よにげの話。
小学校の同級生のキミコちゃんが、同じ県内でお勤めしてることが分かった。
「県民だより」の小さな記事。変わらないタレ目と、白い丸い顔。姓が変わっていないから、結婚してないか、私と同じバツイチかな。
引っ越してから37年、会ってない。
勤め先もわかるし、連絡しようと思えばできるんだけど、ためらってしまう。なぜなら、キミコちゃんは、37年前の今ごろ、一家4人で夜逃げして、いなくなった友達だから。
キミコちゃんのお父さんは工務店を経営していて、羽振りが良かった。
友達の中で一番先にラジカセを買ってもらったのはキミコちゃん。マンガは立ち読みで我慢していた私に、毎月毎月『花とゆめ』を貸してくれたのもキミコちゃん。
キミコちゃんの部屋には、当時の女の子のあこがれ、キキララやマイメロディーなどのサンリオグッズがいっぱい、弾きもしない白いギターまで置かれていた。
小学生は月のお小遣いが学年×百円、という子がほとんどだから、誰でもお財布の中は硬貨だけ。
お誕生会に呼ばれたら、そのお財布を持ってサンリオショップに行き、悩みに悩んで、200円のハンカチセットとか、300円の貯金箱などのプレゼントを買う。
そんな中キミコちゃんだけは、いつも紙のお金を持っていた。みんなでサンリオショップに行った時、800円だったかのキキララの手鏡を、こともなげに買っていたキミコちゃんの横顔を、今も覚えている。

中学に入った年の5月の連休のある日、キミコちゃんがうちに来た。あの白いギターを
これ、貰ってくれる?
なんで?悪いよ!それに、私ギター弾けないし。
玄関で押し問答していると、うちのおかーさんが現れ、そんな高いものはもらえないけど、あがってジュース飲んでいきなさい、と判決を下したので、キミコちゃんはしばらく遊んでから、ギターを持って帰った。
それがキミコちゃんと会った最後だった。
あとで知ったが、キミコちゃんのお父さんの工務店は、工事代金やら、材料代やら、借りられるだけ借りて全部踏み倒し、行き先を言わずに一家で引っ越してしまったのだという。
ずいぶん経ってから、四国の消印のある、住所のない手紙を一度もらった。何が書いてあったか、もう覚えていない。
キミコちゃんに連絡してみるか、まだ迷っている。

にほんブログ村

日記・雑談ランキング
「県民だより」の小さな記事。変わらないタレ目と、白い丸い顔。姓が変わっていないから、結婚してないか、私と同じバツイチかな。
引っ越してから37年、会ってない。
勤め先もわかるし、連絡しようと思えばできるんだけど、ためらってしまう。なぜなら、キミコちゃんは、37年前の今ごろ、一家4人で夜逃げして、いなくなった友達だから。
キミコちゃんのお父さんは工務店を経営していて、羽振りが良かった。
友達の中で一番先にラジカセを買ってもらったのはキミコちゃん。マンガは立ち読みで我慢していた私に、毎月毎月『花とゆめ』を貸してくれたのもキミコちゃん。
キミコちゃんの部屋には、当時の女の子のあこがれ、キキララやマイメロディーなどのサンリオグッズがいっぱい、弾きもしない白いギターまで置かれていた。
小学生は月のお小遣いが学年×百円、という子がほとんどだから、誰でもお財布の中は硬貨だけ。
お誕生会に呼ばれたら、そのお財布を持ってサンリオショップに行き、悩みに悩んで、200円のハンカチセットとか、300円の貯金箱などのプレゼントを買う。
そんな中キミコちゃんだけは、いつも紙のお金を持っていた。みんなでサンリオショップに行った時、800円だったかのキキララの手鏡を、こともなげに買っていたキミコちゃんの横顔を、今も覚えている。

中学に入った年の5月の連休のある日、キミコちゃんがうちに来た。あの白いギターを
これ、貰ってくれる?
なんで?悪いよ!それに、私ギター弾けないし。
玄関で押し問答していると、うちのおかーさんが現れ、そんな高いものはもらえないけど、あがってジュース飲んでいきなさい、と判決を下したので、キミコちゃんはしばらく遊んでから、ギターを持って帰った。
それがキミコちゃんと会った最後だった。
あとで知ったが、キミコちゃんのお父さんの工務店は、工事代金やら、材料代やら、借りられるだけ借りて全部踏み倒し、行き先を言わずに一家で引っ越してしまったのだという。
ずいぶん経ってから、四国の消印のある、住所のない手紙を一度もらった。何が書いてあったか、もう覚えていない。
キミコちゃんに連絡してみるか、まだ迷っている。

にほんブログ村

日記・雑談ランキング
スポンサーサイト
37年という長い時間が、全てを洗い流してくれているよ、きっと。
キミコちゃんは、贅沢と引き換えに大きな試練を受けたと思いますよ、栄枯盛衰は生まれながらの回り合わせ。
私なんか、この年にして過去にお会いした方がとても懐かしいわ。亡くなって行く人もチラホラだもんね。
勿論、ぢょん・でんばあさんの心しだいだけど・・・ね。
白いギターもぢょん・でんばあさんに記念にもらってもらいたかったんだと思います(夜逃げの前に・・)
キミちゃんきっと寂しがっていると思いますよ!
夜逃げはもう昔の話なんでしょう!
連絡だけでもしてあげたらどうでしょう?
きっと懐かしがってくれるとおもいますよ。
キミちゃんが逢いたくないなら別ですけど・・
誰かさんからの連絡を待っているのかもしれませんよ。
苗字が変わっていないということは婿養子と言うことも考えられますが・・・家庭の事情から推測するに、それはありえないかな?
お子さんの気持ちを考えるとなんともいえないですよね。
そんな事ばかりじゃないと思うけど、
なにかの事情があって何も語らず出て行く事って
そんなに珍しい事でもないと思うんです。
昔の様に会話できるといいですね。
コメントありがとうございます。
今の住まいは小学生時代の隣県で、こんな近くに戻ってきてるというのは、もう大丈夫ってことなのかなあとも思うのですが、そのころの同級生の誰にも、連絡は入っていないのです。
実家が残っている友達もたくさんいるし、連絡を取りたければ、とれる状態なのにな…と思ったり。
まだ迷っています。
コメントありがとうございます。
ギターの件は、あとで母も「あなたに貰ってほしかったんだろうね」としんみりしてました。
こちらの連絡先を書いたはがきでも出してみようかな。
嫌なら無視してくれていいからね、と書いて。
それが、自分発信の投稿とかじゃなく、職場がらみの仕事の一環みたいな記事で、おそらく本人も断れない感じのものだったので、迷うんですよね。
職場にハガキでも書いてみようかな…と思ってます。
コメントありがとうございます。
私も昔金融関係の仕事していたので、お金がらみの失踪事件は、社員も、お客さんも、何度も見ました。
キミコちゃんのお父さんは地元で相当不義理をしたみたいで、知り合いのおじさんがすごい勢いでうちに来て、「お宅のお子さんの友達だろう、どこに越したか、なんか聞いてないか」と詰め寄られました。
私も夜逃げじゃないけど、離婚して引っ越したりしてるので、子どもには悲しい思いさせてると思います。子どもが大きくなって、そんな話も親子でぽつぽつ、するようになってきました。
私にも会いたい幼馴染がいます。
RちゃんとMちゃんの姉妹です。
学校にも近所にも告げずにいなくなりました。
オトウサンのご商売がうまくいかなくなったからだそうで、学校にも行き先を尋ねてコワイ人が来たそうです。
どうしてるのかなぁ・・・九州弁の やさしかったおばあちゃんも もういないかなぁ・・・
さよならを言いに来てくれたキミちゃんですから、是非連絡とってあげてください。
縁があるならば、また 親交が戻るかもしれません。戻ればいいですね!
うう、ぢょん・でんばあさん、アタシを泣かせないで!
家庭の事情で運命を大きく変えられたアタシ、30年たっても受け入れられないでいます。でも誤解しないで!そうなったことは受け入れられた。親から否定されたことを受け入れられないでいるの。
親だって生きていればいろんな事があるしね。
でも、今のキミコちゃんはどんな気持ちだろう。
迷いますね。
アルバイト一緒でしたので卒業後もしばらく付き合いが続きましたが
してはいけないような意地悪をして疎遠に。。
それが同窓会で再会して。
平謝りに謝ったら「若い頃はいろいろあるよ」と笑ってくれました。
会って良かったと思いました。
初めましてでこんな事を言うのも恐縮ですが
夜逃げは親の事情でキミコちゃんのせいじゃない。
ぜひ連絡を取られてみては?と思います。^ ^
コメントありがとうございます。
RちゃんとMちゃんも、きっとご自分の子どもには悲しい思いをさせたくないと頑張って、どこかでいいお母さんになってらっしゃいますよ。
キミコちゃんと、まだどこかでご縁があったら…話したいことがいっぱいあります。
つらかったお話をしてくださって、ありがとう。
そうなんです。夜逃げしたという事実自体ではなく、それにまつわるどんなことで、どういう風に傷ついているか、私にはわからない。
私は離婚して自分の子供をたくさん泣かせたから、キミコちゃんの心のどこかに、まだ乾かず生々しいままの傷が残っているのじゃないか、と恐れてしまうのです。
私がのんきに顔を出すことがきっかけで、その傷がまた痛みだしたらどうしようか。
やっぱり、こちらの懐かしさだけで安易には連絡できないなと思います。
はじめまして、優しいコメントありがとうございます。
長い年月が、溶かしてくれるいさかいもありますね。よい同窓会になりましたね。
若い時はどうしても許せないことが、今は小さく見えたりします。私も高校時代の同級生と、最近になってまた定期的に会うようになりました。
この先友達が増えることは望めないし、昔の友人は大切にしたいと思います。