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でめきん話。

おばーちゃんは、ペットショップに行って犬猫を買うような人ではないが、来るものは拒まず、という、受け身の動物好きである。

私が空き地からほじくり出したイシガメも、飛んできて庭の木にとまっていた文鳥も、イモートが拾ったヒョロヒョロの子猫も、

もう~、しょうがないねぇ~

とか言いつつ面倒を見る。

もちろん私もイモートも、毎回「絶対自分で世話する!」と約束するが、しょせん、ガキのカラ手形

動物のほうもわかっていて、拾われたなど早々に忘れ、毎日エサをくれるおばーちゃんになつく。

ある夏、私とイモートは性懲りもなく、金魚すくいで黒い和金黒い出目金を取ってきた。おばーちゃんは例のごとく

もう~、しょうがないねぇ~、世話しないくせに~

と言いながら、二匹の金魚を玄関の水槽に入れた。

ところが、黒い和金は、全然黒い和金ではなかった。とんでもない勢いで巨大化し、次第に色も赤くなりはじめ、やがて立派な緋鯉となった。

今にも水槽から飛び出しそうで困っていたところ、家庭訪問に来た先生が緋鯉を見て、小学校の池に引き取ってくださった。

デカい相方をなくし、一匹となった黒出目金は、寂しそうにも、ホッとしているようにも見えた。

それから数年。緋鯉ほどのスピードではないものの、徐々に出目金は大きくなり、泳ぐのも大儀になったのか、一日の大半動かずじっとしていた。

ある日来客があり、おばーちゃんが玄関で応対した。鳥籠やら水槽やら置いた玄関を見回していたお客さんが、すっとんきょうな大声をあげた。

た、タコ、飼ってるんですか?!

お客さんの視線の先にあったのは、子猫ほどの大きさに成長し、水底に沈んだ、かの黒出目金であった。



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むかしむかし | コメント(0) | トラックバック(0) | 2014/01/11 22:07
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