てーぷの話。
通販の箱を止めてあったテープが、気持ちよく一気に剥がれた。
手に残ったテープを見れば、接着面が残っていて、まだ貼ることができそうだ。
ちょうど送る荷物とか、そこらにあればいいのにな、などと、再利用をつい考える。
母方の祖父の家にはホリゴタツがあった。
夏は布団無しのヤグラだけで、足を突っ込むとひんやりして気持ちいいのだ。
祖父はいつも、床を背にした定位置にいて、禿げ頭に畳んだ手拭をのせ、反故紙をコヨリで綴じた手製の帳面に、心覚えを書きつけている。
コタツの天板は普通の木の板だが、フチが不自然にふくらんでおり、触ると凸凹していた。
それは、もともとの板の縁ではなく、この禿げたジイサンが作り上げたものなのである。
例えばお中元に缶入りのクッキーが来る。

(昔はどこの家にも必ずあったこのカン)
祖父は止めてある粘着テープをぐるっと剥がすと、フタを開ける…のは後回しに、まずテープを丹念にコタツ板の周囲に巻き付けるのだ。
なぜそんなことをするのか、尋ねたことは無い。
何か封をすることがあったら、あとではがして使おう、という考えではなかったか。
しかし、祖父が何かテープで止めているところは見たことがない。巻きつけたテープは徐々に劣化し、ゴムのように黄色くなっていった。
祖父は亡く、祖母も世を去り、古家は毀たれた。
あのコタツ板もとうに土になったことだろうが、祖父の貧乏性は、私の中に根強く生きている。

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手に残ったテープを見れば、接着面が残っていて、まだ貼ることができそうだ。
ちょうど送る荷物とか、そこらにあればいいのにな、などと、再利用をつい考える。
母方の祖父の家にはホリゴタツがあった。
夏は布団無しのヤグラだけで、足を突っ込むとひんやりして気持ちいいのだ。
祖父はいつも、床を背にした定位置にいて、禿げ頭に畳んだ手拭をのせ、反故紙をコヨリで綴じた手製の帳面に、心覚えを書きつけている。
コタツの天板は普通の木の板だが、フチが不自然にふくらんでおり、触ると凸凹していた。
それは、もともとの板の縁ではなく、この禿げたジイサンが作り上げたものなのである。
例えばお中元に缶入りのクッキーが来る。

(昔はどこの家にも必ずあったこのカン)
祖父は止めてある粘着テープをぐるっと剥がすと、フタを開ける…のは後回しに、まずテープを丹念にコタツ板の周囲に巻き付けるのだ。
なぜそんなことをするのか、尋ねたことは無い。
何か封をすることがあったら、あとではがして使おう、という考えではなかったか。
しかし、祖父が何かテープで止めているところは見たことがない。巻きつけたテープは徐々に劣化し、ゴムのように黄色くなっていった。
祖父は亡く、祖母も世を去り、古家は毀たれた。
あのコタツ板もとうに土になったことだろうが、祖父の貧乏性は、私の中に根強く生きている。

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何の缶だったのか、どんなクッキーとかおせんべいだったかは全く覚えがないです。
我が家の母も、いろんな箱がいっぱい積んでありました。
何かを入れる時に・・・というんですが一向に減りませんでした。
結局山は増えるばかり・・・
なんかおじいさんの気持ちわかります。
クッキーの缶とか、おかきの缶は使います!というより、使っていなくても置いてます。
これは難しいことです。
保管が難しいですし、劣化は早いし。
でも、心情は理解出来ます。
皮膚感覚で。
>古家は毀たれた
初めて見る表現です。
「こぼたれた」?
うちでは母の刺繍糸の入れ物になってました。
お家によって入ってるものが違うんでしょうね。集めてみたら面白いかも。
うちの母もカンを溜めるので困っています。
あんまりな時は、要るからちょうだい、ともらってきて、私が分別回収に出しています。
うちの父は生前、はがしたシップで絨毯のホコリを取っていました。
目撃した妹が「ギャー、やめて!」と叫びましたが、父は何故ダメなのかイマイチぴんと来なかったようです。
こぼつ。
言いませんか?たしかに自分以外の人が使うのを聞かないな。
家を壊すときだけ使うような気がします。