ノラクロ本。
もうずいぶん前、東京に住んでいたころ、同窓会に出席する父が、1人で泊まりに来た。
せっかくだから歓待したいと考えたが、父が何を喜ぶのか、全然見当がつかない。
食べ物も、音楽も、映画も、何がいいとも言わず、怒りもせず大笑いもせず、黙ーっている父。
アレがステキ、コレがカワイイ、のべつ言う母と違い、父に関する情報は決定的に不足していた。
乏しい記憶を探り、父の書棚を思い浮かべた時、ふと1冊の文庫本を思い出した。

ビジネス書や人生訓の中に交じって、とぼけた顔を見せていた小さなのらくろ。
昭和ヒトケタの父は、ふだんマンガを読んだりしなかったから、見つけた時は不思議だった。
そして父がやってきた日。
明日ここに行ってみない?
貰っておいたパンフレット(→田河水泡のらくろ館)を見せると、オヤ、といった表情で
…ふむ…いいな…
それだけ言った。
翌日は、朝から都バスを乗り継いで出かけた。
父は黙ったまま、けれども十分に時間をかけて、こじんまりした館内を見て回った。
楽しかったんだかつまらなかったんだか、ちっともわからない。
後日、帰宅した父から礼状が届いた。まるで文例集みたいなかたくるしい文言の間に
懐かしき思い出の一時を過ごし
とあるのが、もしかしたら感想だった、かもしれない。
もうすぐ父の七回忌である。

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せっかくだから歓待したいと考えたが、父が何を喜ぶのか、全然見当がつかない。
食べ物も、音楽も、映画も、何がいいとも言わず、怒りもせず大笑いもせず、黙ーっている父。
アレがステキ、コレがカワイイ、のべつ言う母と違い、父に関する情報は決定的に不足していた。
乏しい記憶を探り、父の書棚を思い浮かべた時、ふと1冊の文庫本を思い出した。

ビジネス書や人生訓の中に交じって、とぼけた顔を見せていた小さなのらくろ。
昭和ヒトケタの父は、ふだんマンガを読んだりしなかったから、見つけた時は不思議だった。
そして父がやってきた日。
明日ここに行ってみない?
貰っておいたパンフレット(→田河水泡のらくろ館)を見せると、オヤ、といった表情で
…ふむ…いいな…
それだけ言った。
翌日は、朝から都バスを乗り継いで出かけた。
父は黙ったまま、けれども十分に時間をかけて、こじんまりした館内を見て回った。
楽しかったんだかつまらなかったんだか、ちっともわからない。
後日、帰宅した父から礼状が届いた。まるで文例集みたいなかたくるしい文言の間に
懐かしき思い出の一時を過ごし
とあるのが、もしかしたら感想だった、かもしれない。
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7回忌、お父さんの思い出をよくお母さんからお聞きすることですね。
嬉しかったに決まってますよ。
わたしは孝行出来なかったので、羨ましいエピソードです。
今だと政治的配慮とかで問題になるような表現も多かったんですが、小学生でしたから、結構楽しく読んじゃいました。
最初は四つん這いののらくろが、いつの間にか二足歩行になるんですよね。「ぎゅうのかんづめ」がごちそうとして書いてあって、どんな缶詰だろう…と思ったのを覚えています。
親孝行…できたのでしょうか。
だといいのですが。
怖くはないけどとにかく肝心なことはぜんぜん言わない父でした。
母も知らないことがたくさんあると思います。
ありがとうございます。
そう言っていただけると心が慰まります。
そういえば父がいきなり零戦のプラモデルを作ったことがありました。
不器用な人だったのでその時も驚きました。
このシリーズの文庫本は古本屋でもよく見るので、どうも当時かなり数が出たようですね。
牛の缶詰かあ。しぐれ煮でしょうね、多分。
「いい娘を持った」とつくづく思われたことでしょう。
どうなんでしょうね。何にも言わないで、亡くなっちゃいましたから。
戦後、「丸」に連載された続編のほかに、野良犬時代から描きなおしたものもありました。このへんが全部見つからなかったのが残念でした。
素敵なお形見ですね。
読み返されたらまたご感想お聞かせくださいね。