おせっく話。
ムスメの初節句のころ、私たちは実家から遠く離れた場所に住んでいた。
そろそろお雛さまを、と考えている時に、転勤の内示。3月中の引っ越しが決まった。
そうなると、お節句のお祝いどころではない。
お雛さまは来年にしようと決めて、準備に忙殺されていたある日。
おばーちゃんから小包が届いた。
中身は、小さな内裏雛と、薄桃色の封筒。
荷物になると思いましたが、お雛さまを作りました
初節句だから、ちょっとでも飾ってあげてね
新居に落ち着いたら立派なのを買ってください
封筒には手紙と一緒に、お金が入っていた。
引越し前のバタバタの中、どんな風に初節句を祝ったのか、記憶がない。
お雛さまを飾って、あられに白酒くらいのことはしたのだろうか。
落ち着いたら、と言いつつも、転勤族の我が家には、2年おきに長距離の引っ越しがある。
立派なお雛さまは、先へ先へと延びた。
代わりに飾ったのは、母の作った木目込の、小さなお雛さま。
狭い社宅や仮住まいでも、どこかしら飾る場所を探して、毎年二人を並べた。
小さいムスメは、自分のお雛さまと思っていたのか、どうか。
春の気配とともにお雛さまを飾るのを、いつしか母親の私が心待ちするようになった。
すくすくと育ったムスメが十を過ぎたころ、私は離婚して、子供たちと実家の近くに戻った。
もうバタバタ引越ししなくてもいい。ささやかだけど、ここが終の棲家。
落ち着いたら、というその日が、ようやくやってきた。
でも、ムスメも私も、もう立派なお雛さまが欲しいとは思わない。
どこに行くにもずっとついてきてくれた、この小さなお雛さまが、うちのお雛さまなのだ。
いつかのお金は、おばーちゃんに断って、ムスメの進学資金に使わせてもらった。
また春が来て、ムスメは大学4年生になる。

旅行中のため、コメント欄を閉じています。
しばしご訪問もできませんが、何卒ご容赦ください。
日々更新いたしますので、留守中もぜひお越しください。
FC2ブログの皆様には、帰宅後必ずお邪魔いたします。

にほんブログ村

日記・雑談ランキング
そろそろお雛さまを、と考えている時に、転勤の内示。3月中の引っ越しが決まった。
そうなると、お節句のお祝いどころではない。
お雛さまは来年にしようと決めて、準備に忙殺されていたある日。
おばーちゃんから小包が届いた。
中身は、小さな内裏雛と、薄桃色の封筒。
荷物になると思いましたが、お雛さまを作りました
初節句だから、ちょっとでも飾ってあげてね
新居に落ち着いたら立派なのを買ってください
封筒には手紙と一緒に、お金が入っていた。
引越し前のバタバタの中、どんな風に初節句を祝ったのか、記憶がない。
お雛さまを飾って、あられに白酒くらいのことはしたのだろうか。
落ち着いたら、と言いつつも、転勤族の我が家には、2年おきに長距離の引っ越しがある。
立派なお雛さまは、先へ先へと延びた。
代わりに飾ったのは、母の作った木目込の、小さなお雛さま。
狭い社宅や仮住まいでも、どこかしら飾る場所を探して、毎年二人を並べた。
小さいムスメは、自分のお雛さまと思っていたのか、どうか。
春の気配とともにお雛さまを飾るのを、いつしか母親の私が心待ちするようになった。
すくすくと育ったムスメが十を過ぎたころ、私は離婚して、子供たちと実家の近くに戻った。
もうバタバタ引越ししなくてもいい。ささやかだけど、ここが終の棲家。
落ち着いたら、というその日が、ようやくやってきた。
でも、ムスメも私も、もう立派なお雛さまが欲しいとは思わない。
どこに行くにもずっとついてきてくれた、この小さなお雛さまが、うちのお雛さまなのだ。
いつかのお金は、おばーちゃんに断って、ムスメの進学資金に使わせてもらった。
また春が来て、ムスメは大学4年生になる。

旅行中のため、コメント欄を閉じています。
しばしご訪問もできませんが、何卒ご容赦ください。
日々更新いたしますので、留守中もぜひお越しください。
FC2ブログの皆様には、帰宅後必ずお邪魔いたします。

にほんブログ村

日記・雑談ランキング
スポンサーサイト