うごいた話。
ようやっと梅雨らしい雨模様の日が続くようになってきた。
部屋の中で濡れずにいて、しとしとと降りつづく雨を見るのはいいものだ。
落ちてくる雨粒を見ながら、そういえば、私の耳が動くようになったのも、こんな日だった、と思った。
百鬼園こと内田百閒先生は、ご幼少のみぎり、ご母堂に理不尽に叱られたことに腹を立て、歯を食いしばるあまりに耳が動き出したという。( 「続百鬼園随筆」収録「立腹帖」 )

内田 百閒(うちだ ひゃっけん 1889-1971)
私の場合は、誰に叱られたわけでもない。特訓してできるようになったのである。
昔は他にも色々、同じように特訓した。(→ めだまの話。)
ゲームもDVDもない子ども時代、雨続きでヒマな私は、鏡台を覗いて自分の顔を眺めていた。
眉を上げたり、寄り目をしたり、鼻の穴を膨らませ、口をとがらせたり、裂けるほど大きく開けたり、動くものを全部動かしていると、耳だけがじーっとしているのが、どうも気にくわない。
何とかこれを動かせないものかと思っていたところに、我が家の猫、ヘタレの坊ちゃまが通りかかった。
(引きこもり猫・ヘタレの坊ちゃまについては → へたれな話。)
さっそく、いやがる坊ちゃまを捕まえてガッシと膝の間にはさみ、耳の観察である。
坊ちゃまがジーパンに爪を立てて憤然と去っていくまでに、猫は耳そのものではなく、その前後左右の筋肉で、耳を動かしているらしい、とわかった。
つまり周りから耳を引っ張るのである。
どこが動きそうか、力の入るところを確かめていると、唾液の湧いてくる箇所、あごの関節の下あたりを緊張させる時に、何か『感じ』があった。
ここに何かあるぞという野生の勘。
オタフク風邪が再発しそうなくらい、そのへんに力を入れると、くいっと耳が後ろに動いた!
それ以来、私の耳は動くが、だからって何ということはない。
百鬼園先生は師である夏目漱石のところに行って、耳を動かして見せたそうだが、見せられた方もきっと困ったろう。

(見せたほう)

(見せられたほう)

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部屋の中で濡れずにいて、しとしとと降りつづく雨を見るのはいいものだ。
落ちてくる雨粒を見ながら、そういえば、私の耳が動くようになったのも、こんな日だった、と思った。
百鬼園こと内田百閒先生は、ご幼少のみぎり、ご母堂に理不尽に叱られたことに腹を立て、歯を食いしばるあまりに耳が動き出したという。( 「続百鬼園随筆」収録「立腹帖」 )

内田 百閒(うちだ ひゃっけん 1889-1971)
私の場合は、誰に叱られたわけでもない。特訓してできるようになったのである。
昔は他にも色々、同じように特訓した。(→ めだまの話。)
ゲームもDVDもない子ども時代、雨続きでヒマな私は、鏡台を覗いて自分の顔を眺めていた。
眉を上げたり、寄り目をしたり、鼻の穴を膨らませ、口をとがらせたり、裂けるほど大きく開けたり、動くものを全部動かしていると、耳だけがじーっとしているのが、どうも気にくわない。
何とかこれを動かせないものかと思っていたところに、我が家の猫、ヘタレの坊ちゃまが通りかかった。
(引きこもり猫・ヘタレの坊ちゃまについては → へたれな話。)
さっそく、いやがる坊ちゃまを捕まえてガッシと膝の間にはさみ、耳の観察である。
坊ちゃまがジーパンに爪を立てて憤然と去っていくまでに、猫は耳そのものではなく、その前後左右の筋肉で、耳を動かしているらしい、とわかった。
つまり周りから耳を引っ張るのである。
どこが動きそうか、力の入るところを確かめていると、唾液の湧いてくる箇所、あごの関節の下あたりを緊張させる時に、何か『感じ』があった。
ここに何かあるぞという野生の勘。
オタフク風邪が再発しそうなくらい、そのへんに力を入れると、くいっと耳が後ろに動いた!
それ以来、私の耳は動くが、だからって何ということはない。
百鬼園先生は師である夏目漱石のところに行って、耳を動かして見せたそうだが、見せられた方もきっと困ったろう。

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こんばんわ!
耳が動くんですね。
実は私も動かせるんですよ!
私は研究はしませんでしたが・・・
そこかと言われると、アレですが。
ちなみに僕も子供のころ耳動かしをマスターし、恩師に見せるため職員室へ行きましたが、恩師がどんなコメントをくれたのか、まったく覚えておりません。
あら!耳動く派の方が、意外に身近に!
しかも練習なしですか。天才肌ですね。
私はコツコツ型の努力家です(笑)。
私が子供の頃は、内田百閒もパブロ・ピカソ(1973没)もまだ生きていたのです。ほんとビックリですわ。
やっぱりあれは見せられても困るものなんでしょうね。先生の微妙な表情が目に浮かぶような…。
自分の耳を鏡で見てましたが動きません。
念力じゃないですものね。。。
眉毛ばかり動きました。
人間の、耳を動かす筋肉は退化していて、動かないのが普通らしいです。
ちょっとしたコツで動くようになる人は、先祖がえりみたいな筋肉がちょっぴり残ってるのでしょうね。
動いたって仕方ないです(笑)何にも得したことないし。眉毛を動かしてる方がきっと美容にもいいですよ。
(何であろうと)できるって、すばらしい……
耳や目玉は自在には動きませんが、鼻なら動きま~す。
幼馴染がやっていたのを見ていて、うらやましくて練習しました。
耳と違い、あんまり自慢にはならないです。
見た目が何だかカッコ悪いので・・・・大きくなったら恥ずかしくって 人前ではできません(≧◇≦)
はあはあ、ありましたなあ。べろ関係は私もダメですよ。
私の丑寅…じゃないトラウマはあれです、サクランボの軸を結ぶっていうあれ。
かなり練習したけど、できないままです。
鼻は披露しにくいですね~。
今やってみましたが、私もなかなかでした。
息子に見せてみたら「やめろ」と冷たく言われました。
耳が動くというのはすごいですね。
特訓次第で出来るようになるいい実例です。
内田百間氏が動く耳を漱石に見せた、
というのは初めて知りました。
だから何なんだ、と漱石は思ったかもしれませんが、
意外とそういうのが好きな人だったかも。
面白い逸話ですね。
コメントありがとうございます。
漱石の弟子たちの逸話は面白いですね。夏目漱石というと押しも押されぬ大家のイメージですが、今の私より若くして亡くなってるんだから、弟子たちを集めてごちゃごちゃしてた時は40代の若造なわけです。
動く耳を見て馬鹿笑いしていたかもしれませんね。