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うなぎの話。

昨日の土用丑には、ウナギを召し上がったお宅も多いだろう。

ウナギといえば、母方の祖父を思い出す。

現役時代はヤリテの商売人だったらしいが、私の知る彼は単なる困ったじーさんであった。

買物好きで、道楽が好き。お酒は飲めないのに、キレーなお姐さんのいる夜の街をウロウロする。

中でも好きなのが外食

若いころには、いきなり思いつきで

今からカニを食べに行くぞ!

なんてこともあったらしい。道頓堀に「かに道楽」がある時代じゃない。日本海側の温泉地まで車でぶっとばして、その日は泊りなのである。

期末試験直前だった私の母(じーさんの娘)は、後部座席で泣いたそうだ。

そんな具合だから、ヨレヨレになっても、何かっちゅうと外でご飯を食べたがる。

もうダメだとなって入院してからは、さすがにワガママは言えまいと思っていたが、病院に行ったら、看護師さんに

おじーちゃんね、どっからか千円札を出してね

アンタな、これでウナギ買うてきておくれ

って言うんですよ!こんな患者さん、初めて!

言われて母ともども、顔から火が出そうだった。

同時に、ほぼ流動食の状態でなお、ウナギが食べたい!というじーさんの気力には、身内ながらアッパレと尊敬の念もわいた。

戦中戦後を生きた人間の、生への執着

私なら死病の床で「ウナギ!」なんて思えるかなあ。ムリだろうなあ。

うなじゅう



本日夏バテ気味のため、 2014年7月31日の記事に加筆のうえ再掲いたします。



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2023/07/31 11:30

みずづけ話。

昨夜おそく、久しぶりにムスメが帰宅した。

夕飯は済ませてきたようなので、顔を見て戸締りしたら、私は先に寝る。

今日は日曜だから、どうせゆっくりだろうと、ゆうべのお皿を洗ったりしていると

おあよ~…

ネマキのまま、スマホを握って起きてきた。

アラ 早いね

ウン 今日ダレソレさんとドコソコ…

約束があるらしい。

テレテレと台所に行き、アイスコーヒーを注いで戻ると、グラス片手にスマホを見始めた。

ザルを持って、その前を右往左往していたら

それ梅干

そう 土用干し2日目…

梅干といえばさ~

ん?

キューリの水漬け、知ってる?

きゅうりのみずづけ

ムスメ曰く、切ったキューリを、ニンニク1片、梅干1個とともに、薄い塩水に漬ける。それだけのことなんだけど

おいしいんだよ~

ネットでレシピを見て作っているらしい。

ムスコはけっこうマメに料理をするが、ムスメは仕事が忙しく、ほとんど外食と聞いていた。

会社の近くに引越して、時間に余裕ができたのだろうか。いずれにせよ、けっこうなことである。

梅干のザルをベランダに干し終え、部屋に戻って

そうだアンタ 梅干まだあるの?

自家製の梅干のビンを、前に持たせてから、もうずいぶん経つのを思い出し、ムスメの部屋のほうに声をかけたが

いってきま~す

見覚えの無いシャツの背中が、ちょうど玄関を出て行くところだった。

帰ったのは夜中近かったから、ほんの数時間の滞在だ。

愛想がないわねエ おねーちゃん寂しくない?

イモートには言われるけれど、いい若い者が実家に入り浸っているほうがよっぽど心配である。

ムスメも元気で留守がいい、のだ。

さあ、私も、これからキューリを買いに行って、水漬けとやらを作ってみるか。



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2023/07/30 11:30

てつどう話。

土曜の朝がチコちゃんなら、昼は鉄道ひとり旅である。

しん・てつどうひとりたび
(→新・鉄道ひとり旅

芸人だけど、芸をやっているのを見たことがない地味な青年が、ひとり電車に乗るだけの番組。

たぶん再放送で、しかも不定期で、待ち構えていても見られないので、何気なくテレビを点けて、たまたまやっていると喜んで見ている。

旅番組だから、観光特急に乗って、グルメや絶景を紹介すると思いきや、さにあらず。

ローカル線の普通列車に乗り、車窓をボンヤリと眺めていたと思うと

ここで降りましょう…か…

何の変哲もない駅で、思いついたように降りてしまう。多少の下調べはあるようだが、だいたいはさしたる見どころもなく、しばし散策するだけ。

鉄道ファンらしく電車にカメラを向けて、タイミング悪く狙った列車が撮れなくても

あっ… ああ~残念…

撮れるまで粘りもせず、スゴスゴ立ち去るし

ちょっと腹が減りましたね…

せっかく遠くに行ったのに、食事を摂るにも名物を探すでなく、たまたま通りかかったテキトーな店で、テキトーに済ませてしまう。

海辺の街で海鮮に目もくれずウドンを食べたり、京都でタコ焼を食べたり、している。

思うにこの人、欲がないのだ。

電車に乗れたらそれでよくって、行先で絶景を見ようとか、珍しいものを食べたいとか、あんまり思わない。

私は鉄道ファンではないけれど、旅先でガツガツしない、こんな淡々とした姿勢に共感を覚える。

くわえて彼は、たいへん静かである。

ひとり旅とはいえテレビなのだから、ぞろぞろスタッフを連れていると思いきや、どうやら撮影者とふたりだけらしい。

一般客に混じって、遠慮がちに

ハイ、今日はナントカ線の旅ということで… 

芸人にあるまじき、張らない声が、ガタンゴトンの音に半ばかき消されて、旅は続く。



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てれびじょん | コメント(10) | トラックバック(0) | 2023/07/29 11:30

ごくらく話。

所用で訪れる、ここは私鉄の小さな

各駅停車のみ、昇降客も少ない。私ひとり、ムッとする温気の中、ICカードをピッとして無人の改札を通り

もうちょっと…

朝からの暑さでヘトヘトの自分を励まし、ホームへの階段を上る。

あとちょっと…

そう、ホームにさえたどり着けば、そこに極楽が待っているのである。

めったに利用者も見ないのに、この駅には小さな待合室があり

なぜ?誰のために?

不審に思うほど空調が効いていた。

まちあいしつはてんごく

私はここをthe most 冷房効いてる待合室 in the worldに勝手に認定し、得難き涼しさを心の支えとしてきた。

しかし聖域にも、新型ウィルスの魔の手が迫る。

感染防止の換気のため、窓は常時全開に、空調は切られてしまったのだ。

これから 何を支えに生きて行けばいいの…

以来、ヨロヨロと3年。

明けない夜は無い、の例え通り、ついにその時はやってきた。

期待しないでホームに上り、ふと見た待合室の窓が、窓が閉まってる!

吸い込まれるように引戸を開け、中へ。

あ~ 極楽 ゴクラク…

しばし、まさに陶然とした。

数分だか、十数分かが経過し、待っていた各停は行ってしまったが、後悔はない。

地獄があれば(→ちょうはん話。)極楽もある、というお話。



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2023/07/28 11:30

ちょうはん話。

ビルのエントランスホールで、私は年甲斐もなく小さな声で歌っていた。

♪…なにが出るかな なにが出るかな…♪

いつになく真剣に、睨んでいるのはエレベーターの階数表示である。

みぎがわがくる

…だぁッ!

2台あるエレベーターのうち、右側が降りてくるらしい。

いささかガックリきたのは、右がいつもオーブンの中みたいに暑いからだ。

ちょっと古いビルでよく手入れはされているが、夏になるとどういうわけか、右のエレベーターだけ、冷房が点かない

右側は、節電のためか、人の出入りが減る時期には停めてあることもあって、そういうことも関係しているのかな、と考えたりする。

右側だけ暑いのには、なかなか気がつかず

ときどき暑いな このビル…

けっこう長い間、漠然と不快をおぼえていた。

暑いのは右だけ、と気づいてからは、丁半博打のような気持でのスイッチを押している。

♪…なにが出るかな なにが出るかな…♪うッ!

ハズレのドアが開けば、あんのじょう、ムワッとすごい熱気が襲う。

私はこれをプチ地獄と呼んでいる。



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ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2023/07/27 11:30

まりーん話。

私は海辺の町にいる。

用件は済んで、あとは帰るだけだが、予定の電車まで、まだ時間がある。

それにしても人がいない

各地から特急列車でやってきた観光客は、バスターミナルに停まったホテルの送迎バスに、あっという間に吸い込まれ、いなくなってしまった。

観光案内所と排気ガスだけが残る、ガランとした駅前を、ブラブラ歩きだす。

目的は無いけど、あてのないのは心細い。

案内板の地図を見たら、マリンパークという場所があったので、目的地に決めた。

ベンチに座って海を眺め、時間をつぶそう。

地図に従って海沿いの歩道を歩き、シャッターの降りた貝焼きの店を曲がると

まりんぱーく1

ブロック敷でマリン感ゼロの、寂れた公園。かんじんの海は、線路を挟んではるか遠い。

あーあ…

タメイキをつきつつも、不思議に失望はしない。

まァこんなもんだよな~

海の見えないベンチに腰かけると、敷き詰めたブロックの一部、色が違うのに気づいた。

なんだアレ…

まりんぱーく2

カニ?マリンパークのマリンって、これ?

お腹の中でプクプクと湧いてきた笑いが、やがて爆笑になる。

カニ… イセエビでもなく カニ…

この辺りの温かい海で、カニは獲れない。名物は、イセエビである。

身体をふたつに折って涙が出るほどゲラゲラ笑うオバサンを、見とがめる人もいない。

思う存分笑ったら、引き返そう。お腹も減った。たしか道の向こうに、回転寿司があった。

小指で目尻を拭いて立ち上がり、来た道を戻る。



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もろもろ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2023/07/26 11:30

くっきー話。

昨日からの気がかりが解決し、私は今、ハレバレとしている。

心配事は、高価なお菓子に感謝足りなかった問題(→おかしの話。)であった。

ぷちふーるされ

もらった缶入りクッキーが、思っていたよりかなり高いと知ったが、誰から、いつもらったのか、どんな味だったか、何も覚えていない。

手渡された時に、自分が軽ーい感じで

あ、ありがと~

なんなら片手で受け取ったような、うっすらした記憶だけがある。

あんなお高いものをいただいて、あの態度は無いだろう。

これはマズい、ヒジョーにマズい(いや食べ物の話にマズいは良くないか)

遅ればせながら、誰がくれたか思い出そうと、頭を絞ってもなにも浮かばない。

ゆいいつの救いは、気楽な口調からして、目上の人ではなさそうだという点である。

ヒントを求めて、藁にも縋る気持で、あらためてネットの商品説明を読むと

プレゼントにお勧めの、アンティーク風でオシャレな缶…

うん、缶は知ってる。

伝統的な製法と上品な風味で、ワインにも…

へえ~(覚えがない)

フランス・ゲランドの塩を用いた塩味の

あー!思い出した!

食べてみたら思ったのと違うから あげる

この言い草、そう、わが老母である。

2、3個減った食べかけをもらったのだから、感謝少なめは当然であった。

クッキーと思ったらしょっぱかったから、きっとビックリしたんだろうな。

?!!

驚いたおばーちゃんの顔を想像して、フフッと笑ったら、ハーブやチーズの効いたお菓子の味までハッキリ思い出す。



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2023/07/25 11:30

おかしの話。

パソコンに向かって、生協の注文

今日はちょっと時間があるので、ゆるゆるとWEBカタログなど眺める。

生協というと生鮮食品や生活必需品を扱うイメージだが、カタログには宝飾や化粧品、ブランド物など、けっこうな高級品もある。

~ちょっと贅沢~

ステキなタイトルの下に、デパ地下にあるようなスイーツが並んでいる。

あ、コレ…

ぷちふーるされ

中に見覚えのあるお菓子があった。

ずいぶん前にもらって食べたきりなのに印象が新しいのは、ずっと空缶を使っているからだ。

女子高生のお弁当ほどの大きさで、仕事の道具がうまく入る。とても便利なので

もう1個欲しいなあ…

ちょうど考えていたのである。

中身の味は全然覚えていないが、マズかったという記憶もないから、いいだろう。

ポチっとしようと見たら

プティ・フール・ナントカ  2,500円

高ッ!

空缶目当てでは、手が出ない値段だ。諦めて次のページに移ろうとした時、別の心配が兆した。

ちっちゃい缶だったから、もらう時も

あ、ありがと~

ずいぶん軽く済ました気がする。誰がくれたかも忘れたが、ひょっとしたら、くれた人はご気分を害されたのではないか。

うーん…

悩ましい気分で、カタログのページをめくった。



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2023/07/24 11:30

ばっぐの話。

子供が独立したあとの部屋は、自分の書斎やゲストベッドルームにしたいな、と夢見ていた。

しかしなかなか、思惑通りにはいかぬもの。

ふたりとも大方の持物は処分していったが、アパート暮らしに持って行けないものもある。

季節外れの衣類は預かるし、たまに帰るときの寝床だって必要だ。

それぞれの部屋にはかつての主の気配が残って、うっすらムスメの部屋、うっすらムスコの部屋、という感じになっている。

ときどき入り込んでは掃除機なんかかけて

ここってアタシの部屋?まだ子供部屋

なんだか腑に落ちない。

今日もハンガーラックにハタキをかけていたら、かけてあったバッグがバタリと落ちた。

いつも持っているバッグより小ぶりで

あの子は荷物が多いから これじゃ入りきらないだろう

使う見込みの無さそうなバッグをラックに戻しかけて、ふと目の前に掲げてみる。

いいバッグだな…

ムスメは着るもののセンスがいい。私が行かないような店で、面白いものを見つけてくる。

リビングの明るいところでカバンの写真を撮り

このバッグ使わないんなら借りてもいい?

ムスメにLINEで聞いたら

いいよー

すぐに返事がきた。ありがとう、とスタンプで返した後、しばらくして

♪ぺぽん♪

またLINEがきて

好きなの買わなくていいの お下がりじゃなくて

ビンボー性の母親の、モッタイナイ精神だと思ったらしい。

ちょうどこういうのが欲しかった

ならいいけど


スマホを閉じてから、もういちどバッグを持った手を伸ばし、目の高さにして眺める。

うん、こういうのが欲しかった!

パンパンと軽くはたいて、クローゼットに入れた。

きいろいかばん



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ごかぞく | コメント(6) | トラックバック(0) | 2023/07/23 11:30

はだかの話。

土曜の朝はチコちゃん

ちこちゃんにしかられる

なぜ彫刻は裸が多いの?

…まあ 古代ギリシャのなんとやら、だろうねエ

テレビに返事をしていると、専門家の先生が出てきて、ひとしきり解説したあと

裸の彫刻が公共の場にこれほどたくさんあるのは 日本だけなんですよ

おっしゃったので、ナルホドとひざを打った。

私の狭い海外経験の中でも、公園や広場に立っている人物の像は、軍人や音楽家など、皆何をした人かわかる、つまり服を着た状態であった。

例外は、人魚姫やネプチューンといった、神話や童話の登場人物であるが、腰布を巻いていたり、丸裸ということは無い。

翻ってわが国の屋外彫刻には、どこの誰さんか、わからない裸婦が多い。

いつも行くショッピングモールの前の広場にも、ほぼハダカさんがひとりいる

自分が裸なのを忘れたかのように、胸を張って大きく一歩を踏み出した彼女は、高い台の上から、乳や尻を惜しげもなく見せている。

ママと散歩中の幼児が、立派なおチチを見上げている様子は、心温まる風景といえなくもない。

彼女には不可解な点がひとつあって、それがほぼハダカ、と呼ぶゆえんでもある。

パンツもクツシタもはいてないにもかかわらず、上着を着ているのだ。

前開きの、丈の短いカーディガンなので、露出を妨げることはない。

乳を隠すでなく、尻を覆うでもなく、一体何のために、かように無意味な衣類を着るのか?

ぜひいつか、チコちゃんに教えてほしい。



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てれびじょん | コメント(10) | トラックバック(0) | 2023/07/22 11:30
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