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ばにらの話。

立ち仕事で疲れて早寝をしたら、4時に目が覚めてしまった。

このまま起きたら1日長くて仕方がない。目を閉じて、寝返りをうって、とろとろと浅い眠りの底に沈んでいく。

以前の会社は、スーツ着用の堅い社風だった。

出先でガンガンの冷房に当たっても、帰りにはまた、額に汗がにじむ。

社に戻る前に、少し休憩して行こうと、喫茶店に入った。

冷たい飲み物は汗になるから、ホットコーヒーを注文する。隣のテーブルも、私と同年輩の勤め人らしい女性だった。

バッグからハンカチを出して首筋を押さえていると、コーヒーが来た。

シンプルなカップとソーサー、お揃いの小皿にちっちゃな粒が5つ。

お洒落な店で出てくる、四角くない角砂糖かな。

かくざとう

でも持ち上げた手応えは、予想したより軽くて、あっと思った時はもう砂糖じゃないものはコーヒーの水面に浮かんでいた。

卓上を見れば、シュガーポットがちゃんとある。

小皿は、サービスでついてきた小さなお菓子だった。つまんで口に入れたら、たわいなく溶ける。

鼻腔にひろがるバニラの香りを感じながら、ふと目を開けたら、長針が90度動いた目覚ましが目に入った。

たった15分間の、ほんとみたいな二度寝の夢。

もしかしたら、記憶に沈んでいたこんな体験が、昔むかしに本当にあったのだろうか。

もうスーツを着ることのない私に、確かめるすべはないけれど、夢のバニラの香りが、まだそこらに漂っている気がした。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/07/16 11:30

めぐすり話。

梅雨の晴れ間、青い、青い朝の空

夜中の雨がまるで嘘みたいな強い日差しに、街路樹の陰を選んで歩く。

ジョワジョワジョワ…

不意にセミの声。もしかしたら、今年初めてかもしれない。

まぎれもない夏のしるしに、一種感慨が湧いて、つい声のする方を振り仰いだら

…ぴちょん

小さい冷たいものが目の中に飛び込んだ。

とっさに顔をしかめたが、痛くはない。

ゆうべの雨の雫が1つ、ケヤキの枝から落ちてきたようだ。

ハンカチを出して、目の周りを拭こうとしたが、驚いたことにどこも濡れていない。

あんな高い枝から、狙い過たず私の眼の中に落ちてきたのか。

いったいどれくらいの確率だろう?

二階から目薬といえば、とかく物事上手くいかない例えだけれど、こんなこともあるのか。

うつむいて笑いかけたけれど、

ジョワジョワジョワ…

途切れずに続くセミの声を聞くうち

ホントに雨?

という疑念がさした。ホンモノの目薬を、点したほうがいいかもしれない。

にかいからめぐすり



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/07/15 11:30

たいむの話。

休日のショッピングモール。

食堂街を通りかかったら、前は白いパネルで覆われていた空き店の跡に、新しい店ができていた。

たいむ1

旬菜ビュッフェとあるから、食べ放題らしいが、たしかこの場所、前も同じようなバイキング形式の店だったはずだ。

つぶれた店の跡に似たような店を出して、うまくいくものだろうか。外食産業はわからない。

それにしてもこの店名、何と読むんだろう。ラクケイム?ガクケイム?

ヒントはロゴの中にあった。

たいむ2

タイム?なんで?

まさか、のしいこいので、たいむ?

想像を絶する当て字だ。

最初だけ読めばいいんなら、漢字の訓なんてほとんど無意味ではないか。

ガンコジジイさながら、プンプン怒り出しそうになったので、待て待てと思い直す。

発想は柔軟に、何ごともよい面を見よう。

この読み方はもしかしたら無限の可能性を秘めているのではないか。

べたもの夢、で食芋夢

こがる夢、で蛸居夢

ぬきとぬの夢、で狸犬夢


おお、いろいろできるぞ。

しばしあれこれ考えたが、ハッと我に返った。

いったいタヌキとイヌの夢なんて店に、客が来るんだかどうだか。

私の心配を裏付けるがごとく、楽しい憩いの夢は閑散としていた。



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もろもろ | コメント(8) | トラックバック(0) | 2019/07/14 11:30

はるまき話。

デパートのパッチワーク展に、おばーちゃんのお友だちが出展するので、見に行った。

展覧会は盛況で、コンクール受賞作品や、元アイドルの作品の前には、人だかりができている。

お友だちの作品の写真を撮り、そそくさと会場を後にすると、やれやれランチの時間。久しぶりに中華にしようか、と、意見が一致した。

おばーちゃんはレディースランチ、私は点心ランチ。

女性向けに、白いプレートにチマチマと、オカズが乗っかっている中から、おばーちゃんは揚げ物を1つ、箸にはさみ

ハルマキだわ

と示すので、私も自分のお皿のを箸に刺して

ハルマキだね

そう言って2人、目を合わせ、プププと笑った。

それは6、7年前のこと。

おじーちゃんが亡くなって、ちょっとションボリしていたおばーちゃんを、近場の温泉に誘った。

たいした旅行じゃないが、家にこもっているより、よっぽどいいと思ったのだ。

夏休みにはまだ間があり、電車も宿も空いている。チェックインの後、ゆっくりお風呂に入って、夕食の時間。

安い宿だから、食事も朝晩バイキングである。食べられるものを取って、のんびり食べていたら、

後ろのテーブル 見てごらん

小声で言うおばーちゃんの目が笑っている。

見ないように見ると、お皿を持って戻ってきた女性が、席に着こうとしていた。

はるまき

お皿にはハルマキが7、8本。他には何も取っていないようだ。

彼女は箸をとると、薪のように積み重ねたハルマキを、大変な勢いで次々とかじっていく。

瞬く間に空にしたお皿を手に、女性はまた席を立った。

スゴイでしょ さっきもハルマキだけ食べてたよ

ええーっ?!ハルマキだけ?

シッ!来た!

戻ってきた彼女の手には、またしてもハルマキだけのお皿があった。

そんなにおいしいハルマキなのだろうか。もうお腹はいっぱいだが、好奇心に駆られて、1つだけ取ってきて、食べた。

マズくはないが、まるで普通だった。

よっぽどハルマキが好きだったのかねえ

ハルマキだけがそんなに好きっていうのは かなり珍しいねえ

今でもハルマキを見ると、あの日の話になる。

あの女性は、自分が話題を提供したとは、夢にも思っていないはずだ。

でも、おばーちゃんと私は、これからもハルマキを見るたび、何度も何度も話すだろう。目を合わせて、くすっと笑うだろう。

もしもありがとう、と言えるものならば、言っておきたい気持ちだ。

その人の顔や姿は、まるで覚えていないけれど。



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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/07/13 11:30

たっぱー話。

タッパーを新しくした。

本来のタッパーウエアではない。正確には密閉容器というべきだろうが、全然ピンと来ないので、タッパーでご勘弁願いたい。

とにかく私がタッパーと呼ぶ容器の、新しいのが猛然と欲しくなったのである。

うちには多すぎるほどタッパーがある。

買った覚えがないほど昔の。誰かが何か入れてくれたまま、返さなかったの。どういう経緯でそこにあるのか、もはや不明なの。

どれもまだ使えるものばかりだが、形や大きさがバラバラで、イラッとすることも多い。

ふだん、あまりモノが欲しくならない私である。たまには物欲に身をゆだねてみよう。

思い切ってバラバラのタッパーをお払い箱にし、同じシリーズを大中小、ずらりと揃えてみた。

みっぺいようき

きちんと収納すると、なかなかの壮観である。

いい気分でリビングに戻り、テレビを点けたら、水族館からの中継をやっていた。

…クラゲの水槽の この白いツブツブ、なんだと思いますか?

画面はクローズアップとなる。

実はこれ、クラゲの赤ちゃんなんです!

へえー

…赤ちゃんクラゲは水温が高いと死んでしまい…

そうなんだー

転瞬、カメラが切り替わり、私は目を疑った。

…こうして 低温で保管しているんですね…

飼育員さんが大事そうに冷蔵庫にしまっているのは、見覚えのある密閉容器。新調したばかりの、私のタッパーではないか。

そうなんだー、どころの話ではない。

ひとんちのタッパーにクラゲ入れんなよ!って、うちのじゃないけど!

もー、まだ新品なのにぃ!って、うちのじゃないけどさ!!




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もろもろ | コメント(6) | トラックバック(0) | 2019/07/12 11:30
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