すずめの話。
…バタバタバタ…
足音に驚いて、草むらから小さな影が飛び立つ。
スズメだ。
飛びにくそうにかしいでると思ったら、くちばしに、身体より長いワラ屑をくわえている。
巣作りの季節なのだ。
そういえば、あれは今ごろの季節。
元亭主の家を出て、当座の間に合わせに借りた、マンションでのことだった。
狭い高層階の部屋は季節感のカケラもなく、殺伐としていたが、新学期には今の家に越すと決めていたから、どんな部屋でもよかったのだ。
荷ほどきも最小限に、段ボールの間に布団を敷くような生活をしていたある日。
まだ子供たちの起き出さない早朝、
…ひよひよひよひよ…
鳴声ともいえない、わずかな空気のささめきが、寝床の中の耳をくすぐった。
なに?なんだろう?
部屋中くまなく探しても、異常はない。ネマキのままウロウロするうち、起きてきた子供らには、し―!と唇に指を当てて見せ、捜索を続けた。
…ひよひよひよひよ…
耳に手を当て、そろそろ進む。どこ?こっちか?
…ひよひよひよひよ…
ここだ!

たよりない声は、換気口の中から聞こえた。
ベランダに向けた開口のフタが無くなっており、壁の中に巣ができているのだ。気をつけていると、親鳥の出入りも確認できる。
さてこれは、管理会社に連絡する案件だろうか?
今後も長く住むなら、不衛生な野鳥の巣は、たぶんどけてもらったほうがいいのだろうが、私たちも、まもなく去る人間だ。
スズメの育児をジャマせず、見守ることにした。
やがて、ヒヨヒヨはピヨピヨになり、不満げなジュージューや、ケンカするピーピー声が聞こえ始めたころ、私たちの引越が決まった。
巣立ちの日は、いつだったのか。
バタバタ荷物を出し、ガランとした部屋は、春の陽を受けて、ただ静かだった。

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足音に驚いて、草むらから小さな影が飛び立つ。
スズメだ。
飛びにくそうにかしいでると思ったら、くちばしに、身体より長いワラ屑をくわえている。
巣作りの季節なのだ。
そういえば、あれは今ごろの季節。
元亭主の家を出て、当座の間に合わせに借りた、マンションでのことだった。
狭い高層階の部屋は季節感のカケラもなく、殺伐としていたが、新学期には今の家に越すと決めていたから、どんな部屋でもよかったのだ。
荷ほどきも最小限に、段ボールの間に布団を敷くような生活をしていたある日。
まだ子供たちの起き出さない早朝、
…ひよひよひよひよ…
鳴声ともいえない、わずかな空気のささめきが、寝床の中の耳をくすぐった。
なに?なんだろう?
部屋中くまなく探しても、異常はない。ネマキのままウロウロするうち、起きてきた子供らには、し―!と唇に指を当てて見せ、捜索を続けた。
…ひよひよひよひよ…
耳に手を当て、そろそろ進む。どこ?こっちか?
…ひよひよひよひよ…
ここだ!

たよりない声は、換気口の中から聞こえた。
ベランダに向けた開口のフタが無くなっており、壁の中に巣ができているのだ。気をつけていると、親鳥の出入りも確認できる。
さてこれは、管理会社に連絡する案件だろうか?
今後も長く住むなら、不衛生な野鳥の巣は、たぶんどけてもらったほうがいいのだろうが、私たちも、まもなく去る人間だ。
スズメの育児をジャマせず、見守ることにした。
やがて、ヒヨヒヨはピヨピヨになり、不満げなジュージューや、ケンカするピーピー声が聞こえ始めたころ、私たちの引越が決まった。
巣立ちの日は、いつだったのか。
バタバタ荷物を出し、ガランとした部屋は、春の陽を受けて、ただ静かだった。

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そんなところに作るんですね。
毎日声が聞こえて楽しそうだなぁ。
ヒヨドリに代わってウグイスの声に春を感じます。
昨日は卒園なんて書いて失礼しました!
息子さんも社会人に、これから一人で生活していくことでしょう。
見守る親鳥の心境は?
筒状になってる排気口のなかに、くちゃくちゃ詰め込んだみたいな巣がありました。
もじゃもじゃ頭をスズメの巣って言いますが、本当にそんな感じですよ。
そろそろくちばしの黄色い幼鳥を見られる時期ですね。
息子のことはもういい加減見守ったので、これからは目を離したいと思います。