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てっちり話。

いよいよ鍋ものが恋しい季節。

このご時世、忘年会は無いし、あったとしても鍋は無理だろう。

好きな人たちと、鍋をつつきあえる日はまた来るのだろうか、などと考えていたら、昔食べた鍋のことを思い出した。

それはもう30年も前、若いOLだったころ。

職場では新人から中堅になり、責任も増すのに、なぜかどんどんやりがいを感じなくなっていた。

仕事の忙しさにかまけて、恋愛もうまくいかない。

ビル風が自分にだけ冷たい気がする、やさぐれた冬のある日、職場に電話が入った。

おい メシでも食わないか 話もあるし…

父からだ。

そういえば、しばらく実家にも帰れていない。いいよ、と答えて、待ち合わせを決めた。

久しぶりの父は、見覚えのあるコートを着て、私の姿を認めると、よう、と手を挙げ、私を待たずにスタスタ歩きだす。

待ってよう!

どうやら行先は決まっているらしい。

洗いざらしの紺の暖簾を上げて入っていったのは、小体なふぐ料理の店だった。

私には何も聞かず、てっちりのコースを注文し

こういうもんを食わしてやるのも 親の役目だからな

父はぼそりと言った。

父の話が何だったか、もう覚えていないが、ピリッと一味の効いたポン酢で食べる、初めてのふぐは美味しかった。

ゼラチン質の皮のところを噛みながら、何の脈絡もなく、寿退職なんて止そう、と思ったことは、なんとなく記憶にある。

親の役目、か。

私は親の役目を果たせているだろうか。

ムスメにも食べさせてやりたいな、と調べてみたが、父と鍋を囲んだミナミのあのフグ料理屋は、いつの間に閉店したのか、見つからなかった。

てっちり



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ごかぞく | コメント(8) | トラックバック(0) | 2020/11/29 11:30
コメント
(=゚ω゚)ノぃょぅ
いいお父さんですね。
きっと、ぢょんさんの元気がナイナイテレパシーをキャッチしたのでしょう。
思い出のお店がなくなっちゃうのは切ないですよね。時代の流れだから仕方ないけど。
関西ではちょっとごちそうっていうと
てっちり、てっさでしたね。

私も昔働いていたときに上司にごちそうしてもらったなぁ。(経費かもしれないけど)

宗右衛門町辺りの店でした。
今もあるのかしらん。
No title
大阪の(ずぼらや)が無くなりましたね~。
お財布に優しいお店だったけど。。

父が勤務地へ会いに来て、先輩と一緒にお昼にランチをご馳走して貰ったなあ。。
『へえ~、キスのフライに(タルタルソース)掛けて食べるのか・・』と思ったこと、今思い出しました。
父親話をありがとう。
No title
お父さんとの懐かしい思い出ですね。
てっちりね~ここ何年も食べてませんね~
おそらくこれからもないでしょう。
お子さんたちも立派に成長されしっかり親の役目は
果たされてますよ。
お子様たちとてっちり鍋を食べる日が来るといいですね。
Re: (=゚ω゚)ノぃょぅ
焼き鳥おうじ様

亡くなってみるといいことばかり思い出すのかもしれませんね。

てっちり食べたくなりました。
Re: タイトルなし
うさきち様

母から名前の出るふぐ料理屋さんはもう1店あるのですが、ぐるなびを見たら1人前コースが2万円とか…。

ちょっと娘を連れて、ってわけには行かなさそうです。
Re: No title
アイハート様

づぼらやはニュースになっていましたね。

キスのフライタルタルソース、おしゃれなお店だったんでしょう。懐かしい思い出ですね。
Re: No title
Carlos様

ありがとうございます。

息子の学費も今年で終わりですし、てっちり貯金でも始めますか(笑)。

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