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そのひの話。

サワダさんとは自治会役員をやって知り合った。

息子さんが私と同い年ということで打ち解けて、知人以上友人未満の関係が続いている。

団地の掃除やゴミ出しで、出会うと長めの立ち話をするけれど、もう1人息子さんがあることを、最近まで知らなかった。

いま40代の次男君は、自宅から神戸の大学に通っていた。

試験前にはクラスメイトのボロ下宿に集まり、コタツに足を突っ込んで試験勉強をする。

勉強に疲れたら、コタツの四辺でそれぞれに眠ってしまう。だらしなくも楽しい、学生時代だ。

そしてその朝。

突き上げるような揺れに飛び起きて、そこで何を見たのか。

次の日も暮れてから、汚れた顔で自宅にたどり着いた次男君は、心配して迎えた家族にも、何1つ話さなかった。

小さなコタツで、さっきまで向かい合っていた友だちを、一瞬に失くした次男君は、もう大学には行けなかった。

数年後に家も出て、連絡すら取れないらしい。

死者6,434名 負傷者43,792名 行方不明者3名。

次男君も、サワダさんも、この数には入らないが、痛みをこらえてきた人に変わりはない。

黙っていても、私たちの周りには、たくさんの次男君が居るのだろう。

あの日から、25年。

1がつ17にち2020



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ごきんじょ | コメント(12) | トラックバック(0) | 2020/01/17 11:30
コメント
No title
早いですね~あれから25年。
テレビで見たあの映像は本当に衝撃的でした。
サワダさんの次男君今どこでどうしているんでしょうね。
No title
そういう悲しい事がたくさん起きたんですね。
きっとサワダさんの次男さんも、どこかで元気に生きてらっしゃるでしょう。

震災後に知り合った男性は、神戸で大学に通い、そのまま就職して神戸に住んでいた方も、命は助かったけど、その後の人生が変わって、荒んでいる時期もありました。

家族や友達、家や職場を失って傷ついている方も、黙って、何事もなかったように暮らしていても、突然命を奪われた方々を思い、頑張って暮らしているのかな・・・せつないな~命を大事にしようと思います。

当地は激烈な被害はなかったものの、東日本大震災の被災地です。
私の周りにも、人知れずその次男くんのような人がいるのですよね。

あまりにも深い悲しみは、簡単に表には出せない。

屈託なく生きるのは、本当は奇跡のようなことかもしれない。


No title
東日本大震災では放射能汚染もあったので、福島から脱出して、もう戻れない人も沢山いますよ。汚染地区じゃない場所でも、色々な噂があって、そこから出て行った人も沢山いますよ。今でも、放射線汚染のチェックをしないと出せない食品も色々あって、チェックする方にお金がかかって、出荷できない物も沢山あります。そういう被害は、現在進行形です。
No title
姪っ子さん合格するといいですね。
受験生を持つ親は気が気ではないでしょうね。
結果が出るまで落ち着きませんね。
でも大丈夫ですよきっと。
Re: No title
Carlos様

なにしろ新生児だった娘が会社員ですからねえ。

気持ちの癒えるのは時の経過とかかわりないですね。
Re: No title
レツゴ―一匹様

そんな風にどこかに傷を持った方が、多分私たちの思う以上にたくさんいらっしゃるんですよね。

地震に変えられた人生が、どうか今は安らかでありますように。
Re: タイトルなし
うさきち様

笑顔で暮らしているからって、何もなかったわけじゃない。

震災は多くの人の身体だけではなく、気持ちも深く傷つけましたね。
Re: No title
ぱある様

そうですね。

被害の多寡を比べるのはナンセンスだと思いますが、神戸も25年経過してまだまだです。福島も本当はこれからなのでしょうね。
Re: No title
Carlos様

こちらはたぶん昨日の記事へのコメントだと思いますが、ありがとうございます。

私は伯母ですからのんきなものですが、一人娘の進路を案じる妹の気持ちはさぞやと思いやられます。
人は
災害で亡くなってはいけない。
傷ついてもいけない。

災害死は防げる。
だから災害死は防ぐ。
これ基本施策だと思います。
Re: 人は
rockin'様

本当にそうですね。

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