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じじばば話。

今日もバス。

住宅地の停留所で乗り込んできたのは、70代後半くらいのご夫婦だ。

お買い物だろうか、それぞれに手提げを持っている。

小柄なオバアサンが目ざとく1人分の席を見つけ、荷物を置くと、夫に向かって手招きした。

ほら、オトウサン、座ったら…?

要らん

オジイサンはむつかしい顔だ。

しかたなくオバアサンは荷物をどかして、自分が腰かけた。

バスが走りだすと、オバアサンは前に立つオジイサンのカバンの持ち手をひっぱり

ほら、オトウサン、持ってあげる…

要らん

オジイサンはオバアサンの手をふりほどき、遠いほうの手にカバンを持ち替えた。

モゾモゾしていたオバアサンが、やおら手提げの中から巾着袋を出し、今度は

ほら、オトウサン、アメ

懲りずに勧める。オジイサンが

要らん

と言うのは、赤の他人の私にも、もはや明白に思えた。

矢継ぎ早に3度も断られ、気分を害したかと思いきや、オバアサンは案外ケロッとしている。

オジイサンも、別段腹を立てているわけではないらしい。

妻があれこれ提案し、夫はそれを逐一断る。それがこのご夫婦が長年作りあげてきたスタイルなのである。

そういえば私の父母も、外で偶然二人連れの時に会うと、どっちも怒ったような顔でいるので

あれ?ケンカしてんの?

と聞くと、示し合わせたように

別に…

別に…

と答えたものだ。

バスを降りたら、まだ赤くない赤とんぼが、中空に、ピンでとめたように浮かんでいる。

独身の私には届かぬ境地だが、夫婦って不思議なものだなあ、と思った。

あかとんぼ



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ごきんじょ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2016/08/28 10:45
コメント
No title
家の両親(70代前半)もいつも会話の最後には喧嘩してるような・・・
父から母へ話かければ、最初は和やかにしゃべっていても、最後は相手を怒らせる、逆もしかり。
でも仲が悪いかといえば、そうでもないんです。

口を開けば喧嘩するので、『もうしゃべりなやぁ』って言うのですが、どうも相手が気になるのか?!
私も独身で連れ合いが居ないので、よく解らない世界です。
No title
こんにちは、ぢょん でんばあさん
そうですね ヨッシィーの両親も同じですよ
戦争を知っている世代ですね
団塊の世代からは、夫婦の形が変わって来ています
どちらが良いのかは、難しいですね
No title
こんにちは
じじ、ばばの会話なんてこんなものかもしれません。
これで意思疎通が成されているでしょう。
我が家でも似たようなものですから。
私なら
すべての申し出をありがたくお受けいたします。
ってゆーか、嫁さんがそんな優しいことを言ってくれる局面を想像することが難しいぞ。

我が家の庭は狭いです。
10坪、あるかないかです。
蚊が多いんで水遣りがイヤなんです。
Re: No title
wanco.さま

うちの両親も仲悪いと思ってたんですよ。父はモノ言わないし、母は口を開けば父の文句だし。

それがどうでしょう、父が亡くなると、母の寂しがること。

あれだけ悪口言ってたのを忘れたみたいに、良かったことしか言わないし。

ホンマ夫婦のことは分かりませんわ。
Re: No title
よっしぃー様

夫婦の形も時代で変わりますか。

恋愛結婚か親の決めた縁談かといった違いもありますでしょうね。
Re: No title
Carlos様

言葉ではわからないような気持の流れが、きっとお互いの間にあるのでしょうね。

まさに以心伝心ですね。
Re: 私なら
rockin'様

足のお具合いかがですか?

きっと愛妻が優しくしてくださっているでしょう。

豪邸の水まきもしばらくお休みですね。

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