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ワタシノ本。

ワタシ私と頭を悩ましていたためか(→ わたしの話。)、この本のことを思い出した。

たまごとわたし
(「卵と私」 マクドナルド著 晶文社)

これは1940年代のアメリカのベストセラー。

水道もガスも電気もない僻地で、未経験の田舎暮らしに奮闘する若妻時代を描く「卵と私」

養鶏場経営に失敗、離婚して子連れで実家に戻った著者が、大恐慌のアメリカで職を転々とする「仕事と私」

安定した職を得るや、同僚から結核に感染、療養所生活になる「病気と私」

戦時下の住宅難で再婚相手との新居探しに右往左往する「暮らしと私」の、4冊シリーズである。

…と、あらすじだけでは悲惨で苦しい体験記のようだが、けっしてそんなではない。

鋭い観察力を備えた著者の言葉はユーモラス。大変な状況でもメソメソ感傷的にならず、サッパリと客観的で、ドライなのだ。

初めて読んだ30代の頃は、思わず声を立てて笑った記憶がある。

大好きな本だけど、そういえばしばらく読んでいない。久しぶりにページをめくってみた。

やっぱりよく書けているし、面白い。でも、昔のようには笑えなかった。

若い頃は主人公ベティーを、自分に重ねていた。

彼女の失敗を自分のドジのように感じ、トホホと失笑した。

今はそれができない。

彼女が結婚したのは18歳、離婚が23歳、結核療養所に入ったのが30歳である。

そんな若い子が、世の荒波にもまれ、次々と辛い目に遭って、それでも笑っていたのかと思うと、かわいそうでかわいそうで、たまらない。

私はベティーの母親になってしまったのだ。

もう笑える本ではなくなったけれど、違う意味で大切に思えて、扉のある本棚にしまった。



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ブックガイド | コメント(12) | トラックバック(0) | 2018/03/23 11:30
コメント
ああ、わかる気がします
大草原の小さな家のローラの次が、赤毛のアンとか、そのあたりで…少女時代が終わったあたりで、このあたりを読んで、大人になったらこうなんだろうな…と思っていたこの後に来るのが、「村の生活」のリードなんだなあ、と思います。
ただ、人が生活している本を読むのがなんとなくいいんですよね。
私も再読しようかな。
なるほど
水平視線から垂直視線(上からではない)へと変化したわけですね。

彼女のこと、全く知りませんでした。
ベティさん、“specialized in humorous autobiographical tales” を書く作家と紹介されていました。

ぢょん でんばあ様は本の権威者だ!
すごい。
こんばんは
私も読みたくなりました
図書館で予約します
No title
昔読んだ本を大切にとっておられたんですね。
若いころ夢中で読んだんでしょうね。
今とは違う気持ちで・・・
No title
私も読みたいです。図書館で探してみよう♪

子供向けの本ですが、『すえっこはルーファス』は昔に読んだ本ですが、またシリーズを借りて読んでます。手元に置いておきたい本です。
読み直してみるとまた違うあじわいがあって、子供の純心さに胸を打たれます。

No title
立場が変わって目線が変わるって
歳月によって違ってきますから。
懐かしい歌だってそうですよね。
その本、読んでみたくなりました。
Re: ああ、わかる気がします
まこ様

ミスリードも好きでよく読みました。

1人暮らしの今の気持ちにけっこうフィットするかもしれませんね。

うちにはプリングルさんは来てくれませんが。
Re: こんばんは
ヒロちゃん7様

どうぞどうぞ!

生活の描写も懐かしくて、お勧めですよ。
Re: No title
Carlos様

高価な本でも読み終われば割に気楽に処分できる方ですが、この本は例外のようですね。

これからも棚に残っていくと思います。
Re: No title
wanco様

「百まいのきもの」の人ですね!

最近本屋で見たら「百まいのドレス」に変わっていて、なんだかなあでした。
Re: No title
布遊子様

アニメの「ハイジ」でも、大人になってみると悪役だったロッテンマイヤーさんやデーテおばさんの気持ちが分かって、逆にアルムおんじってどうなの?みたいな気持ちになったりしますね。

一方的に描かず、立場が変われば別の視点で見られる作品がいい作品なのかもしれません。
Re: なるほど
rockin'様

返信順が狂ってすみません。

「卵と私」はクローデット コルベール主演で映画にもなっているんですよ。

こちらは見たことがありません。

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