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ばんかい話。

駅前の用件が意外に早く済んだ。夏の夕方はまだ明るくて、帰るのが惜しい。

なんとなく頭に手をやったら、伸びた髪が当たって、そうだ、髪切って行こう、と思った。

予約はないけど、いつもの美容院へ。

ソファでヘアカタログを見ていたら、奥から若々しいさざめきが聞こえる。

やがてアップヘアに浴衣のお嬢さんが2人、下駄の足元を気にしながら、表に出て行った。

ガラスのドアを押さえて、ニコニコ見送った美容師さんが

天神祭、花火ですって… いいですねえ

そうかあ、そんな時季なんだ。花火に浴衣、若いなあ、いいなあ。

そういえば、イベントのためにオシャレする、なんて、ずいぶん長いことしていない。

暑いから、いつもより短めに、とだけ伝えて、テルテルボーズのようにケープを巻かれ、ふだんは読まない女性誌を手に取った。

雑誌を見ていれば、あれこれと話しかけられることはない。

耳のそば、シャキシャキ鳴るハサミのむこうに、隣の席のマダムの声が聞こえた。

…なのよ~ もう5年ぶりかしら~

へー そうですかー 同窓会スかー

担当の美容師さんも、パーマのカーラーをゴムで止めながら、のんびりと返事してやっている。

このトシになるとね~ もう次があるか、ないか…

そんなことないスよー ぜんぜんお元気じゃないスか

だから キレイにして行かないと…

ははー

まだ若い男性の美容師さんは、いまいちピンと来てないふうだ。

あの人、ずいぶん老けたわね、なんて思われたら、もう挽回するチャンスが無いからね!

あ、なーる!

黙って聞きながら、私もなるほどなあ、と思っていた。

毎週会ってる相手なら、先週は疲れてて、とか、言い訳ができる。

でも、めったに会わない人には、その1回が、その後数年の印象になるのだ。

パラパラと音がして目をやると、激しい夕立ちが窓を打っている。浴衣のお嬢さんたちは、大丈夫だろうか。

てんじんまつり2019



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ごきんじょ | コメント(4) | トラックバック(0) | 2019/07/26 11:30
コメント
No title
挽回するチャンスがない・・・そうか同窓会ってそうですよね。昔のイメージと違うと、同窓会の久しぶりの時に残念な感じだったら、ずっとそう思われますしね。田舎出身の祖母は、私が子供の頃、ホテルでの同窓会に行く前は、一カ月くらい前から、スーツを誂てました。大阪に出てきて、みずぼらしい暮らしをしていると思われたくなかったんですね。

天神祭には、近くの会社で勤務してたので、着付けの免許持ってる先輩が、会社に浴衣持ってきたら、着付けてあげるというので、
ロッカールームで着つけてもらって、彼と天神祭の花火デートに繰り出しました。
足が鼻緒にかまれて(擦れて)も、人混みで花火が見れなかったけど、それでも楽しかったという想い出しかありません。

今なら、人混みで暑いし、嫌や・・・ってなりますよね。若さって、しんどいとか関係なかったんですね。
仰ることは
よーく分かります。
初対面もしくは滅多に会わない人。
その時の印象が固定化され継続されます。
気をつけなければ。

スカートをはいて下さい。
Re: No title
レツゴ―一匹様

わー、ステキな思い出!

そうそう、若い時は暑いとか混んでるとか、なんで苦にならなかったんでしょうね。今となっては謎でしかない。
Re: 仰ることは
rockin'様

暑いうちは家の中ではワンピースです。

門外不出でございます。

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