しかじか話。
紅葉のたよりも聞かれはじめ、今日は秋らしい行楽日和。
鹿で有名な地元の公園にも、お弁当を広げたり、ボールで遊んだりする家族連れの姿がある。
ここには私も子供の頃、父母に連れられて来た。
高度成長期のサラリーマンであった父は、家族サービスは父親のツトメ、という考えで、休みのたびに家族をあちこちに連れ出した。
その日も一家で公園にやってきた私たちは、バドミントンをしたり、写真を撮ったり、ひとしきり遊んだあと、お弁当を囲んで座った。
この公園では、鹿のオトシモノに注意が必要である。
よくよく場所を選び、さらに念のため古新聞を広げてから、その上にシートを敷くのだ。
母のお弁当はいつもおいしい。イモートとつっつき合いながら、楽しく玉子焼きやおにぎりを食べる。
お弁当をほぼ食べ終わったら、母はこんどは手提げから、青々した二十世紀梨と、果物ナイフを取り出した。デザートの時間である。
目を伏せた母が、手元のナイフに集中している時、異変が起きた。
母に知らせねばと思うが、私とイモートは驚きのあまり、何も言うことができない。
やがて父が、静かにこう言った。
オイ… ビックリするなよ…
言われた母はハッとなって顔をあげると、目をみはったきり固まった。
母の肩越しに、でっかい雄鹿が毛だらけの鼻ヅラを差し入れ、膝の前に落ちた梨の皮を食べている。
母も私たち子供も、一瞬声も出ない。フゴフゴ…という鹿の鼻息だけが聞こえた。
その後どうなったのか、記憶にない。
きっと、ハッと我に返って、キャーキャー大騒ぎし、鹿を追い払ったのだと思う。
今は亡い父は、とにかく冷静な人だった、というのが身内の評価だが、それについてはあの
ビックリするなよ…
の印象が、強いように思う。


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鹿で有名な地元の公園にも、お弁当を広げたり、ボールで遊んだりする家族連れの姿がある。
ここには私も子供の頃、父母に連れられて来た。
高度成長期のサラリーマンであった父は、家族サービスは父親のツトメ、という考えで、休みのたびに家族をあちこちに連れ出した。
その日も一家で公園にやってきた私たちは、バドミントンをしたり、写真を撮ったり、ひとしきり遊んだあと、お弁当を囲んで座った。
この公園では、鹿のオトシモノに注意が必要である。
よくよく場所を選び、さらに念のため古新聞を広げてから、その上にシートを敷くのだ。
母のお弁当はいつもおいしい。イモートとつっつき合いながら、楽しく玉子焼きやおにぎりを食べる。
お弁当をほぼ食べ終わったら、母はこんどは手提げから、青々した二十世紀梨と、果物ナイフを取り出した。デザートの時間である。
目を伏せた母が、手元のナイフに集中している時、異変が起きた。
母に知らせねばと思うが、私とイモートは驚きのあまり、何も言うことができない。
やがて父が、静かにこう言った。
オイ… ビックリするなよ…
言われた母はハッとなって顔をあげると、目をみはったきり固まった。
母の肩越しに、でっかい雄鹿が毛だらけの鼻ヅラを差し入れ、膝の前に落ちた梨の皮を食べている。
母も私たち子供も、一瞬声も出ない。フゴフゴ…という鹿の鼻息だけが聞こえた。
その後どうなったのか、記憶にない。
きっと、ハッと我に返って、キャーキャー大騒ぎし、鹿を追い払ったのだと思う。
今は亡い父は、とにかく冷静な人だった、というのが身内の評価だが、それについてはあの
ビックリするなよ…
の印象が、強いように思う。


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親子の懐かしい思い出ですね。
いいですね、家族でお弁当を食べている様子が目に浮かびます。
牡鹿にはさぞお母さんはびっくりしたことでしょうね。
昭和のあの頃…
そして 家族愛…
(;´Д`)スバラスィ!!
妻や子と、(同じ目線に立って)キャーキャー言うのが関の山。
菜の花の中のお弁当、ステキな思い出ですね。
夢のような金色の景色を思い浮かべました。
母はものすごくビックリした、と、今でもあの時の話をします。
あんなときに「ビックリするなよ」なんて無理だ!と笑っています。
世の中全部が右肩上がりで、不思議に明るい時代でしたよね。
私の子供たちなど、子供時代をどんなふうに思い出すのだろうと想像しますが、見当もつきません。
どうなんでしょう。
かといって、父のような旧型の男が今目の前にいても、それはそれで困っちゃいそうです。
母も苦労していましたしね。
「振り向けば鹿」
「君がいて鹿がいて」
みたいな感じ?
同じような経験があります。
時は中学生。
場所は夏の放課後のプールサイドにて。
友達が仰向けに寝そべっていました。
その首の間近に巨大ムカデが。
私「じっとしてろ。
何も言うな」
僕の手を握って」
で引っ張って立たせました。
ビビリました。
> 私「じっとしてろ。
> 何も言うな」
> 僕の手を握って」
真夏のプールサイドの出来事。
ステキ!
ムカデさえいなければ。
男子中学生同士でさえなければ。