエちゃんのお家。

前に来た時は、ナカジマミユキのモノマネをやらされた( →みゆきの話。)。

今度は何をさせられるのだろうと警戒していると、テレビのあるリビングルームに通され

ハイこれ

いきなり手渡されたのはカメラだった。

彼女自身ももう1台カメラを手に、あわただしくテレビを点け、チャンネルを回す。

暗い夜空らしき映像。伴奏無しの静かな画面から、ゆっくりと男性の歌声が流れ出す。

…♪ さらば~ ちきゅうよ~ ♪

なに?何がはじまったの?

ヤマト!いいから撮って!コダイくんが映ったら、撮って!

…♪ちゅ~うせんかんや~ ま~ と~

え?え?

当惑する私をよそに、ブラウン管にカメラを向け、バシャバシャとシャッターを切りはじめる。

夕方の再放送の時間。流れていたのは、宇宙もののアニメだった。

お揃いのジャンプスーツを着た登場人物が、みんなでどこか遠くに行くようだ。

中の1人、コダイくんらしき若者がアップになると、カナエちゃんはキャーキャー騒ぐ。

促されて、初めて触るカメラを壊さないよう、おそるおそる何度も、シャッターを切った。

長かった30分。

24枚撮りのフィルムが終わったカメラを渡すと

アリガト

カナエちゃんはニコニコして受け取った。

彼女はこのマンガの主人公が好きで、ブロマイドが欲しかったのだが手に入らない。

テレビを写真に撮ってみても、上手くシャッターチャンスをとらえることは難しかった。

そこで、1人よりは2人、と、私が呼ばれたわけである。

私の写真に満足したのか、それとも壊滅的な出来に匙を投げたのか、以後カナエちゃんに呼ばれることはなかった。

ホームビデオ普及以前、昔むかしの話である。

うちゅうせんかん
(浮かんでいる女が誰なのかいまだに分からない)



作者松本零士氏の訃報に接し、2018年11月26日の記事を再掲載いたします。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



てれびじょん | コメント(6) | トラックバック(0) | 2023/02/21 11:30

むごんの話。

新型ウィルス流行による外出自粛をきっかけに、美容院通いをやめ、千円カットで済ますようになった(→かっとの話。)。

女性には未経験の方も多いかと思うので、工程を紹介しておこう。

まず、クリップボードにはさんだ受付表に名前を記し、券売機でチケットを購入して待つ。

順番が来たら名前を呼ばれ、指定された席について、カットがはじまる。

マスクはかけたままである。

15分かそこらでカットは完了、シャンプー代わりの掃除機で切り屑を吸われたらもう終わりだ。

私のレベルでは仕上がりもぜんぜん問題ないし、なにしろ安くてとにかく速い。

オシャベリせずに済むのも気に入っている。

千円カットの美容師さんは、人数をこなすため、最低限しか話しかけてこない。

世間話がサービスとお考えの美容師さんも多いようだが、当たらず触らずの応答をするには、客も気を使うのである。

先日某店に立ち寄り、受付表を書こうとしたら、名前、希望メニューに続き

無言希望 / まあそこそこ

どちらかにマルを付けるようになっていた。

上の欄を見たら、他のどなたも無印だったので、必須ではないらしい。

やがて名前が呼ばれ、いつものようにあっちゅう間にカットが終わって

あーサッパリした ありがとう!

お礼を言いながら、無言を希望した場合、これもナシなのだろうか、と、ちょっと考えた。

うけつけひょう



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



ごきんじょ | コメント(10) | トラックバック(0) | 2023/02/20 11:30

ゆうとう話。

諸式高騰の折柄、電気代と並んで多く話題に上るのは玉子である。

たまご

毎週生協で買う玉子も、10個パックで5~60円は値上がりしている。

私などビンボー人にとってイタい打撃であることはたしかだが、そもそも安すぎたよな~、という気もする。

つい忘れそうになるけれど、玉子は工場で機械をガチャガチャ動かして作るものではない。

生きた鶏がウーンと頑張っても、1日1個しか生めないのだ。

そう考えると、安売で1個10円なんて、今までがおかしかった、とも言えるんじゃないか。

今後はもっと、玉子そのものの価値を勘案して、値段をつけてもいいと思う。

たとえば、かけウドンが300円の店で月見が350円でも、誰もおかしいとは思わない。

玉子1個にはそれだけの力があるのである。

ニュースなどでよく聞く物価の優等生という言い方にも疑問だ。

私は子供のころ学校の成績が良かったので、

ぢょん子ちゃんは優等生で いいわねエ~

よそのオバサンによく言われた。あれは決して、ホメコトバではなかった。

ガリベンのモヤシっ子…

勉強だけできたってねエ…


いくらカンの悪い私でも、薄笑いの陰にそれくらいの含みは読み取れた。

私は優等生と呼ばれたくて努力したわけじゃない。玉子だって同じだと思う。

勝手に優等生呼ばわりしておいて、ちょっと成績が振るわないと

どうした 優等生のくせに!

やいのやいのと大騒ぎされ

ぐれてやる~!

玉子の気持が、わかる気がする。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



むかしむかし | コメント(10) | トラックバック(0) | 2023/02/19 11:30
 | HOME | Next »