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ぱんふの話。

寒い朝のバス停。

ポケットに手を突っ込み、バスを待つ目の前に、ヒラヒラと風に動くもの。

ご自由にお取りください、の添書きの下に、宗教団体の薄い冊子が数冊、結び付けられている。

厳密にはルール違反なのだろうが、時々目にするのは、近くに信者があるのかもしれない。

誰かが1冊、ちぎり取ったあと。

何年も前、本当に苦しかった頃、私もこの冊子を取ったことがある。

夏だったか、冬だったか、それさえも定かではない。辛い日々は、夏でも寒い思い出になる。

そんな時、バスを待っていたら、表紙の文字に目をひかれた。

励ましでも、祈りでも、何でもよかった。

周囲に人影のないのを確かめ、結ばれた紐から冊子を取って、バスに乗り込んだ。

コソコソと隠すようにページをめくる。

ありふれた不運や苦悩。信仰を持って得た幸福。様々な境遇の、さまざまな人の言葉が並ぶ。

何を感じたのか、今となっては思い出せないが、その後も幾度か、その冊子を取っては車内で読み、こっそり駅で捨てた。

それで救われた、とは思わない。まるでヤジロベエのように、フラフラと頼りない時期だった。

今、このパンフレットに手を伸ばさずに済むことを、幸せに思おう。

定刻を少し遅れて、やってきたバスに乗り込む。

どりーむらんどまえ



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/11/22 11:30
コメント
No title
気持ちが不安定な時にす~と引き込まれて信者になるんですかね~
幸い私はそんな時期はなかったのが。
ま~要はのんきなんですね。
No title
辛い時、そういう類いと言ってはいけないのかな?宗教がすと入ってくるんですね。
よく家にまで訪問勧誘しに来ます。
今は、『祈らせて下さい』と駅とかで声を掛けてくるってないのかな?。

何かに頼りたくなるとか、何か救われる方法を知れるのか?とか思った時がありますが、でも結局は、自分ドタバタとしながらも、自分の力でそこから抜け出すしかないんやと気がつくまでもがくしかないですよね。
それで、救われるのならいいんですけどね。
ドリームランド前の
向かいにあるココスの包み焼きハンバーグが結構美味しいんだ。
「くろかみなほちょう」ってなんかすごい名前ですよね。

さまざまな人の言葉はときには冷却材や加熱剤や中和剤や緩和剤になったりしますよね。
私は昔、某新興宗教にはまりかけたことがあります。

不幸とか不安定ってことでもなかったと思うのだけど、なんかここにない何かがどこかにあるような気がしてたんだなぁ、きっと。

ぐるっと一周して、結局ただひたすらに生きることに勝ることはないと思う日々。

年食うのもまんざら悪くないわ。

ドリームランド、遠くに嫁いだらいつの間にかなくなってしまいました。
Re: No title
Carlos様

そんな時はないほうがいいですよね~。

お幸せで何よりです。
Re: No title
レツゴ―一匹様

元来、信仰心のない人間ですが、あの時はちょっとそういう人の気持ちが分かる気がしましたね。

今、私が祈るとしたら亡くなった父を思い浮かべて…でしょうか。

Re: ドリームランド前の
rockin'様

ココスって入ったことないです。

ドリームランド前のバス停は実はもう無いんですよ。けっこう貴重な写真でしょう。
Re: タイトルなし
うさきち様

自分以外に頼るものが欲しくなる時期というのがあるのかもしれません。幸いにして私もその時期は過ぎたみたいです。

ドリームランド、子供が小さい頃はプールに連れて行ってましたが、気がついたらなくなってましたね。


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