コウカン本。
梅雨も明けて、いよいよ夏。
私は冬生まれで暑い時期は苦手だが、夏の声を聴くと、暑ければ暑いほどうれしい、というこの作家の本を手に取る。

(「貝がらと海の音」 新潮文庫)
一貫して身辺を書き続けた作家の、晩年の作品。
二男一女はそれぞれに伴侶を得て、孫の成長を楽しみにする老夫婦の日々が描かれている。
あとがきで作家本人がそう呼んでいるように、あくまで「小説」だが、人名も地名もほぼ実名であることからして、作中の出来事も現実と重なるものと思われる。
この本を私の本棚から持っていった友人は
誰が来た、どこに行った、の記録だけで、何にも起こらなかった…
と、つまらなそうな顔で返してくれたが、その通りなのだ。
この本の前後の別の作品の内容も、皆「おじいさんの日記帳」のようなものだ。
それを繰り返し巻き返し読む自分が、ちょっと不思議でもある。
このおじいさんの家では、実によくモノのやり取りをする。
孫に童話の本を贈る。孫からは、絵入りのお手紙が来る。
山の家で作った野菜やアップルパイを届けた娘には、すき焼き用のお肉を渡す。
友人からの花や菓子は、子供たちへおすそ分け、ご近所には季節のお寿司やおはぎを届ける。
それぞれに、ありがとう、嬉しい、の言葉が添えられたモノの行き来が、作品の核をなしていると言ってもいい。
交換は交歓なのだなあ、などと思う。
おすそ分けやいただき物を、迷惑に感じる人も多いようだが、そういう要素を切り捨てた人生は貧しい。
自分が選んで買ったものだけで暮らすのは、ステキに見えても偏狭である。
家に流れ込むモノを扱い兼ねて、断捨離なんていう荒療治が流行る昨今。
しかし作者の家では、モノを受け入れ、行き先を決め、そんなことの全てを楽しんでいる
老夫婦の、年を経た逞しさが、頼もしく羨ましい。

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私は冬生まれで暑い時期は苦手だが、夏の声を聴くと、暑ければ暑いほどうれしい、というこの作家の本を手に取る。

(「貝がらと海の音」 新潮文庫)
一貫して身辺を書き続けた作家の、晩年の作品。
二男一女はそれぞれに伴侶を得て、孫の成長を楽しみにする老夫婦の日々が描かれている。
あとがきで作家本人がそう呼んでいるように、あくまで「小説」だが、人名も地名もほぼ実名であることからして、作中の出来事も現実と重なるものと思われる。
この本を私の本棚から持っていった友人は
誰が来た、どこに行った、の記録だけで、何にも起こらなかった…
と、つまらなそうな顔で返してくれたが、その通りなのだ。
この本の前後の別の作品の内容も、皆「おじいさんの日記帳」のようなものだ。
それを繰り返し巻き返し読む自分が、ちょっと不思議でもある。
このおじいさんの家では、実によくモノのやり取りをする。
孫に童話の本を贈る。孫からは、絵入りのお手紙が来る。
山の家で作った野菜やアップルパイを届けた娘には、すき焼き用のお肉を渡す。
友人からの花や菓子は、子供たちへおすそ分け、ご近所には季節のお寿司やおはぎを届ける。
それぞれに、ありがとう、嬉しい、の言葉が添えられたモノの行き来が、作品の核をなしていると言ってもいい。
交換は交歓なのだなあ、などと思う。
おすそ分けやいただき物を、迷惑に感じる人も多いようだが、そういう要素を切り捨てた人生は貧しい。
自分が選んで買ったものだけで暮らすのは、ステキに見えても偏狭である。
家に流れ込むモノを扱い兼ねて、断捨離なんていう荒療治が流行る昨今。
しかし作者の家では、モノを受け入れ、行き先を決め、そんなことの全てを楽しんでいる
老夫婦の、年を経た逞しさが、頼もしく羨ましい。

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毎日うだるような暑さに、いささか参っております。
主人公のような人生を送りたいものですね。
物のやり取り、昔は隣近所でよくやったものですが、最近のマンション住まいでは、近所の付き合いはほとんどありません。
ましてや、モノを上げたりもらったりなんて・・・
交換日記、読みたいかも。
そんなことが面倒になりつつありましたが、少し反省
です。
相手が気を使わなくて、お返し無しの場などに
飲まないのに来るビール、食べきれないお菓子などを配っています。
本当ですね。うちも、マンションの両隣とは、顔を合わせると挨拶する程度のお付き合いしかできていません。
そのかわり、実家の母は、これでもかというくらい物資をよこします(笑)。
人に頂くものは、時期も、量も、自分の思い通りにはならないけど、それを使いこなすのも力量かなって思います。
よそにうまくおすそ分けするのも、能力の一つですよね。
庄野潤三さんご存知と聞いて、なんだか嬉しいです。
モノのやり取りを含め、今はあらゆる人付き合いのスキルが低下してるなあと思います。
庄野潤三作品、初めてならおすすめは「ザボンの花」「夕べの雲」あたりでしょうか。おじいさんの日記シリーズよりは小説色が強く、私の友人のように「なんだこれ?」と思わずにお読みになれると思います。
わ~、すみれさんの周りの人がうらやましい!
今週、ビール1ケース買ったばかりなんですよ。いくらあっても足りなくて。
私しか飲まないのに、なぜでしょう…フフフ…。
今ではそういうのは希少派なんでしょうか(^^;)
醤油の貸し借りはありませんが、中元や歳暮のお裾分けや畑の野菜のお返しがあるご近所付き合いです。
ですが、住人が変わって若い夫婦世帯になると、とたんに時には挨拶も無いくらいになるんですよね。
年齢的なものなんでしょうかね~。
今の人は、人間関係全般のこなしかたがヘタだなあ…と思うことが多いですね。
濃密な関係を嫌がって、切り捨てる方向に向かってる。
そのせいで、家族の関係のほうが煮詰まって、大人になった子供をいつまでも構ったり、へんちくりんになってるんじゃないかと思ったりします。
他人とはもっと近く、家族とは少し離れて…そううまくはいかないんでしょうが。