おくった話。
父が亡くなり、一周忌も終えて、2度目のお盆が廻って来るころ。
そろそろオトーサンのものを片付けたい、と母が言った。
家事は何にもしないが、自分の持ち物は自分で管理していた、父の部屋はずっとそのままだった。
几帳面だが、同時に捨てない人でもあった。
膨大な量の物が、父のルールでキチーッと詰め込まれた部屋の整理は、母1人では無理だろう。
応援に出かけてみると、予想はしていたものの、驚くべき物量である。
もはや着た姿も思い出せない、現役時代の背広がズラリと並び、防虫剤のニオイを放っている。
膝を悪くして、やめてしまったゴルフの道具。何年も前の確定申告の書類や、合併して無くなった銀行の通帳。
それぞれがそれぞれの場所に、捨てるのも申し訳ないほど、キッチリ収まっていて
どこから手をつけていいか…
父の生前、部屋には入ることもなかった母は途方に暮れるが、親不孝な娘は腕をまくり、その全てをバッサバッサとゴミ袋に入れた。
これからもこの家で、母には元気に過ごしてもらわなければならない。そのためなら、父も文句は言わないだろう。
クローゼットの一角に、薄いのや小さいの、いろんな箱が積んであった。
空き箱かな、と1つとって持ち上げると、重さがある。
開けてみると、新品のゴルフシャツだった。
なんとなく見覚えがあるのは、もしかして…と、すぐ下の箱を開けたら、チェックのマフラー。
そのまた下の箱には萩焼の湯呑。
どれもこれも、誕生日や父の日に、私が贈った品である。
いくつか覚えのない品があるのは、イモートからのプレゼントだろう。
オトーサン、もったいなくて使えなかったのね…
母はしみじみ言うが、私は悲しかった。
元気な間に、新品のシャツの肌触りを、カシミアの軽さを、味わってほしかった。
それ以上に、父が贈り物をちっとも使わないのに気づかず、モノだけ次々と送って済ませていた、自分が恥ずかしかった。
今更悔いてもせんないことだけれども。
父のいない父の日が来るたび、今も苦い後悔に胸を噛まれる。


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そろそろオトーサンのものを片付けたい、と母が言った。
家事は何にもしないが、自分の持ち物は自分で管理していた、父の部屋はずっとそのままだった。
几帳面だが、同時に捨てない人でもあった。
膨大な量の物が、父のルールでキチーッと詰め込まれた部屋の整理は、母1人では無理だろう。
応援に出かけてみると、予想はしていたものの、驚くべき物量である。
もはや着た姿も思い出せない、現役時代の背広がズラリと並び、防虫剤のニオイを放っている。
膝を悪くして、やめてしまったゴルフの道具。何年も前の確定申告の書類や、合併して無くなった銀行の通帳。
それぞれがそれぞれの場所に、捨てるのも申し訳ないほど、キッチリ収まっていて
どこから手をつけていいか…
父の生前、部屋には入ることもなかった母は途方に暮れるが、親不孝な娘は腕をまくり、その全てをバッサバッサとゴミ袋に入れた。
これからもこの家で、母には元気に過ごしてもらわなければならない。そのためなら、父も文句は言わないだろう。
クローゼットの一角に、薄いのや小さいの、いろんな箱が積んであった。
空き箱かな、と1つとって持ち上げると、重さがある。
開けてみると、新品のゴルフシャツだった。
なんとなく見覚えがあるのは、もしかして…と、すぐ下の箱を開けたら、チェックのマフラー。
そのまた下の箱には萩焼の湯呑。
どれもこれも、誕生日や父の日に、私が贈った品である。
いくつか覚えのない品があるのは、イモートからのプレゼントだろう。
オトーサン、もったいなくて使えなかったのね…
母はしみじみ言うが、私は悲しかった。
元気な間に、新品のシャツの肌触りを、カシミアの軽さを、味わってほしかった。
それ以上に、父が贈り物をちっとも使わないのに気づかず、モノだけ次々と送って済ませていた、自分が恥ずかしかった。
今更悔いてもせんないことだけれども。
父のいない父の日が来るたび、今も苦い後悔に胸を噛まれる。


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昔、タバコを吸ってた時は、タバコをワンカートンとか。
もったいなくて使えなかったのかな。
母の日に、ぢょんでんばあさん自身は、お子さんたちからいただいた物を使ってましたか?
思い出がいっぱい詰まった部屋の片づけ、大変だったでしょうね。
几帳面だったんですね。
私は駄目ですね~
お父様おいくつだったのかなー
私は 母の日に塩蔵わかめと鮭フレークを贈りました。
食べて無くなるものがいいかなーと思って。
それで 余計に涙が出ました
ちょっとわかる。息子からもらったジャム、まだあったな。
うちの亡父の部屋もほぼそのまま。
本とエアチェック(死語)したカセットとかステレオとか。
父そのものみたいな代物ばっかりで、そんなに父親っ子でもなかったけれど、捨てるには決心がいるなぁ。
ビールとかの消え物の方が少し気が楽です。
そろそろ断捨離始めないといけないお年頃かな。
たぶん興味がない人には、何の価値もないガラクタ多いですわ。
あ、今日娘から焼酎が届きました。
父の日だったんですねえ、アハ~(^_^;)
お父様のお気持ちが痛いほど分かります。
故人の物を処分するのって勇気が必要です。
私も長い年月がかかりました。
置き換えて、自分が何かあったら・・
そう思って断捨離をしてますがなかなか進みません。
お父様は贈られたものをお使いにならないままだったとしても、娘御さんたちからの贈物には嬉しさをしっかりとお感じになったはず。
お幸せだったのでは、と思います。
これはかなり勇気が入ります。
プレゼントが残っている。
使っていない。
これもプレゼントを貰った人の「楽しみ方」の一つです。
好きなものがよくわかってるといいですよね。
このことがあってから、私ももらったものをすぐ使うようになりました。
ながらく離れて暮らしてましたので、デパートで買って送るという感じでした。
お中元みたいですね。
父は83になるちょっと前に亡くなりました。もういろいろ、物は要らなかったんでしょうね。
私も、食べておいしいものをあげればよかったなあ。
エアチェック、懐かしいなあ。
ジャムは賞味期限前に召しあがってくださいね(笑)。
ビールの贈り物、良いですね。
私も娘にもらったことがあります。今年はなんもなかったけど。
男性は収集趣味の方も多いですからねエ。
せめてどれがお高いかは教えておいてあげてくださいね。
私も仕事の材料とかいっぱい持ってますので、父に偉そうには言えないんです。
子供には折を見て「これは高い」「これは売れる」とか、言うようにしています。
ずいぶんお若くてご両親を亡くしてらっしゃるんですね。それなら、しかたのないことですよ。
老親をほったらかしている後ろめたさから、贈っている部分もあるんです。それも含めて、何もかも反省です。
そうですか。思い入れの違いかなあ。
私、バカスカ捨てました。母は風通しがよくなって、喜んでいます。