fc2ブログ

たいおん話。

猖獗をきわめた新型ウィルスも、ようやく落着きを見せ、街に人が戻りはじめた。

マスクをかけない人も増えたし、建物の入口に立つ消毒液も、もう見向きもされない。

しかし、やりだすとしつこい性格の私は、あいかわらずシュッとやる(→しょうどく話。)し、

さーもかめら

サーモカメラには、律儀にオデコを差し出す。

それにしても、こういうカメラ、じっさい引っかかるのは見たことが無い。熱があったらどうなるんだろう、とかねがね疑問に思っている。

青く青く空が晴れた日。

さしたる用もなけれども、フラフラ浮かれ出る。

マスクをせずに家を出たけれど、人が増えてきたので、ポケットにあったマスクをかけた。

日差しが強くて、汗ばむほどだ。

日傘 さして来ればよかったかな

いささか後悔しながら上着を脱いで小脇に抱え、歩き続ける。

あっちい~

ショッピングセンターに着いたときは、暑がりの私の額には汗がにじんでいた。

ドアの前で消毒液に手を差し出し、カメラに顔を…

ビービー ビービー…

かつて聞いたことのない警報音が鳴り響くなか

あわわわ…

慌てふためいているオバサンを見たかた、それは私です。(しばらくして汗が引いたら平熱でした)



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2023/03/21 11:30

ひんじの話。

♪ふんふんふ~ん♪

本を取り出そうと、鼻歌交じりに書棚を開く。

♪ふんふん…あれ?こっちか…

下段の扉を開けたとき

ガタン!

ええっ!

何が起きたか、しばらく分からなかった。

落ちた…

なんと、正面のガラス扉が、外れたのである。

よく見ると、2つある蝶番の2つとも壊れているではないか。買って40年近い書棚だから、金具も寿命が来たとみえる。

困ったなァ…

古いは古いが、けっこう高かった。買い直す余裕はないし、中にはギッチリ本が詰まっている。

直せないものか、壊れた蝶番をしげしげ眺めたら

ちょうばんかなぐ1

慣れ親しんだ書棚にこんな特殊な形状の金具がついていたとは、今の今まで知らなかった。

こんな蝶番 どこに売ってんだ…

しかも、丸い側は単にネジ止めでなく、木部を浅く削ってピッタリ嵌めこまれている。

テキトーな部品では嵌まらないということだ。

こりゃ シロートには無理だワ…

直せる当てもないガラス扉を、邪魔にならない隅っこに立てかけ、シオシオとリビングに戻る。

ホコリが入るけど、扉ナシで使うしかないか。

低い位置だから ガラスも割れなかったし ケガが無くてよかったと思わなきゃ…

なんとか気分を引き立てようとしたが、心は晴れない。

鬱々とパソコンに向かうも、頭の中は書棚のことばかり、ムダと知りつつ検索してしまい…

ちょうばんかなぐ2

あった…

いや~Amazonすげえ、Amazonすごいわ。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2023/03/20 11:30

のらいぬ話。

ちょうど今頃の季節だったろう、良く晴れた日曜の朝。

タバコを切らして買いに出た父が、帰ってきたと思うと

オイ…オイ…

お勝手にいる母を呼んだ。前掛けで手を拭き拭き、茶の間に顔を出した母に

しばらく 子供らを出すな

父はムッとした顔で告げた。

え?なんでですの?

いぶかしげな母に、父曰く

表の道で 野良犬がつるんどる…

まァいやだ!

母が顔をしかめてチラッと私のほうを見たので、マンガに熱中して聞こえない風を装う。

父は父で、子供にはわかるまいと思ったようだが、残念!私はちょっとマセていた。

犬もネコも、自由にうろついていた時代のこと。

今、若いきれいなお嬢さんが

○ちゃんとは 高校のころからつるんでて~

などとおっしゃるのを耳にすると、意味が違うと知りつつ、ギョッとしてしまう私である。

のらいぬ



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2023/03/19 11:30

どさどさ話。

はー ヤレヤレ…

疲れて帰った夕方、1日提げてまわったバッグをリビングの真ん中にポスッと落とす。

ジーッとファスナーを開け、逆さにして

どさどさどさ…

中身を全部出した。

サイフ、ケイタイ、家のカギなど、明日も必要なものを戻し、使ったハンドタオルは洗濯カゴへ。

カーペットの上に残った丸めたレシート、アメの包み紙、歪んだゼムクリップなど、細かいゴミを拾い集めて、くずかごに捨てる。

流行りの言葉で言えば、帰宅時のルーティンというやつだ。

急ぎ処理すべき用件や、忘れかけていた雑務を、ここで思い出すことも多い。

この作業、みんなやってると思っていたのだが

えー毎日?やらないよ~

バッグを替える時くらいかな~


周囲に聞くと、あんがいそうでもないらしい。

持ち帰ったバッグの中を、翌朝出勤するまで一瞥もせず、グーグー寝ている大胆な人もいた。

忘れ物、失くしものがないかと、いつもビクビクしている私には、とても無理である。

いつからの習慣だろうと記憶を遡ってみた。

会社員の時…やってた…大学… 高校…やってた…中学…あ!

思い出したのは

らんどせる

ランドセルのかぶせを上げて、茶の間で中身を出していた、幼い日の記憶。

底のほうで教科書に押しひしがれた、学校からの刷りものや宿題のプリントを、かろうじて忘れずにいられたのも、この習慣のおかげだ。

50年以上こうしていると考えると、われながらビックリだが

どさどさどさ…

きっと明日も明後日も、やっていることと思う。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2023/03/18 11:30

がらがら話。

粗大ゴミの回収日。

出すつもりの不用品を前に、私は迷っている。

いくつかのガラクタのうち、いちばんの大物が

台車

台車なのである。

離婚して、子供ともどもこの家に来て以来、重いもの、かさばるものを運んでくれた。

40代女性の必需品は台車

女優イシダユリコ嬢がいみじくものたまった(→だいしゃ話。)通り、今日まで女手ひとつの生活の、大きな助けになってきた。

ゴキゲン次第でやったりやらなかったりするグウタラ亭主より、よほど頼もしい相棒であった。

あんなこと、こんな時、いいこと、つらいとき…さまざまな思い出が、走馬灯のように駆け巡る。

しかし、いかんせん20年近い年月は長すぎた。

車輪の傷みが激しく、ややふらつくうえ

ガラガラガラ…

荷物を載せて動かすと、押す自分もビックリするような、大きな音が出るのだ。

これじゃ危ないし、ご近所にも迷惑だ。

そうそうに処分を決めたものの、ゴミ出し当日に迷うのは、上記のようなセンチメンタルな理由、ではない

オンボロ台車の前で、私が悩んでいたのは

ゴミに出す台車は それ自体台車として使うべきか?

ある意味トートロジー的な悩みであった。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



もろもろ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2023/03/17 11:30

まにあう話。

久しぶりにゆっくり寝坊した朝。

今日はさしたる予定は無し、のんびりコーヒーを淹れる。

マグカップを片手にカーテンを開ければ、空はうららかに晴れて、ネマキの上に1枚羽織っただけでいられる暖かさが、嬉しい。

ひとり暮らしの気楽さ、テレビを点けるでなく、スマホを見るでなく、ボンヤリしているとき

… … …

遠くで何か音がしたような気がした。



耳を澄ましたが、すぐに聞こえなくなったので

気のせいか…

気を取り直して、ボンヤリを続行していると

… … … …です…



思わずガバと居直った。

気のせいじゃない!

慌てて冷蔵庫まで走って行き、管理組合からの刷りものを確認したら、サーと冷や汗が出た。

消防設備点検のお知らせ

ホウチキ

火災報知器の点検、つまり全部屋に作業員さんが入る日(→うえみた話。)を、忘れていたのだ。

…火事です 火事です 火災が発生しました…

上階から聞こえる音は、もはや明確にそれと知れる大きさになってきた。

どうする私!

とにかく着替えだ。

すごい勢いでネマキを脱ぎ、昨夜脱ぎ捨てた服をひっつかんで着る。

…火事です 火事です 火災が発生しました…

床に落ちているものを高速で拾い、押入に突っ込む間にも、点検の手は迫り

…火事です 火事です 火災が発生しました…

この音は…もう隣の?

…火事です 火事です 火災が発生しました…

ああっ!



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング




ごきんじょ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2023/03/16 11:30

トリテキ本。

いつも拝見しているレツゴー一匹さんのブログの記事(→わたし日々、おもうこと。)で、鬢付け油の香りに春の訪れを感じる、とあった。

相撲といえば春、というのは、大阪ならではの、めでたい感覚である。

私の通った高校の近くにも、相撲部屋の合宿所があって、春先にはよく力士の姿を見かけた。

おそらく練習…いや、稽古の行き帰りであったのだろう、汗っぽい乱れ髪の彼らは、鬢付けの香る力士、というより、普通の若者らしく見える。

むっくり太って、浴衣を裾短に着た様子は、ちょっとかわいらしい。

中学を出てすぐ入門して、自分と同年配の男の子が、厳しい勝負を戦っているのだ、と想像して、勝手に親近感を持ったりした。

友人に遅れて、ひとり帰途に就いたある日。

先を行く仲間に追いつこうと、小走りで角を曲がったら

わっ!

思わず声が出た。

若い力士に、いきなり出くわしたのだ。

遠目に見たのと違い、目前に迫る鍛えた肉体は、巨大で、圧倒的で、おそろしかった。

むっくりしてかわいいなんてとんでもない、彼らは最強の戦士なのである。

後年、夜道を力士に追われるという不条理な小説を読んだときは、その怖さがひしひしと迫って

あのとき まだコレを読んでなくてヨカッタ!

もし小説のイメージが先にあったら、私は出合い頭、気絶していたかもしれない。

めたもるふぉせすぐんとう
(「走る取的」新潮文庫「メタモルフォセス群島」所収)

 

にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



ブックガイド | コメント(12) | トラックバック(0) | 2023/03/15 11:30

いめるだ話。

かつて私は日本のイメルダと呼ばれていた。むろん権力者の妻だったわけではない。

履かない靴を山と持っていただけである。

いめるだ

マラカニアン宮殿の靴置場よりはるかに狭い部屋に、箱に入った新品の靴が何足も何足も。

バブル期、関西OLの靴は、原色の革にラインストーン、スパンコール。イナズマパンプスの異名を取るほど、それはそれはハデだった。

ハデな靴を手に取れば、宝箱を開けるみたいにヨロコビが湧いて、それだけで元気が出る。

洋服は試着しないといけないが、靴はサイズさえ見れば買えるというのもいい。

パッと買うと、スッと爽快な気持になった。

その日、仕事に疲れた私は、大阪OL御用達のブティックオーサキという靴屋さんに、またしてもフラフラと入り込んでいた。

すると店の奥、ひときわ派手なパンプスの並ぶ一角に、非日常的な髪型で、たった今パーティーを抜けてきたようなドレスの人が、靴を見ている。

イメルダ マルコス!?

誰あろう、ミワアキヒロその人であった。

髪を黄色くする前だった。普通の人じゃない感じはしたが、特別なオーラはなかったと思う。

ただ顔がものすごくでっかい!と思ったのを覚えている。

ほどなくバブルが崩壊し、仕事もヒマになって、むやみに靴を買うのもやめた。

あの頃の靴は、どれもこれもみんな、年月の狭間に消えてしまった。



本日早朝より他出のため、2014年3月14日の記事に加筆のうえ再掲載いたします。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



むかしむかし | コメント(4) | トラックバック(0) | 2023/03/14 11:30

でんぽう話。

私鉄の急行で隣県へ。

ポカポカと暖かな日差しに、眠くなりだしたころに、その駅を通過した。

でんぽうえき

デンポウ、というちょっと変わった名前の駅を降りたことは無いし、友人知人にも、ここにご縁のある人はいないけれど

デンポウの星…か…

小さくつぶやいてみた。

今から50年ほど昔、まだ海外旅行が珍しかった時代。

ハイカラ爺さんの祖父は、出始めのJALパックで、嬉々としてあちこちへ出かけた。身の回りの面倒を見るため、祖母もシブシブついていく。

そのころは、ただの観光旅行でも、海外に行くというと餞別を贈ったり、見送りに行ったりした。

わが一族もその例にもれず、子から孫から、雁首揃えてわざわざ空港までお見送りに行った、あれはパリのときか、ハワイのときか。

満面の笑顔の祖父と渋面の祖母が、添乗員に連れられて出発口に消えたあと、デッキに上がると、そこには我々同様、見送りの人が集まっていた。

広々した飛行場の景色はすばらしかったが、それよりも気になったのは、手製の横断幕を広げた騒がしい一団だった。

あんなもの 飛行機の窓から見えるんだろうか?

子供の目にも疑わしく思えた、手書きの文字を

伝法の星 何野何某君
 ガンバッテ来いよ!


字配りまでもありありと思い出せるし

デンポウって何?

しばし考え込んだのも覚えている。

地名であると知ったのは、かなり後のこと。

何野何某君が、彼らの期待通り故郷に錦を飾ったかどうかは、今もわからない。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2023/03/13 11:30

ぺっぱー話。

食材にこだわりはないのに、なぜだかコショウはずっと粒コショウを使っている。

始まりはたしかカタログギフト

欲しいものがぜんぜんなくて、これでいいか、と卓上用塩コショウ入れをもらったら、ゴリゴリと挽くタイプだったのだ。

容器に合わせて中身を買うのもおかしな話だが、仕方なく粒コショウを買ってきて入れた。

何年かそれを使って壊れたとき、たまたま中身の粒コショウを買ったばかりで、ひと袋がまるまる残っていた。

粉のコショウ入れにしたら、これが使えなくなる。ケチの私は、やむなくゴリゴリのコショウ挽きをまた買った。

そんな買替えを繰り返すこと幾度か。

挽きたてのコショウはやっぱりいい香りだし、ゴリゴリにも慣れて、たまによそでパッパと入れるコショウを使うと、かけすぎてしまう。

さいきん、ゴリゴリのネジがバカになってきたので、新調しよう、と前に買ったお店に行ったら、欲しいサイズが無い。

以前はずらっと並んでいた、ひとつ大きいのも、小さいサイズも、なぜか残り少ない。

そんなに数が売れるものではない。不審に思って店員さんに聞いたら

ああ、WBCで…

はァ?!

ぺっぱーみる

ホントにィ?



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング



てれびじょん | コメント(8) | トラックバック(0) | 2023/03/12 11:30
« Prev | HOME | Next »