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ちゃいの話。

最初に連れてってくれたのは、ヅカファンのミドリちゃん(→ おどりこ話。)だった。

オクテの私は、高校生になっても、なかなか寄り道する知恵が湧かなかった。

ボーッと家と学校を往復しつつも、かくてはあらじと思っていたが、何をすればいいのか、わからない。

そんな私を見かねたミドリちゃんが

お茶飲んで帰らない?面白いキッサテンあるの!

と、誘ってくれたのだ。

その店まではけっこう遠くて、今ならおそらくタクシーか、せめて地下鉄に乗るだろうが、高校生の小遣いで交通費までは払えない。

くだらないことを話しながら、ブラブラ歩いた。

ここだよ!

ミドリちゃんの指さす先はいかにも怪しい地下の店だった。

両親とお茶を飲むなら、絶対に入らない種類の看板が、薄暗い階段の下に招いている。

おっかなびっくり重い扉を開けると、さらに怪しい内装が私たちを迎えた。

板張りの床に、擦り切れた絨毯。色も形もバラバラな椅子に、印度更紗の座布団が置かれている。

遠い国の音楽が低く流れるなか、座りよさそうな席に近づくと、そこには先客がいて、迷惑そうにこっちを見た。

猫!ネコがいるよミドリちゃん!

驚いていると、ミドリちゃんはフフフと笑って

もう1匹、黒いのもいるよ

教えてくれた。

手書きのメニューは見慣れない言葉だらけで、私はその時、はじめてチャイというものを飲んだのだ。

持ち手のないカップを両手に包んで、テーブル越しに見たミドリちゃんの耳元には、銀のイヤリングが揺れていた。

何度あの店に行っただろうか。

店に慣れ、猫に慣れ、メニューに慣れたころ、私は高校を卒業した。

ずいぶん行かないけど、まだあるのかな。検索してみたら、なんとHPがある。

レジすら無くて、小銭を木箱に入れていたあの店にねえ。ある種の感慨とともに見てみると

閉店のお知らせ

半世紀以上皆さまに愛され続けた当店ですが、2018年3月をもちまして閉店いたします。


この時期に思い出したのは、何かの虫の知らせだろうか。

最後に1度行ってみたいような、このまま行かずにいるほうがいいような。

ふと、チャイのスパイスが、香った気がした。

ちゃい



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むかしむかし | コメント(6) | トラックバック(0) | 2018/03/14 11:34
コメント
No title
もうすぐ閉店なんですね。
青春時代の懐かしい喫茶店。
思い出に浸るのもいいんじゃないですか?
ぜひ最後にもう一度・・・
オクテの私は
高校生の頃、チャイの存在を知りませんでした。

ミドリちゃんはどうやって怪しい地下のお店を知ったのでしょうか?

>半世紀以上皆さまに愛され続けた当店ですが、2018年3月をもちまして閉店いたします。
 おおお!
 何を差し置いても行かなくてはなりません。
 そして甘いチャイを飲みながら高校時代に戻って下さい。
No title
こんにちは、ぢょん でんばあさん
高校生の背伸びしたい年頃
ヨッシィーもありましたね 友達と一緒に
本当に友達はどこから、情報を仕入れてくるのでしょう
お店に入ったらタイムスリップしたりして
ぜひ、時間を見つけて行ってください
Re: No title
Carlos様

行くとすれば急がないと、あと半月もないんですよね。

きっと変わっているのだろうと思うと迷います。
Re: オクテの私は
rockin'様

いまだにいろんなお店を知っていて私を連れて行ってくれる大事な友達です。

主婦のはずなのに不思議です。
Re: No title
ヨッシィー様

乏しい小遣いでよくキッサテン通いができたものだと思います。

懐かしいなあ。

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