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てーぷの話。

通販の箱を止めてあったテープが、気持ちよく一気に剥がれた。

手に残ったテープを見れば、接着面が残っていて、まだ貼ることができそうだ。

ちょうど送る荷物とか、そこらにあればいいのにな、などと、再利用をつい考える。

母方の祖父の家にはホリゴタツがあった。

夏は布団無しのヤグラだけで、足を突っ込むとひんやりして気持ちいいのだ。

祖父はいつも、床を背にした定位置にいて、禿げ頭に畳んだ手拭をのせ、反故紙をコヨリで綴じた手製の帳面に、心覚えを書きつけている。

コタツの天板は普通の木の板だが、フチが不自然にふくらんでおり、触ると凸凹していた。

それは、もともとの板の縁ではなく、この禿げたジイサンが作り上げたものなのである。

例えばお中元に缶入りのクッキーが来る。

いずみやのくっきー
(昔はどこの家にも必ずあったこのカン)

祖父は止めてある粘着テープをぐるっと剥がすと、フタを開ける…のは後回しに、まずテープを丹念にコタツ板の周囲に巻き付けるのだ。

なぜそんなことをするのか、尋ねたことは無い。

何か封をすることがあったら、あとではがして使おう、という考えではなかったか。

しかし、祖父が何かテープで止めているところは見たことがない。巻きつけたテープは徐々に劣化し、ゴムのように黄色くなっていった。

祖父は亡く、祖母も世を去り、古家は毀たれた。

あのコタツ板もとうに土になったことだろうが、祖父の貧乏性は、私の中に根強く生きている。



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むかしむかし | コメント(8) | トラックバック(0) | 2018/07/15 11:30
コメント
この缶
写真の缶。すっごーく見覚えがあります!硯とかふでとかが入っていました。祝儀袋の名前書くときに出てくる缶でした。
何の缶だったのか、どんなクッキーとかおせんべいだったかは全く覚えがないです。
No title
昔の人は、いろんなものをとっておいたものですね。
我が家の母も、いろんな箱がいっぱい積んでありました。
何かを入れる時に・・・というんですが一向に減りませんでした。
結局山は増えるばかり・・・
なんかおじいさんの気持ちわかります。
No title
キレイに剥がせたテープは、コロコロみたいにゴミを取るのに再利用?してから捨てます。キレイに剝がれただけでも嬉しかったりします。

クッキーの缶とか、おかきの缶は使います!というより、使っていなくても置いてます。
消耗品を
もう一度使う。
これは難しいことです。
保管が難しいですし、劣化は早いし。
でも、心情は理解出来ます。
皮膚感覚で。

>古家は毀たれた
初めて見る表現です。
「こぼたれた」?
Re: この缶
まこ様

うちでは母の刺繍糸の入れ物になってました。

お家によって入ってるものが違うんでしょうね。集めてみたら面白いかも。
Re: No title
Carlos様

うちの母もカンを溜めるので困っています。

あんまりな時は、要るからちょうだい、ともらってきて、私が分別回収に出しています。
Re: No title
wanco様

うちの父は生前、はがしたシップで絨毯のホコリを取っていました。

目撃した妹が「ギャー、やめて!」と叫びましたが、父は何故ダメなのかイマイチぴんと来なかったようです。
Re: 消耗品を
rockin'様

こぼつ。

言いませんか?たしかに自分以外の人が使うのを聞かないな。

家を壊すときだけ使うような気がします。

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