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なんどめ話。

今日は実家。

まいど―!と勝手口を入り、茶の間のいつもの位置に。生前は父がいた場所に、いつの間にか私が座るようになった。

ここのうちも、1日中テレビが点いている。

色のいいお茶が出て、画面を見るともなく眺めていると

あそさんふんか

阿蘇山噴火のニュースが流れた。

立ち上る噴煙の映像に目を奪われていたら、

…ワタシら行けなかったもんねエ 阿蘇山…

柿の種をつまみつつ、おばーちゃんが言い出した。

遡ること70年。

おばーちゃんの学校では、修学旅行の行き先は九州であった。

雄大な阿蘇の外輪山、草千里の眺望を楽しみにしていた、女学生たち。しかし、阿蘇山はコースから外されてしまったのである。

なぜならば、前年度の学生が阿蘇を訪れたその時、とつぜんの噴火が起こったからだ。

運悪く、旅行中の1人の少女を噴石が直撃し、亡くなってしまった。

だからうちの高校は 阿蘇には行かなかったの

恐ろしいね~! そんなことあるんだね~!

アイヅチを打つのは何度めだろうか。

そう、この話は初めてではない。

火山のニュースや、修学旅行の話題が出るたび、何度も、何十度も、聞いた話なのである。

…阿蘇山 行きたかったわ~

切り出した瞬間から、全貌が分かっている話を、しかし私は遮ることはしない。

この先も、さまざまな機会をとらえて、母はこの話をするだろう。

そのたびに私は、初めて聞いたような顔をして、怖いね、恐ろしいねとアイヅチを打つだろう。

あと何回、この話が聞けるだろうと思いながら。



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ごかぞく | コメント(10) | トラックバック(0) | 2021/10/23 11:30
コメント
うちの母も阿蘇に修学旅行に行ったらしく、今回の帰省中母とその話しになりました。

私と数年前に九州旅行に行ったのですが、その時は別府まで。
車中で出会った母と同年代のおばさまたちとそんな話しに。
何十年も前に泊まった杖立温泉なんて地名が出てきておもしろかった。

でも先日の話しでは、私と阿蘇に行ったことになっていて、私と火口まで見に行ったとか行かないとか、記憶がごっちゃになっているようです。

まあそんなこともありますが、きさんじに
暮らしていてくれて、ほっとしました。
No title
修学旅行で亡くなるって衝撃的なニュースで、それで自分が行けなかった阿蘇の話するよね~それは覚えてるし語りたいわ~
昔話って、繰り返し語られることが多いですね。
何万回も聞いたわ~とか遮ってしまうとかしない、ぢょんさんは優しい娘さんですね。
お母様が居なくなっても、阿蘇の噴火のニュースを見たら、ぢょんさんがムスメさんやムスコさんに語ってたりして。
No title
思わずこの歌を(樋口了一 / 手紙 ~親愛なる子供たちへ~)を思い出していました。

ぢょん子さんの優しさが沁みます。
No title
うちの母86歳がその時阿蘇山、修学旅行中でした。駅で待っていた親の顔が今でも忘れられないと言ってます。
No title
何回でも聞いてあげてください。
 
♪ 何度も同じ話繰り返す 独り言みたいに 小さな声で・・・ ♪ 

おばあちゃんの少女時代の苦い思い出なんでしょう。
Re: タイトルなし
うさきち様

阿蘇はその頃人気の修学旅行先だったのかもしれませんね。

お母様は、楽しい思い出の中に娘さんが居てほしいとお思いになったのでは。
Re: No title
レツゴ―一匹様

母も80を越えてとみに繰り返しが増えてきました。

繰り返しをやめさせたらしゃべることがないかも(笑)。
Re: No title
アイハート様

ご紹介ありがとうございます。初めて聞きました!

忘れずにいたい歌詞だと思いました。

Re: No title
artpants様

ええっ!そうなんですか!

この話は母からしか聞いたことがなかったので、じつは内心ホンマかいなと思っていたのです。ゴメンお母さん。
Re: No title
Carlos様

いつも母に優しい言葉をありがとうございます。

心がけたいと思います。

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