てっちり話。
いよいよ鍋ものが恋しい季節。
このご時世、忘年会は無いし、あったとしても鍋は無理だろう。
好きな人たちと、鍋をつつきあえる日はまた来るのだろうか、などと考えていたら、昔食べた鍋のことを思い出した。
それはもう30年も前、若いOLだったころ。
職場では新人から中堅になり、責任も増すのに、なぜかどんどんやりがいを感じなくなっていた。
仕事の忙しさにかまけて、恋愛もうまくいかない。
ビル風が自分にだけ冷たい気がする、やさぐれた冬のある日、職場に電話が入った。
おい メシでも食わないか 話もあるし…
父からだ。
そういえば、しばらく実家にも帰れていない。いいよ、と答えて、待ち合わせを決めた。
久しぶりの父は、見覚えのあるコートを着て、私の姿を認めると、よう、と手を挙げ、私を待たずにスタスタ歩きだす。
待ってよう!
どうやら行先は決まっているらしい。
洗いざらしの紺の暖簾を上げて入っていったのは、小体なふぐ料理の店だった。
私には何も聞かず、てっちりのコースを注文し
こういうもんを食わしてやるのも 親の役目だからな
父はぼそりと言った。
父の話が何だったか、もう覚えていないが、ピリッと一味の効いたポン酢で食べる、初めてのふぐは美味しかった。
ゼラチン質の皮のところを噛みながら、何の脈絡もなく、寿退職なんて止そう、と思ったことは、なんとなく記憶にある。
親の役目、か。
私は親の役目を果たせているだろうか。
ムスメにも食べさせてやりたいな、と調べてみたが、父と鍋を囲んだミナミのあのフグ料理屋は、いつの間に閉店したのか、見つからなかった。


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このご時世、忘年会は無いし、あったとしても鍋は無理だろう。
好きな人たちと、鍋をつつきあえる日はまた来るのだろうか、などと考えていたら、昔食べた鍋のことを思い出した。
それはもう30年も前、若いOLだったころ。
職場では新人から中堅になり、責任も増すのに、なぜかどんどんやりがいを感じなくなっていた。
仕事の忙しさにかまけて、恋愛もうまくいかない。
ビル風が自分にだけ冷たい気がする、やさぐれた冬のある日、職場に電話が入った。
おい メシでも食わないか 話もあるし…
父からだ。
そういえば、しばらく実家にも帰れていない。いいよ、と答えて、待ち合わせを決めた。
久しぶりの父は、見覚えのあるコートを着て、私の姿を認めると、よう、と手を挙げ、私を待たずにスタスタ歩きだす。
待ってよう!
どうやら行先は決まっているらしい。
洗いざらしの紺の暖簾を上げて入っていったのは、小体なふぐ料理の店だった。
私には何も聞かず、てっちりのコースを注文し
こういうもんを食わしてやるのも 親の役目だからな
父はぼそりと言った。
父の話が何だったか、もう覚えていないが、ピリッと一味の効いたポン酢で食べる、初めてのふぐは美味しかった。
ゼラチン質の皮のところを噛みながら、何の脈絡もなく、寿退職なんて止そう、と思ったことは、なんとなく記憶にある。
親の役目、か。
私は親の役目を果たせているだろうか。
ムスメにも食べさせてやりたいな、と調べてみたが、父と鍋を囲んだミナミのあのフグ料理屋は、いつの間に閉店したのか、見つからなかった。


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きっと、ぢょんさんの元気がナイナイテレパシーをキャッチしたのでしょう。
思い出のお店がなくなっちゃうのは切ないですよね。時代の流れだから仕方ないけど。
てっちり、てっさでしたね。
私も昔働いていたときに上司にごちそうしてもらったなぁ。(経費かもしれないけど)
宗右衛門町辺りの店でした。
今もあるのかしらん。
お財布に優しいお店だったけど。。
父が勤務地へ会いに来て、先輩と一緒にお昼にランチをご馳走して貰ったなあ。。
『へえ~、キスのフライに(タルタルソース)掛けて食べるのか・・』と思ったこと、今思い出しました。
父親話をありがとう。
てっちりね~ここ何年も食べてませんね~
おそらくこれからもないでしょう。
お子さんたちも立派に成長されしっかり親の役目は
果たされてますよ。
お子様たちとてっちり鍋を食べる日が来るといいですね。
亡くなってみるといいことばかり思い出すのかもしれませんね。
てっちり食べたくなりました。
母から名前の出るふぐ料理屋さんはもう1店あるのですが、ぐるなびを見たら1人前コースが2万円とか…。
ちょっと娘を連れて、ってわけには行かなさそうです。
づぼらやはニュースになっていましたね。
キスのフライタルタルソース、おしゃれなお店だったんでしょう。懐かしい思い出ですね。
ありがとうございます。
息子の学費も今年で終わりですし、てっちり貯金でも始めますか(笑)。