ざくろの話。
今朝早く、電話が鳴った。
休日の遅寝を決め込もうとしていた私が、起こされて不承不承電話に出ると、おばーちゃんだ。
台風の準備はした?ベランダの物干し竿とか植木鉢とか、危ないから下ろしておきなさいよ!
ダイジョーブだよう…。ここらへん、そんな風吹かないし…
ダメよ!何かあってからじゃ、遅いでしょう!
叱られてしまった。
面倒だが、親の言うことは聞いておこう。ベランダの物干し竿などを動かしていたら、昔を思い出した
台風上陸のその日、父はいつものように残業で、家には母と私たち姉妹しかいなかった。
木造平屋の我が家は、雨戸を閉めてもガタピシと揺らぎ、外の風の音はごうごうと、テレビニュースの声もかき消す勢いだ。
母子3人はいつもよりも肩を寄せ、くっついて夕食後の時間を過ごし、早目に布団に入った。
電気を消してすぐ。
ビー――!
玄関のブザーが鳴って、みんな飛び起きた。
今みたいなかわいいチャイムじゃない。文字通りのブザー音だ。
お父さん、カギ忘れたのかしら
母は寝巻の上にカーディガンを羽織り、玄関を開けに立ったが、しばらくして気味の悪そうな顔で戻ってきた。
誰もいない。こんな夜に、イタズラ?
しばらくして。
ビー――!
またブザーが鳴った。
母が見に行ったが、玄関には誰もいない。
ビー――!
また鳴った。
ビー――!
また…。
何度くらい鳴ったのだろうか。不安そうな母と一緒に、しばらくは起きていたが、子どもの私たちは眠気には勝てず、いつの間にか眠ってしまった。
翌朝、母は目の下にクマを作っていた。父は結局泊まり込みで、帰らなかったらしい。
玄関を出ると、折れたザクロの枝が、敷石の上に落ちていた。ちょうど玄関のブザーの前あたりに伸びていた、ザクロの枝。
この枝が、風でたわんで、夜っぴてブザーを押していたようだ。
地面には、いろんな木の枝や葉の他に、たたきつけられてぱっくりと割れたザクロの実が、赤いガラスの粒のような中身を見せていた。
台風の思い出。

(今日はオチなし)

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休日の遅寝を決め込もうとしていた私が、起こされて不承不承電話に出ると、おばーちゃんだ。
台風の準備はした?ベランダの物干し竿とか植木鉢とか、危ないから下ろしておきなさいよ!
ダイジョーブだよう…。ここらへん、そんな風吹かないし…
ダメよ!何かあってからじゃ、遅いでしょう!
叱られてしまった。
面倒だが、親の言うことは聞いておこう。ベランダの物干し竿などを動かしていたら、昔を思い出した
台風上陸のその日、父はいつものように残業で、家には母と私たち姉妹しかいなかった。
木造平屋の我が家は、雨戸を閉めてもガタピシと揺らぎ、外の風の音はごうごうと、テレビニュースの声もかき消す勢いだ。
母子3人はいつもよりも肩を寄せ、くっついて夕食後の時間を過ごし、早目に布団に入った。
電気を消してすぐ。
ビー――!
玄関のブザーが鳴って、みんな飛び起きた。
今みたいなかわいいチャイムじゃない。文字通りのブザー音だ。
お父さん、カギ忘れたのかしら
母は寝巻の上にカーディガンを羽織り、玄関を開けに立ったが、しばらくして気味の悪そうな顔で戻ってきた。
誰もいない。こんな夜に、イタズラ?
しばらくして。
ビー――!
またブザーが鳴った。
母が見に行ったが、玄関には誰もいない。
ビー――!
また鳴った。
ビー――!
また…。
何度くらい鳴ったのだろうか。不安そうな母と一緒に、しばらくは起きていたが、子どもの私たちは眠気には勝てず、いつの間にか眠ってしまった。
翌朝、母は目の下にクマを作っていた。父は結局泊まり込みで、帰らなかったらしい。
玄関を出ると、折れたザクロの枝が、敷石の上に落ちていた。ちょうど玄関のブザーの前あたりに伸びていた、ザクロの枝。
この枝が、風でたわんで、夜っぴてブザーを押していたようだ。
地面には、いろんな木の枝や葉の他に、たたきつけられてぱっくりと割れたザクロの実が、赤いガラスの粒のような中身を見せていた。
台風の思い出。

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しかも、これが、柿とかじゃなく、ザクロというところがホラーっぽいですよね。
割れたザクロって、なんだか“無残”っていうイメージがありますもん。
でも、私、子どもの頃から大好物♡
今もTVボードの上に飾ってあるザクロをいつ食ってやろうかしらと狙っております。
まるで、星新一短編集の中の一話のような実話、ぢよん・でんばあさんワールドの礎ですね。
本日、義兄宅の柘榴の実をリキュールにと、漬け込みました。
果実としては、沢山食べられませんが、プチッと云う食感がすきです。
果実酒もクリスマス頃には、綺麗な色に仕上がるとか。
私は呑めませんが、嫁と娘、そして二男達は楽しみにしています。
そうですか~夜中じゅうブザーが・・・
お母さん気味が悪かったんでしょうね。
でもザクロの枝だなんて・・今だから笑えますが、
ホント気味が悪かったお思いますよ。
そういえば会社のいかつい営業マンが、台風直撃時の夜中に会社で一人仕事をしていた時、やはり裏口をドンドン叩かれるので半分ビビりながらも、自分の中で最高にドスを利かせた声で「誰だッ!」と怒鳴ってドアを開けたら、半分取れかかった案内板で、ちょっと恥ずかしかった、という話を思い出しました。
東海地方も暴風警報発令されました。台風19号はやく過ぎてほしいな……。
まさにそういうお話でしたね(^.^)
こういう体験って、生涯忘れない思い出になるんでしょうね♪
どなんかな~?
ザクロのつぶつぶを指でとってプチプチ食べるのは楽しいですよね。
買ってまで食べたことはないので、実家が引っ越してからはご無沙汰です。
確かに落っこちて割れてるのは怖かったです。
ちょっと違いますが、山を歩いていてアケビがばっくり割れてるのも、ギョッとしませんか?
植物の生々しい内面を見た気がします。
こちらこそお越しいただきありがとうございます。いつもコメントもなく失礼しております。
ザクロ酒は色がきれいなんでしょうね。
私が子どものころからお馴染みなのはグレナディンシロップです。
大昔父がカクテルに凝ったことがあるので、家にあったのでしょう。
キレイな透明感のある赤が印象的でした。
携帯もカメラつきインターフォンもない時代ですから、父に連絡を取ることも、外を確かめることもできず、母は本当に怖かったと思います。
今でも大風の時はその時の話をしますよ。もう何十回も聞いてますが、私も妹も「うん、うん」と言って聞いてます。
あら~、褒められちゃったわ。お恥ずかしい。
台風行っちゃいましたね。
うちのベランダは何事もありませんでしたが、へっぢほっぐ・がーでんは大丈夫でしたか?
ほんの一晩のこと、しかも私も妹もすぐに寝てしまった夜のことですが、忘れないものですね。
今は防災意識も高まって、色々な対策をなさる方が増えていますが、昔のほうが、個々人が自然の脅威を、もっと近くに感じていたように思います。
人間を食べる鬼子母神に、お釈迦様がザクロを与えて、人の肉の代わりとした、というお話からですね。
ザクロは酸っぱい果物で、お肉に似たところは全然ないですけどね~。お釈迦様のセレクトは謎ですね。