タビノヒ本。
朝のテレビを見ていたら、今日は旅の日です、という。
そういえば、旅といえる旅って、しばらくしていない。
せわしない日帰りバスツアーには参加したが、あれは旅というより、目的地への移動だ。
辞書的な意味は、自宅を離れてよその土地を訪ねること、だが、タビという言葉にはそれ以上の何かがある気がする。
私の場合、旅は徒歩や自転車じゃなく、乗り物、できれば電車に乗りたい。
それも5分や10分では物足りない。少なくとも2時間は乗りたいものだ。
なぜ2時間か、というと、飲み食いがしたいためである。
電車の狭い座席で、不自由を感じつつ飲み食いをする楽しみといったら、こたえられない。
動き出すのを待ち、こぼさないように用心して、プシッと飲み物を開ける。
一口飲んだら、安全な場所に置いて、今度はお弁当を開ける。
斜めにかけた掛け紙の上を、ダンダラの紐で十字に結わえた幕ノ内なんかがいい。
紐は丁寧にテイネイに結び目を解く。「御弁当」と書かれた掛け紙は丸めたりせず、お弁当の折の下に敷いておく。
魚の形の醤油さしの赤いフタを、チマチマと指先で開け、醤油が必要と思われるおかず全てに、まんべんなく順番にかける。
次は箸だが、お弁当の割り箸は往々にして安物で、きれいに割れないので、要注意だ。
なんとか食事に差し支えない程度にうまく箸が割れたら、額の汗を拭き、飲み物をもう一口。
改めて割り箸を持ち、準備万端整ったお弁当に向かう。
大げさだけれど、この瞬間が、私の旅の最高潮であると言ってもいい。
行先でどんな絶景があろうとも、どんな美味に出会おうとも、このひと時ほどの感動は無い。
何ならどこにも行かなくたって、乗った電車を下りずに折り返してきたっていいくらいだ。
ただしその場合は、終着駅で飲み物とお弁当の補給は必要である。
また扉が閉まり、動き出すのを待って、飲み物をプシッと…
ああ、旅がしたい!

(「第一阿房列車」内田百閒 新潮文庫)

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そういえば、旅といえる旅って、しばらくしていない。
せわしない日帰りバスツアーには参加したが、あれは旅というより、目的地への移動だ。
辞書的な意味は、自宅を離れてよその土地を訪ねること、だが、タビという言葉にはそれ以上の何かがある気がする。
私の場合、旅は徒歩や自転車じゃなく、乗り物、できれば電車に乗りたい。
それも5分や10分では物足りない。少なくとも2時間は乗りたいものだ。
なぜ2時間か、というと、飲み食いがしたいためである。
電車の狭い座席で、不自由を感じつつ飲み食いをする楽しみといったら、こたえられない。
動き出すのを待ち、こぼさないように用心して、プシッと飲み物を開ける。
一口飲んだら、安全な場所に置いて、今度はお弁当を開ける。
斜めにかけた掛け紙の上を、ダンダラの紐で十字に結わえた幕ノ内なんかがいい。
紐は丁寧にテイネイに結び目を解く。「御弁当」と書かれた掛け紙は丸めたりせず、お弁当の折の下に敷いておく。
魚の形の醤油さしの赤いフタを、チマチマと指先で開け、醤油が必要と思われるおかず全てに、まんべんなく順番にかける。
次は箸だが、お弁当の割り箸は往々にして安物で、きれいに割れないので、要注意だ。
なんとか食事に差し支えない程度にうまく箸が割れたら、額の汗を拭き、飲み物をもう一口。
改めて割り箸を持ち、準備万端整ったお弁当に向かう。
大げさだけれど、この瞬間が、私の旅の最高潮であると言ってもいい。
行先でどんな絶景があろうとも、どんな美味に出会おうとも、このひと時ほどの感動は無い。
何ならどこにも行かなくたって、乗った電車を下りずに折り返してきたっていいくらいだ。
ただしその場合は、終着駅で飲み物とお弁当の補給は必要である。
また扉が閉まり、動き出すのを待って、飲み物をプシッと…
ああ、旅がしたい!

(「第一阿房列車」内田百閒 新潮文庫)

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旅ね~もう10年以上もしたことがありません。
車内でのんびり幕の内弁当を食べられるのはのんびりとした列車で、今はスピードアップし、あっという間に着いてしまう。
なんか味気ないですね。
昔は、窓を開けて駅弁売りから買ったもんですが、懐かしい
昔の列車旅行です。
あ、阿房列車だ。この際内田百閒に倣って「何にも用事はないけれど大阪へ」行ってみるのもいいんじゃないですかね。今なら新幹線でサーッと着いちゃいますし列車のバウンド具合を楽しむ余裕もなさそうですが、お弁当食べるだけならw。
何年か前に四国のローカル線に2時間半程乗る機会が有りました。
2両編成でいくつか向かい合わせ席が有りました。
そこに陣取りおもむろに飲み物をプシッと…
今にして思えば幕の内弁当を買わなかった事が悔やまれます。
もうお子様も手を離れ(かけてる?)、電車で幕の内の旅など、思いのままのご身分でしょ?
四国へどうぞいらしてね。
高知駅で一旦下車して、幕の内ならぬ高知版幕の内「皿鉢弁当」を是非!
ただし、次の列車まで1時間以上あるので、待ち時間は路面電車でゆっくりはりまや橋見物をおすすめします。
私はいやしいので、旅先ではすぐに立ち食いの団子などをGETするのがお約束です。
観光地と食べ物が分かちがたく結びついてる旅の記憶。
(摩周湖=ほくほくのじゃがいも とか)
(岐阜城=五平餅 とか)
(宮島=焼き牡蠣 とか)
次の列車の旅(の予定)は、お伊勢参りを娘にねだられてます。
あっちは、何が美味しいのか、楽しみです~♪
北陸新幹線が開業する前、勤務がおわって前橋の娘の家へ。
直江津駅から(ほくほく線)に乗って(越後湯沢)へ向かうんだけど。
そこから高崎までは新幹線になって、時間が無いので、直江津で(ほくほく線)に乗った途端、買い置いた(ビールとスーパー寿司)をプシュッと開けて、おもむろに寿司を食べ始める。
一度、隣り合わせた同年輩の人が「旅の楽しみは、車中のビールですよね」と声を掛けてきた。。。
(知らんふりしていて欲しかったなぁ・・・)
応援しておきました。ポチッ
学生の頃、梅田でパチンコをしてたらそれなりに勝ったので何も考えず名古屋行きの列車に乗ったことを覚えています。
お弁当。
確かにいいですね。
お勧めはやっぱり水了軒の八角弁当ですね。それも二段重ね。
これは美味しいんだ。
大好きです。
おかずに醤油をたらして、指についた醤油をなめる。駄目だー!行きてー!
新幹線で京都か金沢に行くくらいがちょうどいい。
朝9時の電車に乗って、朝からビールと幕の内弁当だ。
あとは窓外の風景チラ見の後ガアッと寝る寝る。
目が覚める頃目的地へ。メンドクサイ観光はぶっとばして、また帰路が楽しみ。
あああ!行きてー!
新幹線じゃ窓も開きませんしね。
私が懐かしく思うのは、針金の持ち手のついた、昔のお弁当のお茶です。熱いお茶をこぼさないようにフタに注いで飲みました。
ペットボトルはこぼす心配もないですが、旅情もへったくれもないですね。
さすが、阿房列車ご存知ですね。
うちからだと大阪じゃ私鉄で30分なので、もうちょっと遠くに行きたいですね。
今の季節なら湖西線に乗りたいなあ…。
わあ、いいなーローカル線!
自分ちも十分ローカルなんだけど、違う気がするのはなんでだろう?
思うに最寄り駅が私鉄ってのがイマイチですね。やっぱり「国鉄」(JRじゃ気分出ない)。
ロングシートではお行儀が悪い気がして飲み食いはしにくいですね。
夜行寝台、日本では乗ったことがないのです。かといって、昨今のJRの高級化路線にはついていけそうにありません。
そうそう、四国は未踏の地ですからね、子供が家を出たら、一人旅の行き先はまず四国にしようかな。
そしたらいろいろ教えてくださいね。
伊勢、いいですね。うちじゃ子供が小さい頃は毎夏伊勢志摩の海でした。
やっぱり海の幸、それから松阪牛かなあ。
あと、伊勢はお餅の宝庫なんですよ。赤福だけじゃなく、いろんな特色あるお餅があります。
私のおすすめはくうや餅、それからへんば餅です。
そうそう、旅は孤独でなくっちゃ。
もちろん、旅先での思わぬ楽しい出会いを否定するんじゃないけれど、お弁当程度のことで話しかけられるのはごめんですよね。
アイハート様のほくほく線も、立派な旅だと思います。
応援ありがとうございます。
今日もそれぞれの、旅に出ましょう!
東京大阪間を頻繁に行き来していたころ、大阪発の時は水了軒の八角、東京から来るときは「二十一世紀出陣弁当」というのに決めてました。
どっちも丁寧にできてて一つ一つがおいしいんですよね。
なんかいま無いみたいなんですけど、二十一世紀出陣弁当。残念。
飲んでいい時はやっぱりビールですね。
出張の時はお茶で、残念です。
うう~、コメント読んで私もさらに行きたくなりました。
どこでもいい、ここじゃないとこに行きたい!