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ロンパリ本。

その本を見つけたのは13歳の時。

新刊書なんてほとんど買えない、立ち読み専門の中学生が、ふと手にとって夢中になり、なけなしの1300円を投じたのは「倫敦巴里」という、奇妙な本だった。

ろんどんぱり

戯作贋作と銘打った、不思議な文章と絵のかずかず。

川端康成の「雪国」を、他の作家が書いたらどうなるか。ハリウッドの映画監督が、イソップの「うさぎとかめ」を映画にしたら。

有名漫画家の作風をすっかり真似て、ほんとうに本人が描いたとしか思えないマンガ。

こんなことをする大人がいるんだ、と思うと、薄暗い将来がパッと楽しくなる気がした。

大事に持ち帰り茶の間で眺めていると、表紙に目を留めた父が

なんだ ロンパリって… ふざけた本だな…

何のことか分からず、聞き返すと、ちょっとイヤそうな顔で

片目はロンドン、片目はパリを見てる、 ということだ…

と、教えてくれた。つまりは斜視のことなのだ。

ご本人にとっては心ない差別語だが、無駄にスケールが大きくて、印象的な表現である。

誰かに叱られそうな、そういう言葉を書名に選ぶことも、著者の考え方を示している気がした。

和田誠、デザイナー、イラストレーター。

晩年の仕事であるブックデザインや、週刊誌の表紙イラストは好きではないが、この本は確かに私の一部を作ってくれた。

1977年初版は絶版であるが、未収録作を加えた「もう一度 倫敦巴里」が、2017年に発刊されている。



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ブックガイド | コメント(10) | トラックバック(0) | 2019/10/13 11:30
コメント
No title
子供のころからそんな本読んでいたんですか~
なかなかませた子供だったんですね。
No title
13才でこの本を手に取るなんてすごいですね。。
でも、よくよく考えると、、
今の「空想科学読本」の原型みたいな本が、昔人気がでていたっけ。。
ウルトラマンを題材に、もしもこうだったらとか・・とか
いった内容でした。
きっと、そのころ流行っていたのかもしれませんね。。
ロンパリか
子供の頃、よく聞きました。

丸谷才一が和田誠の絵を年寄りを若く見せる絵だとゆーことをカッコイイ言葉で表現していました。
その肝心のカッコイイ表現を忘れちまったゼ。
チっ。
歳は取りたくないもんだ。
『倫敦巴里』は未読ですが、
「雪国・またはノーベル賞をもらいましょう」には鮮烈な記憶があります。読んだのは大学生の頃。
ぢょん でんばー様は13歳で‼︎

「栴檀は二葉より芳し」と思いました。



ええー
ロンパリという言葉は知っていましたが、そういう出来方の言葉だったとは初めて知りました。
 私はこの和田さんは、講談社のマザーグースの挿絵が一番覚えがあります。
 この本、面白そうだなあ。絶版みたいだし図書館で探します。
Re: No title
Carlos様

父の本を勝手に読んだりしてましたし、読むものはおませだったかもしれませんね。
Re: No title
elsurerice様

13才は計算上で、ちょっとガセかも…。

初版まもなく買ってますし、中学生だったことは確かなんですけど、とりあえず15歳未満であったということでご容赦くださいませ。
Re: ロンパリか
rockin'様

あ、それ覚えてます。

たしか山藤章二の似顔絵と対比してて、和田は幼児化、山藤は老人化するという趣旨じゃなかったですか?なるほどと思いましたね。
Re: 『倫敦巴里』は未読ですが、
Westwing様

ああいうものを発表する場が、昔は雑誌だったんですね。「面白半分」とか「宝島」「ビックリハウス」とか。

今は…インスタかなあ。
Re: ええー
まこ様

有名人の顔ぶれはどうしても旬を過ぎてますのでその時代なりですけど、面白いですよ。

図書館にあるといいですね。

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