はなびの話。
夕飯どきも過ぎたのに、妙に外が騒がしい。
ふだんならこの時間には聞こえないはずの、子供の声がする。しばらくして
どん! どんどん!
重い遠い音が聞こえた。
花火大会だ。

毎年隣県で行われるこの花火大会が、通路や階段からよく見えるのを、知ってる人は知っていて、団扇を手にしてけっこうな数、集まっていた。
こうしてたまたま見る以外、わざわざ花火を見に出かけたことはない。
そう思っていたのだが、ふと記憶をたどって、もう何十年も前の、あの日の花火を思い出した。
大学生のころ、付き合っていた彼氏は北陸出身。
夏休みに遊びに来ないかと誘われ、のこのことついていった実家には、当然ながらご両親がいた。
無口なお父さんとおとなしいお母さんには、歓迎されているのかいないのかサッパリわからないが、来てしまったものはしかたがない。東京に行った弟の部屋に泊めてもらうことになった。
彼氏の案内で近所を散策して、帰ると夕飯の時間だ。
つけ醤油の表面にさっと脂が広がるようなお刺身を、私はその時はじめて食べたのである。
美味しくてビックリしている私を、お父さんもお母さんも、ニコニコして見ていた。
お風呂をいただいてワンピースに着替え、扇風機に当たっていたら、お父さんが彼氏に言った。
今日 花火があるやろう 連れてやったらどうやぁ
そうやったのぅ 行くか?
すっかり地元のイントネーションに戻った彼氏が、のんびりと尋ねた。
お母さんのツッカケを借りて、2人でブラブラ海辺まで歩き、堤防に腰かけて待った。見物客らしい姿も見えるが、混雑とは程遠い。
いきなり、天を掛け替えたように一面の花火が広がる。
何も言えなくて、ただ変わっていく光の色を見ていた。
やがてかすかな火薬のにおいが、海風に運ばれて、暗い水面をすべってきた。
これが私の、唯一の花火大会の思い出である。

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ふだんならこの時間には聞こえないはずの、子供の声がする。しばらくして
どん! どんどん!
重い遠い音が聞こえた。
花火大会だ。

毎年隣県で行われるこの花火大会が、通路や階段からよく見えるのを、知ってる人は知っていて、団扇を手にしてけっこうな数、集まっていた。
こうしてたまたま見る以外、わざわざ花火を見に出かけたことはない。
そう思っていたのだが、ふと記憶をたどって、もう何十年も前の、あの日の花火を思い出した。
大学生のころ、付き合っていた彼氏は北陸出身。
夏休みに遊びに来ないかと誘われ、のこのことついていった実家には、当然ながらご両親がいた。
無口なお父さんとおとなしいお母さんには、歓迎されているのかいないのかサッパリわからないが、来てしまったものはしかたがない。東京に行った弟の部屋に泊めてもらうことになった。
彼氏の案内で近所を散策して、帰ると夕飯の時間だ。
つけ醤油の表面にさっと脂が広がるようなお刺身を、私はその時はじめて食べたのである。
美味しくてビックリしている私を、お父さんもお母さんも、ニコニコして見ていた。
お風呂をいただいてワンピースに着替え、扇風機に当たっていたら、お父さんが彼氏に言った。
今日 花火があるやろう 連れてやったらどうやぁ
そうやったのぅ 行くか?
すっかり地元のイントネーションに戻った彼氏が、のんびりと尋ねた。
お母さんのツッカケを借りて、2人でブラブラ海辺まで歩き、堤防に腰かけて待った。見物客らしい姿も見えるが、混雑とは程遠い。
いきなり、天を掛け替えたように一面の花火が広がる。
何も言えなくて、ただ変わっていく光の色を見ていた。
やがてかすかな火薬のにおいが、海風に運ばれて、暗い水面をすべってきた。
これが私の、唯一の花火大会の思い出である。

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主人が北陸出身です。無口なお父さん(&無口な主人←当時は恋人)、台所と食卓を行ったり来たりのおとなしいお母さん、、、落ち着かないけれど何となくくつろげなくもない感じ・・・déjà-vu!!!
素敵な花火の思いでですね
二人の間にもドンと大きな花火が上がりましたか?
下手なテレビドラマ見てるより、風景が広がるわ。
私も出演したい。。。
花火大会は何度も行っていますが・・・
若い時の思い出は特別です
忘れていた事まで思い出しました~(*゚▽゚*)
私も花火大会の思い出をブログに書こうかなあ、と思いました。
その彼氏とはその後どうなったんでしょう?
甘酸っぱい初恋?
懐かしい思い出ですね。
今年もあちこちで花火大会が行われているようです。
ぢょん でんばあ様の彼氏がたまらなく羨ましい。
いいなぁ、一緒に花火を見ることができて。
花火の楽しみはは光と音と火薬のにおいと隣にいる人・・・
このあと何年かして、線香花火が消えるみたいにお付き合いは終わってしまいました。
それも含めて、いい思い出です。
にひひ…ちょっと(相当)美化してますよ。
思い出は年を経るごとに美しくなっていきますね。
身に余るお褒めの言葉恐縮です。ありがとうございます。
思い出した若い頃のお話、ぜひまたご披露ください。
楽しみにしてます。
わー、書こう書こう、書いてください。
楽しみにしてますよ~。
29日の土曜は花火のところが多かったようですね。
大阪では天神祭りがありました。今年は規模縮小で寂しかったみたいです。
>花火の楽しみはは光と音と火薬のにおいと隣にいる人・・・
ホントにそうですね。
今年は主なき子供部屋の窓から、1人で見ましたよ。シケてるなあ。
コメント順が遅くなってごめんなさい!
この感じ、わかっていただけて本当にうれしいです。北陸ならでは、って感じなんですよね~。
残念ながらこの彼氏は私のご主人になってくれなかったのですが、もしそうだったらどうだったろうと時々考えます。