ひがさの話。
おばーちゃんちに、日傘を置いてきた。
昼行って、帰りは暗くなっていたので、つい忘れたのだ。
いかに美容に無頓着な私とはいえ、今日もカンカン照り。しかたなく自転車用の帽子をかぶって外に出た。
日傘を持つつもりでいたせいか、なんとなく手持ち無沙汰だ。
空いた手を持て余していたら、15年前の初夏を思い出した。
あの日私は、本当に久しぶりに、日傘をさしたのだった。
ムスメが生まれて、私は日傘を使わなくなった。
赤ん坊を持つ母親は、日傘を持つことができない。両手は子供を抱っこしたり、ベビーカーを押すのに、常にふさがっているからだ。
子供がベビーカーを降りて歩くようになると、今度はしっかりと手をつながなければならない。
面白いものを見つけて、いきなり駆け出したムスコを、追っかけてつかまえることもある。
そんな時、悠長に片手に日傘を持ってはいられないのである。
しかし、子供は育つ。
その年の春、ムスコは幼稚園に入園した。
小さな小さなお弁当を作り、園まで送り届けた帰り、日差しの強さにふと、日傘を思い出した。
取り出して開いてみると、少しくすんで、なんだか眩しそうに日光を受けている。
用事はないけれど、開いた日傘を手に、そのまま玄関を出て、駅に向かって歩いた。
誰とも手をつながずに歩くのは、本当に久しぶりのような気がした。
それなのに、いつの間にか子供の速さでトロトロ歩いていることに気付いて、おかしくなる。
お勤めしていた独身の頃のように、胸をはってさっさと足を出してみた。心なしか、頬に当たる風が涼しい。
さあ、これからは、こうやって自分の速さで、一人で歩くんだ。
強くそう思ったことを、今も覚えている。

Claude Monet (1840-1926)

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昼行って、帰りは暗くなっていたので、つい忘れたのだ。
いかに美容に無頓着な私とはいえ、今日もカンカン照り。しかたなく自転車用の帽子をかぶって外に出た。
日傘を持つつもりでいたせいか、なんとなく手持ち無沙汰だ。
空いた手を持て余していたら、15年前の初夏を思い出した。
あの日私は、本当に久しぶりに、日傘をさしたのだった。
ムスメが生まれて、私は日傘を使わなくなった。
赤ん坊を持つ母親は、日傘を持つことができない。両手は子供を抱っこしたり、ベビーカーを押すのに、常にふさがっているからだ。
子供がベビーカーを降りて歩くようになると、今度はしっかりと手をつながなければならない。
面白いものを見つけて、いきなり駆け出したムスコを、追っかけてつかまえることもある。
そんな時、悠長に片手に日傘を持ってはいられないのである。
しかし、子供は育つ。
その年の春、ムスコは幼稚園に入園した。
小さな小さなお弁当を作り、園まで送り届けた帰り、日差しの強さにふと、日傘を思い出した。
取り出して開いてみると、少しくすんで、なんだか眩しそうに日光を受けている。
用事はないけれど、開いた日傘を手に、そのまま玄関を出て、駅に向かって歩いた。
誰とも手をつながずに歩くのは、本当に久しぶりのような気がした。
それなのに、いつの間にか子供の速さでトロトロ歩いていることに気付いて、おかしくなる。
お勤めしていた独身の頃のように、胸をはってさっさと足を出してみた。心なしか、頬に当たる風が涼しい。
さあ、これからは、こうやって自分の速さで、一人で歩くんだ。
強くそう思ったことを、今も覚えている。

Claude Monet (1840-1926)

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あの頃は 常に両手がふさがってましたね
今年の母の日のプレゼント?は桜貝色した
娘のお上がりの日傘でした(笑)
マッ!良いかぁ!とばかり顔を隠してさしております
同じく、やはりいつも繋がっていたのは息子の手です。
空いた手がスースーして親離れ子離れを実感する時でもありました。
私は自分速さで歩けてるだろうか^^;
今日の、話をを読ませていただき
何だか、感動しました。
日傘ですか・・・
今まで買ったこともさしたこともなかったのですが
昨年初めて、置いてあった娘の日傘を使いました。
気分が、優雅になりますね。
今年は、自分用に、ちょっといい日傘を買おうかな?
と、読ませていただいた今、思っています。
ありがとうございました。
優雅な暮らしをしたいものです。
日傘で、懐かしい昔を思い出したんですね。
なんか自叙伝を読んでいるような感じでした。
その息子さんも大きく成られて・・・・
母親としての務めももう少しですね。
桜色の日傘、ステキですね!
きっと顔色がぱっと明るく、若々しく見えることでしょう。
私も今の日傘は黒だけど、次は明るい色のが欲しいです。
子供が幼稚園に行くようになると、ヤレヤレと思う反面、もてあます感じがありましたよね。
寂しいような、でもお母さんじゃない自分を思い出したようで、嬉しくもありました。
今や子供たちには振り向かれもしない私ですが、一人でできるもん!とがんばっております
コメントありがとうございます。
オチのない話にお付き合いいただいて、感動なんて言ってくださって、こちらこそ感動です。
私も、新しい日傘が欲しいなあ…と思いながら、古い日傘をまださしています。
いやー特になんもないです~。
月命日なんで、父の墓参には行きましたが。
父の霊が乗り移りましたかね。
昔のことなのに、その時の気持ちなど、けっこうよく覚えているものですね。
今日の買い物は忘れるのに。
息子も大きくなり、幼稚園の頃の何倍もの大きさの弁当を作らねばなりません。
あとちょっとの母の努め、ガンバリマス。
1行、1行が絵になって、最後の
「さあ、これからは、こうやって自分の速さで、一人で歩くんだ。」
では、震えるほど感動してしまいました。
ここはラストシーン。
マネのご婦人のように前を向いて堂々と。
素敵!
ぢょん・でんばあさん💕
わーい、わーい、褒められた!
一人で歩いたあの時の気持ちは、今でも忘れません。
きっとその気持ちに、ポンたん様も共鳴してくださったんだと信じます。
嬉しいです。
開放感を感じ取ったからでしょう。
知らなかったのでアマゾンで見てきました。
とっても解放感のあるイラストですね。
曲のほうはどんな風なんだろう?興味がわいてきました。