びわのみ話。
うちの団地には、大きなビワの木がある。
濃緑の葉の陰に、ビワの実の、うぶ毛にけむる甘い黄色が見えれば、もう夏も近い。
子供のころ住んでいた田舎の家にもビワの木があり、毎年スズナリに実が生ったので、イモートも私も、自由に枝からもいでは、勝手に食べていた。
そのせいか、私はいまだに、おカネを出してビワを買う気がしない。
何年か前、小学生だったムスコに、なにげなく尋ねた。
ねえ ビワって食べたことないよね?
あるよ ヤマモトさんがくれる…
へ?誰?
ヤマモトさんは、団地の管理人さん。
ご夫婦で住込の常駐管理で、暇なときには子供をかまってくれる。
親の私はひと通りのお付き合いしかないが、団地の中で遊んでいる子供にとっては、とても親しい存在だったようだ。
団地の敷地内のビワの実が熟すと、ヤマモトさんは高枝伐りハサミなどを使って収穫し、そこらで遊んでいる子供にくれるらしい。
そんなことになっているとは、とんと知らなかった。
いいニオイだよね ビワって…
母親の私の知らないところで、ビワの味をとうに知っていたムスコ。
いつまでも手のひらにのせている気でいたけれど、ムスコはもう、自分だけの人生を生きている。
これから私が会わない人に会って、私の知らないことを知っていくんだな。
そう悟ったはじまりが、ビワの実だったような気がする。
ヤマモトさんは定年退職され、ムスコも大学生となって、家を離れた。
今はもぐ人のないビワの実が、霧雨に濡れている。


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濃緑の葉の陰に、ビワの実の、うぶ毛にけむる甘い黄色が見えれば、もう夏も近い。
子供のころ住んでいた田舎の家にもビワの木があり、毎年スズナリに実が生ったので、イモートも私も、自由に枝からもいでは、勝手に食べていた。
そのせいか、私はいまだに、おカネを出してビワを買う気がしない。
何年か前、小学生だったムスコに、なにげなく尋ねた。
ねえ ビワって食べたことないよね?
あるよ ヤマモトさんがくれる…
へ?誰?
ヤマモトさんは、団地の管理人さん。
ご夫婦で住込の常駐管理で、暇なときには子供をかまってくれる。
親の私はひと通りのお付き合いしかないが、団地の中で遊んでいる子供にとっては、とても親しい存在だったようだ。
団地の敷地内のビワの実が熟すと、ヤマモトさんは高枝伐りハサミなどを使って収穫し、そこらで遊んでいる子供にくれるらしい。
そんなことになっているとは、とんと知らなかった。
いいニオイだよね ビワって…
母親の私の知らないところで、ビワの味をとうに知っていたムスコ。
いつまでも手のひらにのせている気でいたけれど、ムスコはもう、自分だけの人生を生きている。
これから私が会わない人に会って、私の知らないことを知っていくんだな。
そう悟ったはじまりが、ビワの実だったような気がする。
ヤマモトさんは定年退職され、ムスコも大学生となって、家を離れた。
今はもぐ人のないビワの実が、霧雨に濡れている。


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私も80歳過ぎて、初めて聞く娘たちの話でへ~そうだったのと言うことにぶつかって驚きます。
枇杷の実、どこかで育っていますよね
おカネを出してビワを買う気がしない 同感です
去年はいただけたけど、今年は来ないです
一緒ですね!
僕の子どもの頃には祖父母の家には
ビワが鈴なりでした。
僕が大阪に出て来てからも
そこの実をもぎって毎年父が送ってくれていました。
お店では買ったことがありません。
流通の関係でしょうか?
美味しくないんですよ~(笑)
そのビワの木も今ではなくなってしまい
もう美味しいビワを食べることは出来ないでしょうね。
母も、自分のためだけに買うのはもったいないと思ってて、子供らのお弁当に入れるためなら・・・という感覚だったと思います。普段の食卓には出てこなかったですから。
果物が自宅の庭に成るという環境にある方は心底羨ましいです。
私はあまり食べたことはありません。
家内は子供たちには1年に1回だけ買って食べさせたみたいです。
何せ貧乏だったので、それが精いっぱいだったと、家内は
この時期になるといつも話しております。
その子たちも家庭を持ちました。
子供たちにビワを食べさせているのかな?
でも、親は知らなかった世界を知ってく機会が減っていきます。
ここに親と子のギャップがあります。
だから、私は新しい世界へ打って出ようと思っています。
子供には負けないゼ。
実際は負けるけど。
枇杷の記事についてのコメントだと思いますので、こちらにお返事しますね。
ビワは他の果物よりも、鮮度が重要な気がします。
もいでからの時間が美味しさの決めてなんですね。
昔のママ友が長崎の人なので、以前は時々いただいていました。
茂木のビワはやはり名産だけあって、立派で甘みも強く美味しかったです。
ビワって買うと本当にお高いですよね。
ほったらかしの木でもあんなに鈴なりになるのに、なぜだろうといつも思います。
wancoさんは都会っ子ですもんね。
田舎は土地だけはあるから、そういえばイチジクの木もありました。
イチジクも柿も、買う気にはなかなかならないです。
季節のものを一度は食べさせたいという母心、ステキですね。
きっとそのお気持ちはお嬢様にも伝わっているでしょう。
親は越えられてこそ親の仕事をやったといえるんでしょうね。
でも私も負けないぞ!
実際は負けるけど。
コメント順が遅くなりましてごめんなさい。
負うた子に教えられ、というけれどまったくその通りですね。
教わることは謙虚に聞きたいと思います。