たいたん話。
昔の友達と、街で会う。
お互いもういいトシになったのだから、昔のようにオーショーでギョーザでは済まない。落ち着いた和食屋を見つけて、そこに入った。
細い格子の引き戸を開けた時、ちょっとした予感はあったのだ。
壁にミツヲ風の筆文字と、ツルタロー風の野菜の絵。上手いんだかヘタなんだか、わからない。
カウンターにはお寺のスリバチほどのデカい器がずらり。中身はナニヤラ惣菜らしい。
モケモケした和紙のメニューを見て、友達と顔を見合わせた。
竹の子と蕗のたいたん
蕪とお揚げさんのたいたん
…等々。
「たいたん」は関西弁で、「煮たもの」という意味。
おかーさん、今日ゴハン何?
サバの塩焼きと… 子芋の炊いたん!
などと用い、ウールのスカートに前掛けをかけた、昭和のお母さんから聞かまほしい言葉である。
しかし、炊いたん、と口で言うことはあっても、字に書くことはない。
「おばんざい」がまるで高級グルメみたいに持ち上げられたころからだろうか。この「炊いたん」と、妙な場所で出くわすようになった。
ビジネス街の小料理屋だとか、高層ビルのテナントに入っている居酒屋とか、客単価の高い店で、場所も関西とは限らない。
カウンターの奥には、美容院行きたて、ツヤツヤ頭のエセ京女がソロバンをはじいている。
ホッコリとかハンナリとか、イメージで原価の低いものを高く売る、古都商法なのだ。
芋の皮を剥いていたとは思えない、真っ白な割烹着のオンナが、注文を取りに来たので、最低限の注文をして追い払ってから
出たな… たいたんの妖女…
コソッと言うと、SF研出身の友達が、爆笑した。

(出典→「タイタンの妖女」ハヤカワ文庫)

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お互いもういいトシになったのだから、昔のようにオーショーでギョーザでは済まない。落ち着いた和食屋を見つけて、そこに入った。
細い格子の引き戸を開けた時、ちょっとした予感はあったのだ。
壁にミツヲ風の筆文字と、ツルタロー風の野菜の絵。上手いんだかヘタなんだか、わからない。
カウンターにはお寺のスリバチほどのデカい器がずらり。中身はナニヤラ惣菜らしい。
モケモケした和紙のメニューを見て、友達と顔を見合わせた。
竹の子と蕗のたいたん
蕪とお揚げさんのたいたん
…等々。
「たいたん」は関西弁で、「煮たもの」という意味。
おかーさん、今日ゴハン何?
サバの塩焼きと… 子芋の炊いたん!
などと用い、ウールのスカートに前掛けをかけた、昭和のお母さんから聞かまほしい言葉である。
しかし、炊いたん、と口で言うことはあっても、字に書くことはない。
「おばんざい」がまるで高級グルメみたいに持ち上げられたころからだろうか。この「炊いたん」と、妙な場所で出くわすようになった。
ビジネス街の小料理屋だとか、高層ビルのテナントに入っている居酒屋とか、客単価の高い店で、場所も関西とは限らない。
カウンターの奥には、美容院行きたて、ツヤツヤ頭のエセ京女がソロバンをはじいている。
ホッコリとかハンナリとか、イメージで原価の低いものを高く売る、古都商法なのだ。
芋の皮を剥いていたとは思えない、真っ白な割烹着のオンナが、注文を取りに来たので、最低限の注文をして追い払ってから
出たな… たいたんの妖女…
コソッと言うと、SF研出身の友達が、爆笑した。

(出典→「タイタンの妖女」ハヤカワ文庫)

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会社の近くにメシ屋があって、
看板には堂々と芋の炊いたん
などの「炊いたん」とゆー恥
ずかしいことが書いてあるん
です。
そこを通るたびに絶対にこの
店には入らないぞと気持ちを
引き締め直してます。
ホッコリとかハンナリも私の
受容許容量を超えたのでもう
拒否。
臨界点に達しました。
炊いたん、って確かに口では言いませんね。
確かに、なんかこう、この時代になって「そうどすえ」と言っているみたいで、変、と思います。
あの「どすえ」をいう人は、お茶屋さんのお姉さん達か、観光客相手のお店の人か、すごいお年寄り…?いや、80歳でも、今はいうかなあ?というぐらいだと思っているので。
やっぱり、方言とかが好きな外国人か、関西以外の人向けではないのかな、と思います。
それはやっぱり「だっぺや」とか、「うちなんちゅ」とか、他の地方でも聞く気がします。
煮たものをタイタンというんですか~
メニューに出ていたらおそらく、関東人は判らないでしょうね。
覚えておきます。
確かにたいたんって書き文字ではみませんね。
関西の親戚は私に標準語で話しかけてくれますが
ちっさいちっさいという風に
形容詞を重ねて必ず使います。
本人それがかんさいふうときがついてなさそうで
とてもかわいいです。
おばんざいっていう言葉もむかつきます。家庭内のものなのに、付加価値をつけて観光客に高い値段で売りつけるやり口が!大きな器で、むき出しも不衛生!タッパに入れとけや!と。。。作ってるのは、お母さんじゃなくて、オッサンやろ!と。あくまでイメージです、と書いておいてほしい。
大阪でも、でんねん、まんねん、は言わないし、落語家さんくらい?
きっと共感していただけると信じておりました。
これからもその定食屋には近寄ることなく、心美しく健やかにお過ごしくださいませ。
漫才師などの職業関西弁にも似たものを感じることがあります。
でんねん、まんねんなんて言う人いませんからね。
タイタンとメニューにある店は、たいしたことない料理で高くとるお店ですから、見たらお水だけ飲んで逃げてくださいね。
「急にお腹が…」とかなんとか言って。
ハハハ…ちっさいちっさい…二回言いますね確かに。
それは方言って自覚ないかもね。面白いこと教えてくださって、ありがとう。
家ではコーヒー飲んでパン食うてるくせに!
日本で一番、ラーメンのスープがどろどろのくせに!
などと私も思うのですが、いろいろ差し支えますので記事では控えました(笑)。
関西では「煮る」ことをフツーに「炊く」というんですよね。
だから『煮たもの』が「炊いたもの」→たいたん になるんです。
おばんざいなんて、昔は「ほんのおばんざいですけど」って、謙遜だったんですよ。