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くしゃみ話。

OL時代、配属された二度目の職場は、大きなビルの中、広いワンフロアの事務所だった。

個々にする書類精査が主で、総勢50人近くが仕事をしているのにとても静か

前の部署は来客も多かったし、営業の人の話し声や、ひっきりなしに鳴る電話でやかましかったので、配属当初はその静かさに戸惑った。

中でも、総務のヒロセさんはとりわけ静かな女性だった。

あの… か… よ… …すか …

はあ?

あの…かみ… よ…き… ますか…

はあ???

ヒロセさんの声は細くて小さくて、何度も聞き返さなければわからない。

生まれつき声の大きい私など、ヒロセさんとしゃべっていると、ものすごくガサツになった気がしてくるのであった。

ある日おとなしく仕事をしていると、突然フロア中に、甲高い異音が響き渡った。

ぽへちょ! ぷっちょ! ぺしゅん!

私は驚いて思わず椅子を外し、中腰になってフロアを見回したが、他の人たちは驚きもせず、何事もなかったように仕事を続けている。

ただ、心なしか、皆の表情が柔らかくなっている気もする。

お手洗いで、隣の課のユウキさんに会った。

さっき驚いたでしょう、あの音…

ハイ、あれ、何だったんでしょう?

ビックリするわよね~。ヒロセさん

ええっ?ヒロセさん?

とんでもない異音は、あの静かなヒロセさんのくしゃみなのだという。

時々、ヒロセさんはあのくしゃみをする。私はその時が、だんだん楽しみになってきた。

ぽへちょ! ぷっちょ! ぺしゅん!

必ず3つ続くヒロセさんのくしゃみに、仕事の手を少し止めて、ふ、と笑ったりする。

それは静かなフロアに開く、小さな息抜きの穴のような時間だ。

どうやら、そう感じているのは私だけではなく、他の皆も同じようだった。



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むかしむかし | コメント(10) | トラックバック(0) | 2015/06/17 10:18
コメント
ややこしい
音になるのは無理に消音しようとするからですね。
女性なら爆発音を響かせることに抵抗があるのは当然です。

くしゃみサイレンサーのようなものがあれば売れるだろいえなぁ。
No title
こんにちは。今日の記事は、まさに「ちょっといい話」でした。
読ませていただいて、”ほんわか”しました。いつもながら、ぢょん・でんばあさんの表現力に脱帽です。
No title
こんばんは
ひろせさん、声が小さいんですか~
でも豪快なくしゃみをするんですか~
声が小さいのでせめてくしゃみぐらいは?  かな?
No title
くしゃみが出そうになったとき
鼻の下を指二本で強く押すと納まる
騙されたと思ってやるが良い

カトチャンペっというやつだ
訓練できます
わたし子供の頃から花粉症で、毎朝はじまると30分ほどウルトラマンだったのですが、そのうちノドの上、鼻の入口あたりの壁をぺたっと上にくっつけて鼻の穴を中からふさぎ、破裂した瞬間に空気をぜんぶ前歯の裏あたりに叩きつけることにより、「へくち」というくしゃみに変換させる技術を体得しました。

つーか、説明しようとすると超ムズカシイぜこの技……!

お茶お花に匹敵する、淑女の心得として、お教室でも開こうかな(笑)
Re: ややこしい
rockin'様

そうですね、あの甲高い響きは

「くしゃみの予感→止めようと口に力を入れる→しかし抵抗むなしくくしゃみバクハツ→なまじ出口を狭くしたために、笛を吹く原理で、大きく高い音がでる」

と、こんな感じで出たのかもしれません。

今も記憶に残るくしゃみです。
Re: No title
nobotanさん様

遠い昔のささいな話、よく覚えてるもんだなと自分でも思います。

ちょっとでもご気分を良くしていただけたなら、書いてよかったです。

ありがとうございました。
Re: No title
Carlos様

豪快というか、独特でした。

どんな音だったか、今でもありありと思い出せますよ。
Re: No title
old comber様

へえ~、なるほど。

でも、当時それを知っていたとしても、彼女に教えてあげる勇気はなかったかも…。

何となく、くしゃみについては触れてはいけない感じでしたしね。

今度自分で試してみます。
Re: 訓練できます
へっぢほっぐ様

おお、くしゃみのお教室!

いいじゃないですか。

バラの咲くお庭にテーブルを出して、ハーブティーなど飲みながら、サロン的な雰囲気でいかがでしょう。

近隣から苦情が出るでしょうか。

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