fc2ブログ

にゃおんの話。

海外で借りた家は、家具付き物件だった。

家主が彼女の家に引っ越すので、要らない家を家財ごとまるまる貸すことにしたのだ。

ソファやテーブル、洗濯機に掃除機、カップやお皿、フォークにナイフ…。

呆れたことに、までついている。

家主のデイヴは

彼女がネコがキライなので隣にあげたんだ

と言うが、猫のほうでは、自分があげられたとはサラサラ思っていない。

裏庭に続く勝手口を開けると、当然のようにそこにいて、キッチンに入ってくる。

日本ではあまり見ない、中途半端な長毛種の黒猫を、マンガに出てくる猫にちなみ、ニャオンと命名した。

最初こそ戸惑ったものの、ニャオンはいたって気さくで手間のかからない猫だった。

しばらく様子見した後、食事と寝床はもらわれた隣家で、日中は見慣れない日本人がいる元の家のキッチンで過ごす、と決めたらしい。

毎朝、勝手口を開けると、足元をニャオンがすり抜けてくる。

不思議なことにキッチンから先には入ってこず、床のマットの上で身づくろいをすると、だらんと伸びて寝てしまう。

小さいムスメがさわったりなでたりしても、嫌がるでもなく、されるがままになっていた。

外に出たくなると、ドアの足元で、ニャーンとひと声だけ鳴く。

こちらが気づかないでいると、しばらく我慢してもう1度、ニャーンとだけ鳴く。

ドアを開けてやると、裏庭を散策する。園芸音痴の私が荒れ放題にしている庭について、ニャオンは批判的な意見を持っているようだった。

見回りが終わったら、離れた陽だまりにきちんと座り、私のしていることをじいっと見る。

ニャオンのお気に入りは、張り渡されたロープに干した洗濯物で、風にはたはたと揺れるシャツやタオルを、いつまでもいつまでも眺めていた。

今でも晴れた日に洗濯物を干していると、ニャオンが足元にいた日々を思い出す。

猫を飼いたいな、と思うのはそういう時である。

今日2月22日は、猫の日

にゃおん
(本家・ニャオンは「動物のお医者さん」佐々木倫子)



本日他出のため、2017年3月28日の記事に加筆掲載いたします。



にほんブログ村 その他生活ブログ ちょっといい話へ
にほんブログ村


日記・雑談ランキング

スポンサーサイト



むかしむかし | コメント(10) | トラックバック(0) | 2020/02/22 11:30
コメント
No title
家具付き猫付きの貸し家でしたか~
懐かしい思い出でですね。
No title
ここで『ニャオン』の名を聞く(読む)とは!
あたし、全巻持ってるしニャンコもおりますし。
なんか感動です。

猫の日に再掲であったとしてもステキなお話でした。


猫は
触れるものではなく眺めて楽しむものかも知れません。
No title
ネコ付き、貸し家っていいですね。
後から来た人間が、お邪魔してるんでしょうね~ニャオンからすると。
一軒まるごと
猫は家に付くといいます
飼い猫は狭いながらもテリトリーがあり、それをとても大切にしているのですね

そんな猫が共存を受け入れた人間と云う事でしょう

もし猫に興味があるのなら、預かりボランティアも有りだと思います

『ニャオン』と命名したと云う事は菱沼さんとセンスが近いのですね
羨ましいです

預かり猫の命名は毎回悩ましいです
Re: No title
Carlos様

穏やかな性格のいいネコでよかったです。

懐かしいですね。
Re: No title
ちゃこ様

私も動物のお医者さんは覚えるほど読みました。

「戸棚のウラはネズミの卵でいっぱいだー!」「誰だネズミの卵なんて言ったやつは 留年させるぞ!」
Re: 猫は
rockin'様

猫が立ってる足元近くを通るとき、ちょっとだけ接触していくのが好きです。

やっぱりさわりたいですよ。
Re: No title
レツゴ―一匹様

俺の家に新しい人間が来た、くらいに思ってるんでしょうね。

あれ、オスだっけな?メスだったかな?
Re: 一軒まるごと
山猫様

うちはペット禁止なのでネコは買えないんですよね。

実家は戸建てなので、母がもうちょっと年取って出歩かなくなったら、猫を…と思ってます。

管理者のみに表示