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もたもた話。

午後の私鉄に乗る。

観光客が移動するには少し早い時間なのか、急行は意外に空いている。

ロングシートの端に座っていたら、次の駅で若い男が乗ってきた。

他の乗客もいる中、彼が目にとまったのは、カバン以外に紙袋を3つも提げていたからだ。

座席につく前にそれを網棚に上げるつもりらしく、私の隣の空席の前に立った。

さほど重そうでもない紙袋をのせるのに、やけに苦戦している。袋の口を下にしたものだから、案の定、中身がばらばらと足元に落ちた。

あたふたと拾い集めようとして、他の袋の中身をこぼしたりしている。

これはそうとう要領の悪い青年だ。

ようやく3つの紙袋を網棚に上げて腰かけたが、こんどはそれが気になるようで、上を向いてキョロキョロしている。

見れば彼が先ほど紙袋をのせたのは、座った席よりたっぷり2人分ズレた場所だった。

しばらくもじもじしたあと、結局席を立ち、他の人の膝にぶつかりながら、せっかく上げた紙袋を下ろし、自分の席の真上に移動した。

電車は既に3駅を通過している。

やっと席に着いた青年は、カバンのファスナーを開けたり閉めたり、さんざ探したあげく1冊の本を取り出した。

自分のカバンなのに、なんでどこにあるかわからないのだろう、と不思議に思う私をよそに、彼はまたファスナーを開け閉めしはじめ、かなりの時間をかけてペンを出した。

なんと蛍光ペンである。

キュポンとキャップを開けると、何かのテキストらしい本を開いて、やたらに線を引く

あんなに引いては、逆にどこが重要かわかるまい、と心配になるほどの引きっぷりである。

ここまでにかなりの時間を使ってしまったため、いくらもページをめくらないうち、青年の降りる駅に着いた。

またぞろモタモタと、しかし奇跡的に一つの忘れ物もなく、彼が降りて行ったあと、持っていた本の題を思い出して、おかしくなる。

まねじめんと

「経営学検定試験 マネジメント

彼はまず、自分の持ち物のマネジメントから始めたほうが良いように思うが、どうだろうか。



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2016/07/31 10:19
コメント
No title
こんにちは

人間観察ですか~
電車に乗っていても飽きないでしょうね。
すね毛が触ったり荷物が落っこちたり・・・
しっかりと本のタイトルまで・・・・

いや~楽しい!
No title
もしかしたら、うちの長男ではないかとドキドキしました。

でも、『経営学』なんてジャンルの本とは無縁ですので、安心しました。

ちなみに、世渡り下手ですが、根はいい奴です(親ばか)。
これは
非常に示唆に富んだお話です。
この記事を読んで経営学とは究極、要領と効率向上についての学問だと気付きました。

この気付きが正しいとするならばこの青年が経営学を学ぶことは極めて理に適っております。
どうでっしゃろ?
Re: No title
Carlos様

私はスマホとか見ないので、電車ではボーッと人を見ていることが多いです。

こんなに面白いのに、ゲームなんかやってる人の気が知れないですよ。
Re: No title
りりた様

あはは~、経営学の彼も、いい人そうでしたよ。

不器用なんでしょうねえ。損するタイプだと思います。
Re: これは
rockin'様

>経営学とは究極、要領と効率向上についての学問

あの青年がそれをわかるには、まだ時間がかかりそうでしたねえ。

学問と実生活が結びつく、目からウロコの体験をしてほしいものです。

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