おばけの話。
子供の頃、うちにはオバケがいた。
夜になって、田んぼの中の古い木造平屋が暗闇に包まれると、オバケはうちの周りに現れて、窓から私やイモートの様子をうかがっている。
そして、良い子にしていないと、腹を立てて家に入ってくるのだ。
そのオバケのことを、私たちはクロイヒト、と呼んで恐れた。
イモートとつかみ合いをしていると、母が
ほら!ケンカしてると、クロイヒトが来るよ!
いつまでも布団に入らずにゴテていると
クロイヒトに電話するよ!
キライなオカズを残していると
あ、クロイヒト!
と、母が指さす先に気を取られた隙に、ポカンと開けた口に放り込まれた。
今と違って、昔の子供の情報源は少ない。親の言うことは丸のみに信じていた。
古いアルバムには、私とイモートと両手をつないだ母の写真がある。
母は私よりずっと若く母親になった。
核家族で、高度成長期のモーレツサラリーマンだった父は、夜遅くまで帰らない。
ミニスカートにコインローファーを履いて、肩までの髪をヘアバンドで押さえた、こんな若い女の子が、たった一人で子供を見ていたのだと思うと、なんだか胸が詰まる。
オドカシで子供をしつけるのは、確かに褒めたことじゃないだろう。
私も子供が小さかった頃は、育児書なんか見て、うちのおかーさんのアレは良くなかったよネ、なんて思っていた。
でも、あの時の母の母親くらいの年になって、改めて思う。
一人ぼっちの母親が、ちょっとオバケに応援してもらうくらい、いいじゃないか。
今の私は、タイムマシンがあるならば、あの頃に行って、クロイヒトをやってやるのにな、なんて思っている。

(黒いといってもこの人ではない)

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夜になって、田んぼの中の古い木造平屋が暗闇に包まれると、オバケはうちの周りに現れて、窓から私やイモートの様子をうかがっている。
そして、良い子にしていないと、腹を立てて家に入ってくるのだ。
そのオバケのことを、私たちはクロイヒト、と呼んで恐れた。
イモートとつかみ合いをしていると、母が
ほら!ケンカしてると、クロイヒトが来るよ!
いつまでも布団に入らずにゴテていると
クロイヒトに電話するよ!
キライなオカズを残していると
あ、クロイヒト!
と、母が指さす先に気を取られた隙に、ポカンと開けた口に放り込まれた。
今と違って、昔の子供の情報源は少ない。親の言うことは丸のみに信じていた。
古いアルバムには、私とイモートと両手をつないだ母の写真がある。
母は私よりずっと若く母親になった。
核家族で、高度成長期のモーレツサラリーマンだった父は、夜遅くまで帰らない。
ミニスカートにコインローファーを履いて、肩までの髪をヘアバンドで押さえた、こんな若い女の子が、たった一人で子供を見ていたのだと思うと、なんだか胸が詰まる。
オドカシで子供をしつけるのは、確かに褒めたことじゃないだろう。
私も子供が小さかった頃は、育児書なんか見て、うちのおかーさんのアレは良くなかったよネ、なんて思っていた。
でも、あの時の母の母親くらいの年になって、改めて思う。
一人ぼっちの母親が、ちょっとオバケに応援してもらうくらい、いいじゃないか。
今の私は、タイムマシンがあるならば、あの頃に行って、クロイヒトをやってやるのにな、なんて思っている。

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クロイ人ですか~昔の子供は親に欲いわれたものですね。
私の子供のころは{アモコ」が来るぞ~でした。
「アモコ」はなんのことだか全くわかりませんでしたが、怖いものだと思っておりました。
後になって「アモコ」は「アツ蒙古が攻めて来るぞ!」ということらしいと分かりました。
一つぐらい怖いものがあった方が、子供はいうことを聞くおかもしれませんね。
「おまわりさんに言いつけるぞ」なんぞは警察官はいい迷惑だったでしょうね。
まずは『怖いおっちゃん来るでぇ~』でしたが、怖いおっちゃんなんておらん!と言い返すようになってからは、
プロレスラーのブラッシーって血だらけの写真(切り抜きみたいなの)が押入れに入ってて、言うことを聞かないと、『ブラッシー見せるで!』って脅されてました、見ると姉も私も泣き叫んで『ごめんなさい!』って言うてたので、今のご時世なら児童相談所に通報されてたかも。
何故、ブラッシーの写真があったのか不明。
泣き叫んでた子が大きくなってプロレスファンになるのは不思議ですが。
しかしうちの母の嫌がらせ(?)はクロイヒトのようなリアルで上等なものではなく、トイレの大人用と子供用の二種類のスリッパを顔の形に置いてみたり、悪さして閉じ込める押入れの中に能面の写真を張ったりという姑息なものに終始しておりました。
わたしは痛みにはめっぽう弱い子供でしたが、上記のような子供だましにはまったく興味がなく、押入れでぐうぐう寝ていたのですが、弟はいまだにトラウマを抱えているようです(笑)
子取りにさらわれる
サーカスに売り飛ばす
が脅し文句だったような気がします。
母が近所のお友達と一緒にミニスカを履いてお互いの脚を見てキャーキャー言っていたとのを思い出しました。
子供の脅し文句に蒙古軍襲来が出てくるのはスゴイですね。感動しました。
確か、ご出身は九州でいらした?
大陸に目を向けることの多いお国柄なのでしょうか。
ブラッシーって、確か歯がギザギザの人ですよね。それは怖いですね。
そして、恐怖は子供の心に刷り込まれ、将来の嗜好に変わる、と。
私は色黒の人は特に好きではないですが。
> トイレの大人用と子供用の二種類のスリッパを顔の形に置いてみたり、悪さして閉じ込める押入れの中に能面の写真を張ったり
それは、斬新だ!
子供の想像力に頼るだけじゃなくて、攻めのオドカシですね!
うちのクロイヒトが怖かったのは、私たちが女きょうだいで、始終くっついちゃーベチャベチャと、クロイヒトについて話し合い、ファンタジーを増幅させていたからだと思います。
私か妹、どっちかがキャーと言うと、もう一人もパニックになったし。
サーカスにさらわれて酢を飲まされる、というの無かったですか?
酢で身体をぐにゃぐにゃにして曲芸をさせるためなのです。
子供の時酢の物が嫌いだったのは、このオドカシのせいもあると思っています。