うりいえ話。
最寄り駅に着いたときは、もう暗くなっていた。
昼は暑さ厳しいけれど、吹き渡る風はもう真夏のものではない。暗闇がヒンヤリ湿り気を含んで、虫の声がそこここに聞こえる。
飲みに行くことも無くなって、この時刻に出歩くのも久しぶりだ。
夜遊び気分で、家までの道を歩く。
街路樹が吐き出す夜気に混じって、どこからか、木の香が漂ってきた。
樹木ではない。木材の、それも古い材の匂いだ。
ああ、あそこかな…
なんとなく心当たりがあった。
初夏に泡立つように咲く、ツツジの垣のある家。
数年前まで住民がいたが、いつの間にかガレージに車が無くなった。
溜まったチラシがポストから覗くようになって、玄関先に雑草が生えはじめたと思ったら、売家の看板が貼り出された。
この辺りは開発から20年ほどが経ち、建替えや取壊しが目立つ。
新築のころは働き盛りだった住民も、高齢になって同じように暮らしていくのは難しいのだろう。
建替えになるのはまだいいほうだ。
スクラップアンドビルド、などというが、スクラップアンドそのままとなることも多い。
区画された住宅地に、歯抜けのように増えていく空き地。
あの豪奢なツツジの生垣はどうなっただろう。
見ないで済むなら見たくなくて、いつもは曲がらない角を、曲がった。


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昼は暑さ厳しいけれど、吹き渡る風はもう真夏のものではない。暗闇がヒンヤリ湿り気を含んで、虫の声がそこここに聞こえる。
飲みに行くことも無くなって、この時刻に出歩くのも久しぶりだ。
夜遊び気分で、家までの道を歩く。
街路樹が吐き出す夜気に混じって、どこからか、木の香が漂ってきた。
樹木ではない。木材の、それも古い材の匂いだ。
ああ、あそこかな…
なんとなく心当たりがあった。
初夏に泡立つように咲く、ツツジの垣のある家。
数年前まで住民がいたが、いつの間にかガレージに車が無くなった。
溜まったチラシがポストから覗くようになって、玄関先に雑草が生えはじめたと思ったら、売家の看板が貼り出された。
この辺りは開発から20年ほどが経ち、建替えや取壊しが目立つ。
新築のころは働き盛りだった住民も、高齢になって同じように暮らしていくのは難しいのだろう。
建替えになるのはまだいいほうだ。
スクラップアンドビルド、などというが、スクラップアンドそのままとなることも多い。
区画された住宅地に、歯抜けのように増えていく空き地。
あの豪奢なツツジの生垣はどうなっただろう。
見ないで済むなら見たくなくて、いつもは曲がらない角を、曲がった。


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主がいなくなったつつじどうなるんでしょうね~
匂いの情報が際立ちますね。
主人の実家も更地にしましたし、
空き地は歯がぬけるように増えました。
賑わっていた記憶があると
物悲しいよのですよね。
勝手に『あの幸せそうな家族が・・・』って別に引っ越しするから不幸ってイコールじゃないんやけど、寂しさを感じます。すぐに建て替えるならそうならないけど。
いっせいに建ったような住宅地では、よけいにそう思うかもしれませんね。
負動産なんて言葉も生まれているらしいですね。
なんだか、せつないです。
うちの実家も、似たような住宅地なんです。
高齢化で自治会やゴミ当番など、困りごとが増えて、この先どうなるのか不安です。
高く売れて、もっと豪邸に引っ越すならおめでたいですけど、なかなかそうはいかないでしょうね。