ゆうじん話。

友だちのヒサコさんと待ち合わせをした。

ターミナル駅の中央改札口で、と、ご指定である。

彼女と会うのはいつも突然。前夜に電話がかかってきて

ぢょん子さん？私ヒサコ…　近くまで来てるの　明日時間ある？

慣れてないと聞き取れないほどの早口で、挨拶もそこそこに用件に入るのもいつものことだ。

次いつ会えるかわからない忙しい人なので、声がかかれば万障繰り合わせて会いに行く。

少し早めに着いたので、ふきっさらしのコンコースに立って待つ。

もういいトシなんだし、喫茶店とか、せめてデパートの中とか、屋内にすればいいのに、ヒサコさんの指定する場所はいつも外。

寒い時期はカンベンしてほしいと思うが、口をはさむ間もなく約束させられてしまうので致し方ない。

しばらく待って、５分ほど約束の時間を過ぎたが、ヒサコさんの姿はない。

おかしいな、と見まわして気づいた。

てっきり中央口だ、と思っていた大きな改札は、西口ではないか。

慌てて構内の表示板を見て、中央口に走っていくと、ヒサコさんの小柄な後ろ姿が見えた。

ゴメンなさーい、間違っちゃった…

ハハハハ…アナタのことだから、そんなことだと思ってたわよ　前にダイマルで会った時も…

本当に記憶力のいい人だ。

今日は晴天だというのに、彼女の手にはなぜか雨傘。

ハイこれ　こないだ帰り道のタクシーに忘れたでしょう

私のカサである。そういえば最近見ないと思っていた。

とりあえずどこかに入りましょう

ヒサコさんは私を従えてサッサカ歩き出す。

お蕎麦でいい？

ハイと答える間もなく彼女は暖簾をくぐっている。

食べて、しゃべって、時間が過ぎて、お勘定の段となる。サイフを出そうとすると

ご馳走するわよ　私のほうがお姉さんだもの

お姉さんどころではない。ヒサコさんは母より１０も年上、８０代のオバアサンなのである。

８０代の方をお友だち呼ばわりしていいのか、という疑問は湧くのだが、他の人とご一緒だった時

こちらぢょん子さん　私の友人

と紹介されたので、それでいいかと思っている。


（見たとこはタカギハツエさんに似てる）




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