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シカナク本。

古都と呼ばれる土地柄、地元を歩けばあちこちに新旧とりどりの石碑が立っている。

刻まれた内容もまた、著名人の顕彰であったり詩歌であったり、さまざまであるが、とりわけよく目にする名前が會津八一である。

私の見ただけでも15基はくだらないはずだ。

その在処も興福寺、東大寺、法隆寺に唐招提寺と、おもだった寺院のほぼ全てを押さえている、といってよい。

自筆らしい特徴のある筆跡をそのままに刻まれているところを見ると、歌人であると同時に書家としても評価の高い人のようだ。

これだけあちこちで見るのに、石碑ばかり眺めているのも悪い気がしたので、思い立って歌集と2、3の関連書を読んでみた。

すると秋艸道人會津八一先生は、新潟のご出身で、東洋美術史家として早稲田大学に教鞭をとった人であると知る。

うっかり者の私は知ったかぶりで郷土の偉人扱いをしかねないから、危なかったと思う。

あらためて、なにごともちゃんと調べてから発言せねばとの思いを新たにした。

本日秋艸忌、あるいは八一忌

東大寺にほど近い彼の定宿の跡に残る石碑より、冬の歌を紹介しよう。

かすがの の よ を さむみ かも
さをしか の まち の ちまた を なき わたり ゆく


(春日野の夜を寒みかもさ牡鹿の街の巷を鳴き渡りゆく)

夜、ウロウロしたシカが、朝になって商店街をぞろぞろ戻っていくのを見たことなど思い出すと、「街の巷を」のくだり、ちょっと面白い。

ろくめいしゅう
(「自註鹿鳴集」会津八一著 岩波文庫)



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ブックガイド | コメント(4) | トラックバック(0) | 2023/11/21 11:30
コメント
No title
會津八一 全く知りません。
歌人なんですね。
その人が何で奈良に・・・・?
数少ない郷土の文化人。

會津八一をご紹介いただきまして誠にありがとうございました。
確かに會津八一の碑はいたるトコロに建立されていますね。

短歌が有名ですが、俳句もかなり詠んでいます。

會津八一の最大の功績は、正岡子規に良寛を教えた事だと思います。
後の短歌界に大きな影響を与えました。

来年は特集したいと思います。


Re: No title
Carlos様

東洋美術が専門で、その調査のため奈良に足しげく通っていたようですね。

仏像や寺院をうたった和歌もたくさんあります。
Re: 数少ない郷土の文化人。
オグリン♪様

お詳しい地元の方を差し置いて、生半可な記事を書いてしまいました。

特集楽しみにお待ちしています。

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