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くぎにの話。

イカナゴの釘煮の季節。

近頃は全国的な知名度も上がっているようだが、もともとは関西でも一部地域の郷土料理である。

私は釘煮を作らない地域に育ったため、作り方はおろか、煮る前のイカナゴを見たこともない。

それでもこの時期になると食卓に上るのは、かならず誰かしらが下さるからだ。

イカナゴの釘煮のもっとも顕著な特徴は、調理法でも、材料でも、味でもない。その流通方法である。

とにかく、作った人がやたらと周囲に配る

採れすぎた野菜をお裾分けする、というのはよくあるが、イカナゴをくれる人は自分で獲ってくるわけではない。

市場に足を運び、安からぬお値段で買うのである。

買ったものに、さらに調味料を加え、腕によりをかけて、出来上がったものを配る。

家計の負担も相当だろうに、不思議な習慣だと思う。

幼馴染のユキちゃんは、シュートシュートメと同居。嫁ぎ先は、主婦が競って釘煮を作る地域であった。

気楽に遊びに出るというわけにもいかず、たまにシュートメがいない時間を狙って電話してくると

あの、釘煮ババアが!

と、よく愚痴を聞かされた。

毎年毎年、10キロを超すイカナゴを仕入れては、専用のどでかい鍋に、それでなければ、という選りすぐりの調味料をどぼどぼ入れて、シュートメが作る釘煮。

家じゅうにたちこめる醤油の香りも、ユキちゃんにとっては忌々しいものだったに違いない。

時は流れて、私たちも、もはや電話口で慰め合った若嫁御ではない。

ユキちゃんから届いた釘煮を、炊き立てのご飯にのせながら、フフフと笑う。

立派な釘煮ババアになったね、ユキちゃん。

いかなごのおや
(釘煮にならずに海にいるとこういうサカナになるらしい)



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ごきんじょ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2018/03/19 11:30
コメント
こんばんは
尾道在住中はご近所さんに習って 毎年作っておりました
大鍋にいっぱい
こちらに帰って 魚屋さんに聞いたら
凄い高い値段なんです
や~~めた
尾道では たくさん作って 配るんですよ
私のくぎ煮を食べてみてください
よそさんのも 飛んできます
こちらでは 一方通行 や~~めた
No title
あはは、、、今日はお互い、釘煮で盛り上がりましたね~。

お店では、(調味した煮汁)を売っているとか?
鍋も貸してくれるお店も有るとか聞きましたよ。。
これはもう立派な(お祭り)ですよね。
最近獲れなくて「新子」って言うのかな、、、小さいのが無いそうですよ。
私の町のスーパーで売っているのは(佃煮)で、かなり大きいです。
口に入れると、モゴモゴとほっぺを突いて痛いのよね。
No title
釘煮地方より遠く離れた地に居りますが、イカナゴの釘煮、存じております。
・・・というのも、ご近所サンの実家が関西の釘煮を作る地方だとかで、毎年この時期になるとお裾分けをいただいていました。
買う手間、作る手間の他に送料をかけてまでのお裾分け。
恐るべし釘煮ババア!です(^^;)

ご近所サンが引っ越してしまい、今では釘煮をいただく先がなくなってしまいました。
また食べたくなりました(>_<)
 
No title
釘煮ですか~どんなもんでしょう?
小女子佃煮は知っておりますが、あんなもんなんでしょうか?
暖かいご飯にのせて食べるとお美味しいですが・・・
まだ
食べたことがないんです。
イカナゴの釘煮を。
美味しいんでしょうね。

配りまくる釘煮。
釘煮コミューン?

配る方と配れる方がかぶることはないのでしょうか?
確かに…
年末の黒豆のように、確かに関西圏ではやり取りが多いみたいですね。関西の友達が1キロ3500円もするのだと嘆いているのをSNSで見ました。
でも単位が「キロ」ってとこが。

Re: こんばんは
ヒロちゃん7様

尾道でも作るんですか。兵庫県のものかと思っていました。

瀬戸内の魚ですものね。
Re: No title
アイハート様

ホントですね。

友だちも新子が高いとこぼしていました。でも買うんですよね。
Re: No title
きと様

友だちのお姑さんも全国発送なさっていたそうです。

すごいエネルギーですよね。
Re: No title
Carlos様

だいたいご想像されたようなものだと思います。

私は違いのわからない女で、本場の人には叱られそうですが。
Re: まだ
rockin'様

作る人同士の交換もあるらしいですよ。

おうちによって味が違うとか。

Re: 確かに…
まこ様

そのキロ3千円をヘーキで10キロ買うところがまたすごいですよね。

何匹居るんだろうとか考えちゃダメなんだろうなー。

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