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うえきの話。

勝手口を開けたら、ドアが何かに触った。鉢植えの観葉植物の枝が伸びすぎだ。

かぽっく
(カポックとかなんとかいうこういうやつ)

植木バサミを持ってきて、パキョン!パキョン!と大胆に切り落とす。

自信たっぷりなその様子は、いっぱしの園芸家に見えるかもしれないが、けっしてそうではない。

私は園芸全般が苦手で、丈夫で育てやすいという鉢植えをいただいても、驚きのスピードで枯らしてしまう。

Green fingersどころか、触れば枯れる黒い指の持ち主なのだ。

あらゆる植物におっかなびっくり

枯れるなよ~、枯れないでくれよ~

と、及び腰で対処している。

それが、コイツに関してだけ大胆に接することができるのは、ひとえに付き合いの長さゆえである。

コイツがやってきたのは、今を去ること30年前、1人暮らしの頃。

時はバブル、私は夜を徹して働き遊ぶ、イケイケOL (笑)であった。

しおらしく鉢植えに水をやるような生活とは程遠い私のアパートに、小さな緑の鉢を持ってきたのは母。

生活にはウルオイが必要でしょ

などとイイコト言うが、何のこたあない、挿し木で増えた鉢の行き先に困ってのことだ。

この人は私とは正反対で、植える植物はどれもこれも元気良く育ち、どんどん増える。

そして増やした鉢植えを、次から次へと持ち込んできた。

対する私は、それを得意のBlack fingersで、次から次へと枯らしてきたのだが、一番最初にやって来たコイツだけは、どういう加減かびくともしない。

暑くても寒くても、何か月も水をやらなくても、枯れることなく葉を茂らせ、だんだんと大きくなる。

結婚して、子供ができて、離婚して、何度も引っ越しても、少しずつ鉢を大きくしながら、ずっとついてきた。

子供が小さい頃には、冬の寒い時期は室内に取り込み、クリスマスツリーとして飾りつけた。

思えばあの頃が、コイツが一番輝いていた時期かもしれない。

子供も育った今では、もはや注目されることもなく、年がら年中ベランダに出しっぱなしだが、不平も言わず、置かれたところにじっとしている。

思えば両親より、元亭主より、子供より、長く私と一緒にいるのはコイツである。

さっき切り落とした枝を、ちょっと土に挿してみた。

根付いて新しい木になったら、ムスメのアパートに持って行ってやろうかしら。

ムスメの迷惑そうな顔が頭に浮かんで、ひとり笑った。



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ごかぞく | コメント(4) | トラックバック(0) | 2016/10/27 10:28
コメント
No title
こんにちは
随分と長く、30年ものお付き合いですか~
なんか愛着がわいて来ませんか?
これからも大事にお育てください。

挿し木が育って、娘さんのところへですか~
娘さん喜んでくれるでしょうかね~。
私の
剪定は大胆にて無秩序。

いいように言えば豪放磊落。
悪く言えばデタラメ。


我が家のカポックは三十歳を超えました。
私の選定が災いしてヘン容姿になっております。

お庭のプランツにはかなり愛情を注いでいるんですが順調に枯れていってます。
なぜなんだ!

green thumb と呼ばれたいのに。
Re: No title
Carlos様

まだ土に突っ込んだだけなのですが…。

そもそも、うちに来たのも、母が剪定した枝を土に挿したら付いたものなんです。

母と同じようにできるか、まだわかりません。
Re: 私の
rockin'様

愛情を注いでも報われない、なんてつらいんでしょう。

うちの母を見ておりますと、案外雑ですし、具合悪くなった時の切り捨て方とか、なかなか冷酷ですよ。

愛情深い園芸家というより、ブラックジャックを見ているようです。

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