fc2ブログ

ちょうぜつ話。

行きたかった展覧会がもうすぐ終わるので、慌てて見に行く。

ちょうぜつぎこう

木彫、陶磁、金工など、近代以降の日本の工芸の粋を集めた展示である。

かつて万国博覧会に出展された日本の工芸品は、ひろく自然の事物に題を取り、それらを繊細に再現する技術で、西欧人を驚かせたという…

と書くともっともらしいが、この展覧会の眼目は

超絶そっくり!

ということであろう。

果物、虫、花、鳥、野菜…、誰しも目にしたことのあるものが、金属や木材、陶土という硬い素材を用い、本物と見紛う精巧さで再現されている。

1つとして、テキトーに作りましたというものはない。

どれどれ本物と違うところはないかしら、などと粗探しする、俗物の視線を跳ね返さんばかりの、とんでもない技術と努力の集成である。

展示の間を縫って歩きながら、奇妙な感覚に襲われた。

この牙彫のキュウリが、もし本物だったとしても、誰にも分らない。

この大蛇が、もし金属じゃなく本物の骨格標本だとしても、誰にも分らない。

もしかして私は、ケースの中に納まった、実物のトマトを、カマキリを、干し柿を、タンポポを、拝見しているのじゃないのだろうか。

手にとれない状況で、こういう作品を観る意味とは何だろうか。

とんでもなくソックリなものほど、作品としてのありがたみを失うという、不思議な現象がそこに起きていた。

記念にと、エハガキを手に取ったが、写真は実物以上にまるでホンモノで

バナナの写真買ってもなあ…

買わずに棚に戻した。

ちょうぜつぎこう2
(「パイナップル、バナナ」牙彫 安藤緑山)

あべのハルカス美術館「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」展は、14日まで。→驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング

スポンサーサイト



もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/04/12 11:30
コメント
No title
本物と見間違うような作品ですか~

本物をケースに入れて展示会でもやってみますか。
お金はとれるかな?
No title
すごく面白そうな展覧会なのに、なんか残念ですね。
本物そっくりだけど『本物じゃない』何かを、
感じさせてほしいですね。

こるは
難しい問題です。

意外な材料で予想外のものを作る場合、材料がすぐに判別できてこそ驚きがあるんです。
そうじゃないと単なる “模写” になってしまいます。
これじゃ面白くない。

面白いのは陶器で作った本とか。
勿論陶器だってすぐに分からないといけません。
Re: No title
Carlos様

バナナとカブトムシの展覧会ですか~。

それはそれで見ごたえがある気もしますね。
Re: No title
pil様

昔、高村光太郎の木彫のセミを見たことがあります。

手の中に木切れを握って削った姿が見えるような作品でした。

ああいうのが好みですね。
Re: こるは
rockin'様

私は本の形がしたものをすぐ買ってしまう癖があります。

ブック型の缶に入ったチョコレートとかね。

陶器の本もいいですね。「あるかしら書店」みたいです。

管理者のみに表示